第20話 班決め

《4章》

 どうして、月曜日はやって来るのだろうか。

 嫌だったり、体調が悪いわけもなく、形容しがたい憂鬱が足取りを重くした。

 それでも学校を一度もサボらずに赴く僕は、表彰に値する模範生徒だよね。まあ、担任教師に何度も欠席扱いされてしまい、皆勤賞はすでに水泡に帰したのだが。


 ならば逆に考えて、休んでも良いのでは逆に。熊野風太郎、逆説的思考を説く。

 月曜の朝、僕は初手哲学をキメるきらいがあった。

 教室に緩い空気とだるい雰囲気が交差するHRの最中。

 担任が教卓にどっこいしょと寄りかかった。


「おい、お前ら。忘れてるかもしれねーが、金曜日は楽しい楽しい恒例行事・東京遠足じゃねーか。覚えてっか? 俺は職員会議で思い出したわ。ヤベッ」


 担任は、遠足のプリントを配りつつ。


「早い話、東京駅の団体集合場所で点呼を取るからよう。遅れんじゃねーぞ? 遅れた奴は、中間テストの点数マイナス20点だ。リアルガチでマジだ」


 ナンデダヨー、フザケンナー、メンドクセーとブーイングの嵐。


「うるせえうるせえ! 俺の方が面倒に決まってんだろ! あっ、言っちゃった」


 担任は、生徒に正直な先生です。悪い意味で。


「とにかく、テキトーに4人組作っとけ。遠足はグループ参加、グループ行動厳守! 班のリーダーが、メンバーと行動予定をプリントに記入しろ! そうだな……水曜日までに提出しなかった連中もマイナス20点だ! 不平不満批判は一切受け付けない、以上っ」


 チャイムが鳴り響くと同時、担任が教室を退出する。

 入れ替わるように倫理の先生が現れるや、つつがなく授業が開始された。

 遠足、か。


 控えめに言って、僕は学校行事が苦手である。青春を頑張ろうにも上手くできないよ。

 加えて、4人組を作れと我が恩師はおっしゃられたか。団体行動の強要はイジメでは? 教育委員会さん、隠蔽より廃止してくれたら尊敬します。


 虚無の彼方へ時間を飛ばす何もしない人は案外平気だが、心配な方が1人いた。

 右の席を横目で確認した、僕。

 苦虫を噛み潰したような渋面に満ちた、月冴さん。

 多分、カルテットなんて無理だと途方に暮れているのだろう。


 月冴さんは、僕くらい諦観の境地に至っていない。単独で忍び耐えるお方だ。

 プレミアム会員に頼まれると見越して、数合わせ要員を選定しようと思った矢先。


「デジャブ?」


 左の席の可愛い女子もまた、困った表情をしていた。

 高陽田さんが僕の視線に気づくと、ニコっと微笑んだ。

 まさか、クラスの人気者が班決めを恐れている? いや、まさか。

 ともだちレンタルを生業にするくせに、僕はこの手の問題が苦手だった。

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