皇帝と悪魔の対話 その2

 物にかける税に種類があるのは分かったが、いまの状況ではどうすればいいのか、ですって?

 そう……内乱が頻発している、ということは、各地で交通網が寸断されている状態であると考えられますな。

 それは、陛下の直属の者たちのみが往来を制約されているのではなく、その地域に住んでいる者もまた、制約されているのです。つねは行商の者たちが往来し、市に行けば手に入る物も手に入らなくなっている場合も多うございましょう。

 むろん、やむにやまれぬ事情や動機があろうかと思われますが、内乱は、おおむねだれにとっても迷惑なものでございますよ。

 交通網が寸断される問題もそうですが、内乱当事者、各々の勢力が必要に応じて物資を掠奪しようといたしますし、治安も悪化して内乱とは関係のない犯罪も横行します。

 ……陛下はこの国の主であるから、陛下の軍隊の必要を補うのは民の勤めですって?

 もちろん仰せの通りでございますが、民にとってみれば重荷であることには変わりがありません。

 民のあるべき姿とは別に「民はそのように考えがちである」という事実は事実として受け入れるべきでしょうな。

 人の心はままならぬものでございます。

 ……おやおや、そのごようす、なにか思うところが?

 なんでもない、気のせいだと?

 もちろん、そうでございましょう。

 そういえば陛下を裏切られたあの方は……おっと、これは失言でございましたな。


 話を元に戻しましょう。流通のための道の安全を確保することは、民の難渋をおもんぱかればこそ重要ですが、いかに陛下の兵が精強無比とは言え、すべての道の安全を確保することは不可能でございましょう。いくら兵があっても足りませんからな。

 そしてさきほども申しましたとおり、戦場になる地域の民にとっては、どの勢力も等しく迷惑なものなのです。

 ここで陛下の軍が他の勢力となんらかの「差」を付けられたら……いかがでしょう?

 「差」を付ける第一歩が、「専売制」なのですよ。

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