じゃあな

なんだかんだ言ってもさ

眠れない夜はやってきて

希死念慮が枕元で眠ってら

数え切れない後悔で編んだ毛布を被って


「明けない夜はない」って言葉が嘘くさくってさ

その言葉を信じた奴らがここを出ていった

大抵そいつらはもう帰っては来なかった

信じ切れなかった僕がまた一人


変わらねえと思ってた

変わるはずねえと足を投げ出してた

けど目の前の足跡を見りゃ沢山の人が通ってた

何も変わらないならそこに足跡は無かったはずだ


いつか笑いかけてくれた人もいたっけ

時に嗤われたりもしたけどさ

そういう奴らばかりじゃなかった

大抵は皆優しかった


そういう人に出会えたから

いつか心の底からぶつかり合った人がいたから

僕も決断することが出来たんだ

薄暗くなったこの家を出るんだと


ここを出たらもう僕の居場所は無くなる

それでもずっとここにいたら変わらないから

もう何度目かの出発

いつかまた帰ってくる事になろうとも


今日のこの旅立ちが無駄になることは無い

今までだってそうだった

旅立った記憶があるから出ようと思えた

もしまたダメだったらって不安もまた


じゃあな

僕はまた出ていくよ

唯一の拠り所の三毛のぬいぐるみだけを持って

こいつだけはなんでか置いて行けないから


何度目かの旅立ち

何回も旅立ったらダメとは誰も言ってない

今回はどこへ行こうか

心做しか心躍ってる僕がいた

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