STEP1 【物品にかける税の性質を知ろう】
古来より、支配者はありとあらゆる「物」に税金をかけてきました。
有名なところでは「塩税」ですが、小麦、絹、綿花、染色素材、茶、煙草、酒、鉄、鉱物、木材(薪)、煉瓦……まさに、ありとあらゆるものに、です。
物を消費するのは人類にとって必要不可欠なことなので、そこに税金をかければ安定収入になるだろう、そう考えるわけです。
また、国が特定の「物」を管理し、国民に供給していることを示すことで、「この国の支配者はだれなのか」ということを広く知らしめる狙いもあります。
しかし、ちょっとまってください。
値段が高くなれば節約しようとするのは人間の
物品にかける税は、税の徴収方法にもよりますが、貨幣経済が浸透し、都市が形成され、物流が盛んになればなるほど税収が上がる傾向があります。
狭いコミュニティ内で物々交換で自給自足しているうちは、あまり税収が上がらないわけです。
物流が盛んになると言うことは、治安が良い必要があります。
極論ではありますが、「物品にかける税」は、平和時にこそ、その税収が上がる税なのです。
また、物品にかける税は、その物の性質によって「徴収しやすい物」と「徴収しにくい物」があります。
もうすこし詳しく見ていきましょう。
《産地の限定性》
限定されているか、比較的どこでも生産できるか
限定されている場合、国家が産地を囲い込んで生産そのものを管理できる。
主な物:塩・鉄・染料等
比較的どこでも生産できる場合は、流通経路を押さえて課税する必要がある。
主な物:酒・小麦や米・布製品等
《生命活動における必需性》
生命活動のために必要か否か
必要性が高いと、税金が高くても購入する。もしくはその物を管理し、有償又は無償で分配する国に対して信頼性が高くなる傾向がある。
主な物:塩・小麦や米・布製品等
必要性が低いと、税金が高ければ購入を控えるか代替物を探されてしまう。
主な物:茶・鉱物・染料等
《依存性》
高いと、税金が高くても消費欲が衰えない。
主な物:酒・煙草・麻薬等
低いと、税金が高ければ消費欲が衰える
主な物:染色素材・布製品等
また、税金の掛け方としては以下の種類が考えられます。
《専売制》
国家が生産を管理、もしくは生産物を全量買い上げて、税を上乗せして販売する方式。
生産地が限定されていないと、物を国家に集約することに困難を伴う。
《生産者課税制》
生産地において課税する方式。たとえば酒蔵の樽ひとつにつきいくらというように、生産者に課税する。
自宅で生産する程度の小生産者に課税漏れが発生する可能性が高い。
《販売者課税制》
流通に乗った時点で課税する方式。定期市に運び込まれた物品や、常設小売店舗で販売された物品に対して課税する。
流通経路に乗らない、個人消費や地元消費に課税漏れが発生する可能性が高い。
《消費者課税》
現代日本なら「酒税」「たばこ税」等、消費者に課税し、事業者を通じて納税させることができるが、これはある程度帳簿が整備され、国民が納税についてそれなりに理解を示しているからこそ可能になっているので、古代~近世において徴収する場合、「国民がみな消費すると仮定して人頭税かなにかと一緒に一律徴収」というような荒っぽい徴収をする。つまり、国民全員が消費するようなものに限定される。過去においてはオスマントルコでは「塩税」が人頭税と一緒に徴収されていた。
戸籍等の課税台帳に載らない人々に対しては課税漏れが発生する。
そのほかの要素としては
脱税行為があった場合、どの程度の刑罰を科すか
ということを考えておく必要もあるでしょう。
いかがでしょうか?
「物にかける税金」は、「物の性質」によって徴税方法をきめ細やかに変えないと、どうもうまく徴収できないらしい、というのがなんとなくおわかり頂けるのではないかと思います。
また、貨幣経済が発達していない国では、徴収方法や課税対象が限られてきます。
すなわち、農村部では物々交換がメインである等、貨幣経済が発達していないと、専売制にして物々交換で国家に必要な物を手に入れるか、生産物や販売物から一定割合を徴収し、別の場所で物々交換の材料にするか、という選択になるので、日持ちするものに限られてきます。
これらの税金もまた、古代~近世においては、一部の国を除き、重要な財源となってきました。
ところで、さきほど『「物品にかける税」は、平和時にこそ、その税収が上がる税』と書きましたが、内乱が発生しがちなあたらしく生まれた国や征服国でも導入できるのでしょうか?
じつは国家の安定のために、この「物品にかける税」が鍵になりうるのです。
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