白百合の狩人

齊藤 涼(saito ryo)

第1話 女子高生のひとり暮らし

 北海道に初雪が降った夜。

キヨカは忽然と姿を消した。


 幾つになっても後悔は先に立たない。


 薄暗い部屋の中。1人で食べる寂しい朝食。

端の焦げたハムを炭になったパンに挟んで咀嚼する。

数年前、両親が互いに運命の愛を見つけたと書き残し出ていった。

ひとり暮らしにはすぐに慣れたけれど。

毎日の努力虚しく料理の腕は上達の兆しもないのは悲しい。

向き不向きを埋めるのには途方もない時間を要するという事実に

目を背ける日々。

口の中の水分が奪われる前に牛乳で流し込む。

腹に入れば皆同じ。ただの栄養。

こんな質素な食生活でも体は勝手に育つようで身長は男子にも勝る。

腕力も日々の家事で鍛えられ一石二鳥。

剣道の試合では向かうところ敵なし。

素晴らしきかな女子高生のひとり暮らし。

少しの寂しさはご愛嬌。自由気ままに生きている。

制服に着替えていると玄関の戸を叩く乾いた音がした。

急いでネクタイを結び下の階に降りる。

こんな朝早くに誰だろう。

配達なら午後に指定しているし郵便なら配達員さんが声をかけてくるはず。

不思議に思いながら心許ないチェーンのついた玄関を開けると。

そこにいたのは思いもよらない人だった。

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