第3話 不安な抜擢

 学校に向かう道をキヨカと歩く。

地味でも派手でもない端正な顔に凛とした眉。

腰までありそうな艶やかな黒髪が巫女のような雰囲気を醸し出していた。

学校のマドンナが一体全体なんの用で我が家まで来たのだろう。

いくら考えても皆目見当もつかない。

支度をしていたら戸を叩く音が聞こえ、

開けると話したこともないキヨカが待っていた。

開口一番ついてきてと言ったきりだんまりを決め込んでいる。

歩く振動で軽やかに揺れる髪を見つめながら後をついていく。

今日は曇天だと気象予報士がテレビで言っていたのに。

見上げた空は雲ひとつない晴天だった。

そろそろ話してくれるだろうかと声をかけようとした瞬間。

「犯人が分かったかもしれないの」

キヨカは振り返りながら楽しそうに呟いた。

「犯人て何のこと」

突然のことに開いた口が塞がらない私は馬鹿みたいに聞き返した。

「ミクとカナエを連れ去った人。最近テレビで頻繁にやってるじゃない」

「あぁ。あの連続女子高生行方不明事件のこと」

「そうそう。その事件の犯人よ」

「それが。何」

彼女は頬を膨らませながら器用に話す。

「警察も見つけられない犯人が近くにいるのよ」

「怖いよね。早く捕まってほしいね」

「そうじゃないでしょ」

「それ以外ないと思うけど」

まだまだだなぁと言いながら人差し指を左右に振る。

「犯罪を犯した人間を捕まえる大チャンスでしょう」

アズサならこの期待に応えてくれると思って。

このためだけに呼び出したのだそうだ。

朗らかに笑う整った顔を見て至極不安に駆られたが

おそらく逃げることも叶わないだろう。

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