第2話 独白⑴
「11月21日。本日、北海道に雪が降った」
祖父から譲り受けた万年筆が文字を記していく。
ペン先が擦れる音が静寂を破る。
「北の国から遠く離れたこの町に積雪が観測される頃には
私はこの世にいないだろう」
堪えきれずに咳をすると手のひらには血が滲んでいた。
「その時のためにここに真相を記そうと思う。罪を犯した証拠とともに」
合紙に証拠を丁寧に包み独白とともに書棚へしまう。
本の形をしているからおいそれと見つかることはないだろう。
きっと彼女ならすぐに気づいてくれるから心配はいらない。
簡素な部屋を見渡す。
ここにはいい思い出なんてひとつもなかったけれど。
彼女に会わせてくれたのだからそれだけで十分だった。
支度をして部屋を出る。
もうここに帰ることはない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます