第34話 誕プレ

 ――あたし、うどんが食べたいかな? 釜玉の気分だなぁ~。

 ――鴨南蛮そば、並ぶわよ。ご相伴に預かれるなんて、ありがたいでしょ。


「……僕はつけ麺が食べたかった」


 あっちにふらふら、こっちにふらふら。ランチタイムも連続で呼び出し。

 お高めな店を梯子したけど、学生ならフードコートで満足してほしい。

 いい加減、僕のお腹と財布を破裂させる企てを疑った。おえっぷ。


 正反対は、似た者同士。微妙なずれを修正すれば、波長が合うのにね(願望)。

 長期間トイレに強制潜伏させられた、僕。腹痛が痛くてもしょうがない。

 体調が回復した頃合い、今日の内に済ませたいタスクを敢行した。


 リンゴ印の専門ショップへ赴くと、例のブツが展示されている。

 アイパッド、お値段キュッキュッパ。買いたくねー。学生バイトには高いじゃん。


 そもそも、なぜどうして果たして如何に楓子のために入手する必要があるんだ?  

 欲しけりゃ、自分で購入しろ。けっして、労働の苦しみを知らぬ者が得られる代物では――


「いらっしゃいませぇ~。何かお探しですかぁ~。ご要望、承りますよぉ~」

「あ、これで大丈夫です。買います。お願いします」


 ……しまったっ!? つい意識高いスタッフと会話したくなくて、即決しちゃった!

 コミュ障は、カリスマ店員に話しかけられたくないんだ。落ち着いて買い物できない。


 この際、胸の内でハッキリ申し上げるが、お客様に積極的にお声がけしようって方針は滅んでくれ。面倒この上ない無駄な朝礼でお題目を掲げるチェーン店、悔い改めろ。


「ありがとうございましたぁ~。ただ今、キャンペーン期間につき、カバーケースを無料でサービスしておりまぁ~す」


 今更、やっぱキャンセルと言い出せず、僕は10人の諭吉たちと惜別した。

 ATMを通じて結成したユキチーズ、早々に解散。

 これがいわゆる、金の切れ目が縁の切れ目か。そうだよ。


「あ、プレゼントなので、ラッピングお願いします」

「かしこまりましたぁ~。こちらの人気カラーを贈り物に選ぶとは、お兄さんセンスが半端ないですねぇ~。モテる秘訣、見習いたいですよぉ~」


 やかましい。二度と来ないわ。こんな店!

 クレーマーと化した僕は、お客様アンケートに長文批判を投稿するのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る