第21話 牽制

 昼休みのランチタイム。

 カレーパンを食べながら、とある聞き耳ダイアローグ。


「遠足、まじだりぃ」

「それなっ」

「うんうん」

「わかるぅー」


「あたしは楽しみだけどなぁ~」

「カーッ、高陽田はイベント好きだもんな。当日、近場で何かやってっか?」

「都会は遊ぶスポットが多いと思うな」

「あーし、渋谷で人気のカヌレ専門店行きたーい。まりり~ん、だよね?」


「カヌレ美味しいよね。コンビニはどこも売り切れでビックリしちゃった」

「おいおい、マリィにこれ以上スイーツを食べさせるな。油断してるとすぐ肥えるぞ」

「ひどいっ。あたしの涙ぐましいスタイル維持を知らないな?」


「マリィちゃんに可愛い服とっかえひっかえしてー。コスプレ館で、映え写真っしょ」

「コスプレはちょっと興味あるよ。好いではないかぁ~、およしになってぇ~」

「高陽田、しょうがねえ俺がリーダーやってやるよお。さっさと予定決めようぜ」


「勝手に決めんなし。まりりんはボクがエスコートする。お呼びじゃねーから」

「流石、マリィ。小学生から幼馴染で親友の私的に、どこへ行くか君に選ばせるさ」

「マリィちゃん所有マウントよせぃ。束縛とかほんと嫌われっから」


「あん?」

「んだよ」

「はい?」

「そマ?」


「……っ、ちょっと落ち着こっかぁ~。はい、リラックス。あたし、みんなと楽しくお昼食べたいかな?」


 教室全体に1軍たちのひりついた感情が伝播して、気まずい気配が流れた。

 他の昼食グループも鳴りを潜め、口を閉じてしまう程度に。

 さりとて、普段から感染対策に励む僕は平然と黙食を貫くのであった。

 ごめん、嘘つきました。お昼一緒に食べる友達、いないだけでしたね。てへぺろ。

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