第110話 救出されるまでの出来事
ダバン領主の館の客室は、それなりに広く、なかなか豪勢な部屋だった。もっとも住民が去ってからずいぶん時間が経過しているのでホコリっぽいところもあったが、部屋として使えないことはない。
窓の外はもう暗い。戦いが終わり、見張りを除いて兵のほとんども眠り始めているのだろう。
そんな部屋に二人きり。僕とローゼンシアがいる。
彼女は――「あはは……ごめんなさい、迷惑かけちゃって」と乾いた笑みを浮かべて一言謝る。
そんな彼女を見て僕は…迷う。
怒るべきか、慰めるべきか、…謝らなくていいと言うべきか…
いや、何が正しいのかよくわからず、とりあえず、
「…まあ座れよ」
とベッドに端に座ることを提案した。
僕がベッドの端に腰をおろすと、彼女もおずおずと近づいて隣に座る。少しだけ距離が開いている気がした。
隣に座るローゼンシアはチラチラとこちらを窺うように見てくる。なんだか落ち着きがなく、太ももをもじもじと動かし、なんとなく今日は遠慮気味だな。
――別にこれが初めてってわけでもないのに。
そうだよ。ローゼンシアは初めてじゃない。彼女が寝取られたのはこれが二度目だ。
あの時はそんなに気にしているふうではなかったのに。
なのに今のローゼンシアは頬を赤らめ、上目遣いでこちらをチラっと横目に見てくる。明らかにいつもと様子がおかしい。
なんだ?
「――それで、聞いてもいいかな?」
「え?」
僕がそう言った途端に、ビクッと体を震わせるローゼンシア。
「何があったのか、詳しく教えてくれるかな?」
「あ、あー、うん、そうだよね。わかった、…言いますね」
ローゼンシアはふぅはぁふぅはぁと深呼吸すると、
「えっとね、彼のアレってその…」
「いや、違う。そっちじゃない。そのドウラン国の連中に攫われた経緯を聞きたいんだけど?」
「え?あ、あー、あはは、そうですよね。へへ、勘違いしちゃいました」
となんだか照れたような笑いをする。
いや、もちろんそれはそれで気になる。だが物事にはほら、順序があるじゃないか。そんないきなり間男との睦言を語られてもね。こっちのメンタルが…おや、そこまで傷ついてないかな?
ふむ。なんだか最近、寝取らればっかりやってるせいか、なんか変な耐性がついてきたな。
「えっとですね、今朝の話ですね。今朝、目を覚ますとリュークがもう部屋にいなかったので、私、何か食べ物がないか外に出たのですよ」
ふむふむ。なるほどね。こんなことなら朝食ぐらい用意しておくべきだったか?
「そこであいつらと出くわしたんですね。私、本当はあいつらと話すことなんて無かったんですけど、そのですね、ほら、奴らの言葉巧みな罠にハマってつい…」
そこでローゼンシアはいかにも悔しそうな顔をする。どうやら罠にハマったことが屈辱だったらしい。一体どんな罠が張り巡らされていたというのだろう?
「奴ら…卑怯にもよく焼けた肉の香ばしい匂いを私に嗅がせてきたんです。くっ、卑怯な連中だと思いませんかッ!?あんな美味しそうな香りを嗅がされたら私、私、食べたくなっちゃうじゃないですかッ?!」
ローゼンシアはまさに迫真の演技といわんばかりの勢いで言葉を紡ぐ。僕といえば、なんだか聞いて損した気分だ。
ふむ。なるほど、どうやらローゼンシアは焼肉の香りに釣られて捕まってしまったようだ。アホである。
「――その焼き肉を食べてから少ししたぐらいですかね。急に猛烈な睡眠に襲われたんです」
な、なんだと!
ローゼンシアはうつむき、目を伏せてぽつりと語る。
「痺れ薬です。どうやら弱毒性の麻痺薬が仕込まれていたみたいで。私が目を覚ました頃には体が痺れて動けなくなっていました」
……?
あれ?僕の理解力が乏しいのかな?今、猛烈な睡魔に襲われたって言ってたような。
てっきり睡眠薬でも仕込まれたのかと思ったのだが、彼女の弁を信じるならばドウランが仕掛けた薬は痺れ薬らしい。
はて?この矛盾は一体…
「迂闊でした。まさか麻痺薬が混入されていたなんて。こんなことなら腹八分目ぐらいにして食べる量を抑えるべきでした。あんなにたくさん食べたら、食べたら、誰だって猛烈に眠くなるじゃないですか!」
と、真に迫るような感情を露にして当時の状況を振り返るローゼンシア。
なるほど、ようやく合点がいった。どうやら強烈な睡魔とは単純にお腹いっぱいになった後に発生する睡魔のことだったらしい。
つまり、眠くなったのは単純に食べ過ぎが原因、ということか。なるほど、確かにこれは巧妙な罠だな。
しかしなんだな、睡眠薬なんて仕込まれてなかったのか。はあ、よかった。
…いや、よくないよね。痺れ薬は仕込まれていたんだから。まったく、なんて卑劣な連中だ!許さんぞ、ドウラン国め!
「………ッ…そうか、それは大変だったな。本当に無事でよかった。その…もう痺れ薬の影響は大丈夫なのか?」
「ああ、それなら大丈夫です。ほら、あの特殊部隊の人が解毒剤を持ってたので、それで解毒できたので」
そこまで話して、僕らの会話に沈黙の間ができる。その沈黙に耐えかねて先に口を開いたのは僕だったりする。
「――あいつがローゼンシア、君を見つけたんだな」
「…うん」
なぜちょっと顔を赤らめる?
「あの時の私ですね、正直ちょっと諦めていました」
ぽつぽつとローゼンシアは語る。
「またあの頃に戻るのかなって。私の意思なんて関係なく、国の意思で私の命が都合よく利用され、消されるのかなって――悲観しました」
――そんな時に彼が現れました、とローゼンシアは熱っぽく言う。
「あの村の民家に私、監禁されてました。そんな時、彼が助けに来てくれて、一緒に逃げようとしたんです。でも周りは兵士だらけで村から逃げられませんでした。私たちは別の民家に隠れていたんですけど、このままだと見つかるなって思って。だから、その、――助けを呼ぶことにしたんです」
ちらりと彼女は僕を見る。
助けを呼ぶ。それはつまり、僕を呼ぶという意味なのだろう。
僕を呼ぶ方法はとても簡単だ。ローゼンシア…彼女が他の男に抱かれればいい。それだけで魔王すら滅ぼせる援軍を呼べるのだ。
これほど頼もしい援軍もないだろう。ふふ、悲しくて涙が出るよね。
「リューク、あのですね」
ローゼンシアはそっと僕の側まで近寄り、僕の背中に手を回して体を密着させてきた。
服越しに彼女の柔らかな体の感触が伝わり、甘い香りが鼻腔を刺激する。
彼女の柔らかな唇が動き、僕の耳元で吐息と一緒に囁かれる。
「私、キュンってしちゃいました」
――なんだと?
思わず僕はローゼンシアの顔を見る。
彼女の瞳を潤っており、顔は赤く染まっている。ハアハアと甘い吐息を漏らしている彼女は、なんだか熱っぽい。まるで…女だ。
「だって、しょうがないじゃないですか…私、本当にもうダメって思ってたんですよ?もう絶対に無理だなって…私の未来はここで終わりだなって、そう思ったんです。そんな絶望に暮れている時に男の人に助けられたら、疼いちゃうじゃないですか?」
疼く、だと?それは一体…あ。
彼女の体温はだんだんと上昇し、とても熱い。特に下半身の部分がじれったいようで、もじもじと太もも同士を擦っていた。
「へ、へへ、あはは…困りますね、こういう感情って……だってその、初めての感情でして、どう処理したら良いのかわからないんです」
――守られてるって気付いたら、私、すごく嬉しくなりました。とローゼンシアは優しそうな笑みを浮かべて応える。
「本当に好きでもなんでもない人だったんですけどね。兵士のくせに弱そうだし。正直、私のタイプではないのですが。なのに変ですよね?私、彼に抱かれている時、本当に幸せで、その、満たされまして…へへ、えへへ…ふふ…男の人に守ってもらえるって、すごく良い気分ですね、リューク」
まるで満ち足りたような顔をしてローゼンシアは僕をじっと見つめ、そして言った。「ごめんね」
それはどういう意味なのだろう?
もちろん、迷惑をかけてごめんという意味ではないことは十分に理解している。それならなぜ…彼女はなぜ謝る?謝る理由なんて無いのに…
「誰かに守れて、愛されるって、すごくステキですね。私、こんなに幸せになれるなんて知りませんでした。今、すごく幸せです。私の人生って本当にクソで最悪で、不幸のどん底で、この先一生幸せになる機会なんて無いって思ってたんですよ?なのにこんなに幸せになれるなんておかしいですよね?私――今なら悔いなく死ねるって思うんです」
…うん?今なんて言ったんだ?
「リューク…私、今すごく幸せです。この幸せの中で死ねるなら後悔はありません。私のこと、ここで殺してくれませんか?」
ローゼンシアは真っ直ぐに僕を見る。その潤っている瞳にはなんだか生気がなく、淀んでいた。
――これのどこか幸せなのだろうか?
「私、リュークのことも好きですよ?リュークのおかげで守られてる、愛されてるって実感を抱くことができました。リュークのおかげでこんな満ち足りた幸福を得られました。私の人生も捨てたものじゃないって気付けました。だからもういいんです。このまま最高の幸せを感じたまま私の人生に幕を下ろしてもらえませんか?」
ローゼンシアはどうやらハッピーエンドを迎えたいらしい。その意思はかなり硬い。
彼女は僕の正面にまわり、そのまま腕を僕の首に絡めるように抱きついてくる。彼女の顔が目の前にきた。その顔の下には、白い首がある。
白く、綺麗で、細い女の首だ。ローゼンシアは強い剣士だが、防御力が高いわけではない。きっと今の僕の力でも簡単に折れてしまいそうな儚さがある。
「ここを絞めてくれたら、それで終わりです。最後の最後で素晴らしい経験ができました。もう思い残すことはありません。どうか私の人生を終わらしてもらえませんか?」
彼女はきっと本心を語っているのだろう。ローゼンシアは本当に生きる気力がない。そんな彼女にとって、幸せな経験を得た今はまさに死ぬには最高の瞬間なのかもしれない。
彼女の白い首にそっと手をおいてみる。
綺麗な肌をしている。顎を指で撫でれば、ぴくんとローゼンシアの体が痙攣する。
もしもここで断ったところで、きっと意味はないだろう。ローゼンシアは今、本当に死にたがっている。というか、終わらせたがっている。
僕がやらなければ、別の誰かに頼むだけかもしれない。もしかしたら、自分で決着をつけてしまうかもしれない。
――まったくあのクソ間男がよぉ。とんでもない事態引き起こしてくれたもんだな。
「ローゼンシア」
「リューク?…あ💓…もしかして最後に一発やりたくなりました?」
僕はそっと彼女を抱き寄せると、そのままローゼンシアの唇を奪う。唇が接触する瞬間、ローゼンシアは両目を閉じて僕を受け入れてくれた。
キスをする。それは柔らかく、温かみのある唇だった。決して死者の唇ではない。
やがて唇が離れると、嬉しそうな顔をする。その目はますます生気を失っていくが。
ふむ。どうやらローゼンシアは別に僕のことを嫌っているわけではないようだ。ただあの間男のことも気に入っている。それだけのことだ。
そうだな。加護が発生していたということは、つまり相思相愛。彼女はいまだに僕のことを愛してくれている。ただもう一人、好きな男が現れた、それだけのことだ。
だったら、大丈夫。大丈夫なのだ。彼女は決して心まで奪われたわけではない。ただ愛してる人間が増えた、それだけのことなのだ。
「ふふ、ふふふ、えへへへ…いいですよ。リュークも思い出が欲しいですもんね。最後に一発やってスッキリこの世におさらばしましょうか」
「最後じゃないよ」
「うん?どういうことですか?」
「これからもローゼンシア、僕は君のことを抱き続ける」
「うーん。それは困りますね。だって私、本当にもうここで人生を終えたいんですよ?」
彼女は一瞬悩むような顔をするが、その決意はなかなか揺るがない。
「僕は君のことを幸せにする。それはこの程度の幸せじゃない。もっともっとだ」
「…そんなことあり得ます?」
「まあ他の男では無理だろうな。だが僕ならできる」
「すっごい自信。本気ですか?」
ローゼンシアはなんだか疑わしい顔をする。眉根を寄せて、口を尖らせる。
「当然だ。僕は約束は必ず守る男だ。家名に誓って約束しよう」
「って言われましてもね。もし約束破られたら私、ガチでキレてたぶんリュークのこと、殺しちゃうかもしれませんよ?」
「問題ない」
「いや、あると思いますよ。だって殺されるんですよ?」
「問題ないよ。約束は必ず果たされるからな」
「だから――無理だって言ってるだろ!」
ローゼンシアは声を荒げ、険のある表情を浮かべる。だがすぐにすっと無表情に戻り、再び幸せそうな顔をした。
「あんまり適当なこと言わないでください。私、実は短気ですよ?怒りっぽいですよ?やると決めたらサクッと刺し殺しますよ?」
「そうなの?初耳だな。もっといろいろ教えてくれよ」
「……実はお肉だけでなく甘いものも好きですよ」
「なるほど。他には何が好きだ?」
「……そうですね。もっといろいろ旅行とか行きたいですね」
「お、いいね。どこか行くか。海でも山でもどんと来いよ」
「馬鹿にしてます?」
「してない。僕は常に本気だ」
「…私、もう幸せなんですよ?これ以上は不要なのですが…」
「そうか?僕はもっと幸せになれる余地があると思うが」
饒舌だったローゼンシアの口が一瞬黙る。少し沈黙した後、なんだか底意地の悪そうな笑顔になる。
「でも私、あの男のことも好きですよ?」
ローゼンシアはより強く僕にぎゅっと抱きついてきた。彼女の声が耳元からよく響く。その力は強く、なんだか無理やり聞かせてくるような勢いだ。
「リュークのエッチも良かったですけど、あの男とのエッチはもっと良かったです。だって、絶対絶命のピンチの時に救われたんですよ?お腹の下がキュンキュンしちゃいますよね?顔も良いですし、テクもあるし、なによりすっごく幸せな状態で抱かれちゃいましたからね。気持ち良くて、本当に気持ち良くて、エッチな喘ぎ声が止まりませんでした――あの人とのエッチ、めちゃくちゃ気持ち良かったですよ」
――リュークよりも感じちゃいました、とローゼンシアは語る。
まるで挑発するみたいな物言いだな。
――ぴくん。うん?これは一体…なぜ僕の体が反応する?
まさか、興奮しているのか?僕はこの状況に興奮しているというのか?馬鹿な?
そんな僕の内心の動揺を感じ取ったのか、ますますローゼンシアの言葉が激しくなる。
「あの人に抱かれてる時、頭がふわふわして、気持ち良くなっちゃって…あ、もちろんリュークへの気持ちもありますからね。他の男に抱かれて喜んだらダメだって、ちゃんと頭では理解していましたよ。私、リュークのためにもちゃんと理性は保とうとしましたよ?…でも無理でした💓」
――だって声が出ちゃうんです、とローゼンシアは語る。
「こんなのダメなのに。でも体は正直で、嘘がつけません。あの人に抱かれるごとに、愛情を込められるごとに、体が喜んで、気持ち良い声が出ちゃいました。…だめ、ダメだよ、ダメなのに、気持ち良いよぉ💓…なーんてね。ふふ、本当に、すっごく、気持ち良くて、甘いひと時でしたよ」
――私、すっごく幸せでした、とローゼンシアは僕に囁く。
「リュークには感謝しています。私の事を助けにきてくれて。だってそのおかげで、あんなにも気持ち良いエッチができましたから。その感謝の印として、最後に一発だけやらせてあげてもいいですよ?」
ニヤニヤとまるで悪役でも演じてるかのような話しぶりだ。
「そんなに気持ち良かったのか?」
「ええ、すっごく」
「僕よりも、か?」
「……はい。リュークよりも、ですよ💓」
その言葉を聞いて、ようやく答えが出た気がした。
そうだ。僕は一体何を勘違いしていたのだろう。
僕は大事な女を寝取られた。その事実は変えようがない。
寝取られたら、寝取り返す。それしか方法は無いじゃないか!なぜそんな簡単なことに気付けないんだ!
「ローゼンシア」
「ふふ、なんですか?」
「今から君を抱く。あの間男よりも気持ち良くしてみせる」
「…はい?」
「僕は君のことが大好きだ。当然、ここで死なせるわけにはいかん。なによりあんな優男に奪われるなんて我慢できない。今ここで僕が奴より上だと証明しようじゃないか!」
「いや、あの話を聞いて…うん?何か大きくなって…え、デカすぎない?」
ローゼンシアは奴に抱かれた。それは仕方のないことだ。しかし感情に嘘はつけない。
どんな事情があるにせよ、他の男に大事なローゼンシアが抱かれたという事実が、その怒りの感情が僕に力を与える。
どくん、どくん、とまるで加護でも発動したかのような血流の激しさを感じるくらいだ。…特に下腹部から言い知れない力を感じる。
「え、ちょっと待って…なんでまだ大きく…ひぃ!なにこれ、すごい血管がバキバキに浮き出てる…オーガかしら?」
「ローゼンシア、君を取り戻す。たとえどんな手を使ってもだ!」
「え、いや、あの、手っていうかアレというか、その、ええ、ちょっと待って、…あの、それは本当に無理だって。リューク、本当に無理だってば!だって大きすぎ……ああん💓」
ローゼンシアを間男から取り戻さないといけない。
僕はローゼンシアをがっつりとホールドすると、そのまま抱いた。
もう絶対に放さないとばかりに密着し、両腕で拘束して逃げられないようにする。
愛して、愛して、愛しまくる。今の僕にできることはそれだけだ。
テクで負けるかもしれない。シチュエーションで負けるかもしれない。僕にあるのは愛情だけだ。愛情だけなら負ける気がしない!
もちろん、彼女を苦しめるようなことは決してせず、ただひたすらに彼女に愛情を注ぐことに勤しんだ。
「…」
「…」
「…」
「…!」
「…」
「…待ってリューク…あん💓」
「…」
「…なんで?なんでこんなに大きく…前よりずっと大きい…あん💓」
「…」
「それは本当に無理だって!だって壊れちゃう…あん💓」
「…」
「…」
「…しゅごい💓」
「…」
「…」
「…!💓!💓!💓!💓!💓!💓!💓!💓!💓!💓!💓!💓!💓!💓!」
「…」
「…」
「…💓」
「…」
「…」
「…はい💓こっちの方が良いです💓」
「…」
「…」
「すき💓」
「…」
「あん💓……もう逆らえないよ…ああん💓」
「……」
「…大好きです💓…ん💓」
やがて行為がすべて終了した時、僕は裸になって汗ばむローゼンシアにそっとキスをする。
今のローゼンシアは…うん。ちょっとやり過ぎたかもな。
窓から差し込む月の青い光がローゼンシアの体を照らす。その肌はべっとり汗やら何かの体液で濡れていて、テカテカと輝いていた。
あの綺麗だった紫色の長い髪は大いに乱れ、ベッドのシーツもぐしゃぐしゃだ。
本当に酷い有様だ。しかしローゼンシアの顔はなんだか血色が良く、生気に満ちている、そんな気がした。
ふぅ。それにしても凄い勝負だった。しかし頑張った甲斐もあってか、ローゼンシアは僕と一緒にこれからも生きてくれると誓ってくれた。
最後の方なんて僕に誓っているのか、それとも…うん、この話はよそう。
ローゼンシアは確かに間男のことも好きになっていたようだが、それ以上に僕の方が好きだと喜んでくれた。ふぅ、危なかった。
「……ふぅ、……ふぅ、……」
ベッドの上でとんでもない姿を晒すローゼンシアだが、その寝息をたてる顔はどこか満ち足りていて、安らかだ。
そんな彼女の顔を見守りつつ、僕もやがて睡魔に襲われて眠りにつく。
そして夜が終わり、朝を迎える。
その日の朝はローゼンシアと一緒に迎える。
「あ、おはようリューク…へへ、昨日は…あ💓…もう💓」
目を覚ましたローゼンシアが何か言いたそうだったので、そのまま彼女にキスをした。するとなんだか嬉しそうな顔をする。
「もう…ズルいですよ?こんなの味わったら、もう死にたいなんて言えないじゃないですか」
顔を赤らめて熱っぽく僕を見るローゼンシア。ふぅ、どうやら危機は去ったようだ。
「これからもいっぱい愛してくださいね」
「ああ、わかってるよ」
「ふふ…でないと――」
――間男に抱かれちゃいますよ💓…とローゼンシアは僕に釘を刺してきた。
あれ?これってまだ寝取られ継続する流れなの?
どうやら彼女は寝取られを止めるつもりはないようだった。
「だって私、エッチ好きですし。これからも生きるっていうなら、止められないですよ」
「そ、そうなんだ」
「だから――他の男に負けないくらい良い男になってくださいね」
と言ってほほ笑むローゼンシアはなんだかとても優しそうだった。
まったく、こんなこと言われたら拒否できない。僕はもっともっとエッチの上手な男になることを硬く決意するのであった。
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