第9話 読心

 どうやって室内に侵入したのかを問うと。

爽やかな笑顔でキヨカは答える。

「ピッキング」

「犯罪だろ」

「アズサなら大丈夫かなって」

「嫌な信頼だね」

天使のような笑みに絆されそうになる。

首が痛くなるくらいに頭を振り煩悩を排除する。

「そんなんで許されると思うなよ」

「アズサはその辺の輩とは違うね」

私の笑顔に心揺らがないなんて他の人にはできない芸当だなと呟く。

「この世のほとんどのことはこの笑顔で解決するのに」

その自信はどこから来るのか。

精神の図太さは見習いたいような気もするが。

何かを捨てることになる気がする。

そもそも図書委員のはずなのになぜここにいるのか。

今日は図書室が開いている日なのに。

仕事を放ってきたのだろうか。

「図書委員はアライくんに代わってもらったの」

今のが口に出ていたかと振り返ると。

「なんで仕事があるのにここにいるのかって思っている気がして」

キヨカは実は人の心が読めるのかもしれない。

「心は読めないよ」

そんなに驚かないでと腹を抱えて笑っている。

「だって心が読めるなら犯人探しなんて必要ないでしょう」

涙が出るほど笑い転げた後にそう言った彼女の瞳を見て時が止まる。

背筋が凍るほどの殺気を帯びていた。

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