第81話 剣王の国
「お、男の人は一回やったら終わりって聞いたことがあるのですけど、リュークサマはそうでもないみたいですね?」
僕の部屋には現在シルフィアがいるので、僕らはローゼンシアの部屋へと向かった。
ベッドの端に座りながら、チラチラとこちらを見ているローゼンシアは頬を赤らめながらそんなことを言う。
…ふむ。確かに最近、なんだか体力が有り余っている気がする。特にそう…加護を使用するようになってから体付きがなんだか筋肉質になっているようで、今まで以上に体力がついている。
自分でもちょっとおかしい気もするが、なぜだ?
やっぱり戦場に出ているから力がついているからなのかな?そうだと信じたい。
…まさか加護を使えば使うほど、加護の力に肉体が引っ張られて強化されてるとかないよね?
そんなことよりも、今は話すことがある。
「近いうちに出撃命令が出る。それで…ローゼンシア。君は…」
「私も行きますよ」
と、その口調は硬い。
さっきまで人の情事を盗み聞きして発情していた女とは思えないくらい、キリッとした表情を浮かべて応える。
「…わかった。なら今後は僕の従者として付いてもらおうか」
「ふふ、そうですね。もうすぐ国が滅ぶ。そうなったら私の肩書もただの一般人になりますからね。リューク様に媚びを売らないと」
と、なんだか自嘲気味な顔をして答えるローゼンシア。
隣に座る彼女の姿は、まさに絶世の美少女に相応しい。長くふんわりとした紫色の髪は美しく、凛とした瞳は大きくて、見ていると吸い込まれそうだ。
体は女性らしく柔らかな丸みがあり、それでいて腰のあたりは細くしなやかで、彼女の胸元を見れば服を下から盛り上げる豊かな双丘がある。
「リューク…様には感謝してますよ?美味しい食事から暖かい部屋、寝心地の良いベッドまで用意してくださって…」
そういえば初めて会った時、なんだかドウランの貴族たちと揉めていたな。もしも僕と出会わなかったらどうするつもりだったのだろう?
「うーん、そうですね、その時は街娼でもしてましたね。ほら、私って超がつくほど可愛いじゃないですか?この見た目なら稼げるでしょ?」
僕が疑問をぶつければ、茶化すようなことを言うローゼンシア。しかし、おそらく冗談ではなく本気だろう。
普通のお姫様なら、そんなことは決してしないはずだ。しかし彼女はなんだか普通ではない。
「でも――そうですね。そんなに気持ちの良いものなんですか?」
「うん?なにが?」
「リュークサマとするエッチのこと、ですよ?」
ローゼンシアはそう言ってからベッドから立ち上がると、僕の真向いに移動し、そのまま僕の両膝の上に跨るようにして抱きついてきた。
ローゼンシアの柔らかな感触…胸や太もものあたる感触が伝わってきた。
はあはあ、と甘い吐息が目の前の美少女の口から漏れる。
「私、生きることにもうそれほど興味がないの。今の私はただ、やりたいことがなにもない。もうすぐ故郷もなくなる。私が生きるすべての意味がなくなる――だから教えてほしいの…」
――セックスってそんなに楽しいの?…とローゼンシアは僕の耳元に息を吹きかけてくる。
ローゼンシア…彼女が好き放題勝手に生きて、好きに飲み食いして生きていたのは、単純に食欲にしか興味が無かったから、なのだろうか?
その生き方はなんというか…
「ふっ」
「…なにがおかしいの?」
「ああ、ごめんごめん。ただ、そうだな。美味い飯を食って、良い女を抱いて、暖かいベッドで寝る。なかなか良い身分じゃないか。それでは不満なのかな?って思って」
もちろん、ローゼンシアが言いたいことはそういうことではないのだろう。ただ今の生活だって守るに値する、価値のあるものではないのかな、とふと思っただけだ。
「…不満はないですよ?私…ここでの生活、ちょっと良いって思ってたし」
おや、そうなのか?
顔を伏せ、ぽつりと言葉を漏らすローゼンシア。その言葉に偽りはないように思われた。
「リュークこそ、なにが不満なのです?」
やがて顔を上げ、その整った美貌を僕に向けるローゼンシア。
「私みたいな可愛い美少女が抱けるのですよ?どこに不満があるのです?」
ふむ。確かに不満はないのだ。ローゼンシアは見た目だけなら絶世の美少女なのだし、それこそ大金を払ってでも抱きたいという男は大勢いるのだろう。
今も目の前の彼女から甘い香りが漂ってきて、僕の太ももに彼女の柔らかなお尻の感触が伝わってくる。その快楽が凄まじく、理性を総動員しないと襲い掛かってしまいそうだった。
ふぅ。既にシルフィアを抱いた後で良かった。でないと本能に負けていたかもしれない。
「…そうだな。ローゼンシア。君はすごく可愛い。君みたいな最高に可愛い美少女を抱けることに不満はないよ」
「ならどうして?」
「ローゼンシアが生きたいって思ってないから、だよ」
そう言われて口を閉じるローゼンシア。僕に抱きつく彼女の手に力が入った気がした。
「私の生きる目標はね、クソ親父を殺すことだった」
やがてローゼンシアはぽつりと零す。
「私の国、ドウランはね、強さこそ正義。弱いものは悪、そういう国是を掲げている国。王は誰よりも強くあらねばならぬ。弱い王は決して許されない国…だった」
彼女は僕を真剣な目で見つめて言う。
「武勇に優れた国なんて、傍から聞く分にはカッコいいですね。でも強要される側はたまったものじゃない。ねえ知ってます?――あの国の王を決める方法を」
「さあ?どんな方法なの?」
「王の子供が成人の年齢に達しましたらね、王と決闘をさせるのです。生き残った方が次の王になる」
へえ、そうなんだ…それって親子で殺し合いをするってことじゃん。
「バカバカしいでしょ?こっちは好きでお姫様になったわけでもないのに。あの国の王族として生を受けた、たったそれだけの理由で大人になった瞬間に殺し合いをさせられる」
――バカバカしい、と吐き捨てるようにローゼンシアは言う。
「生き残るには親を殺すしかない。…私…お兄ちゃんがいました」
ローゼンシアはなんとか絞り出すように言葉を紡いだ。
「私、お兄ちゃんのことが大好きだった。厳しい訓練で泣きそうだった私を慰めてくれたお兄ちゃん。いつも優しかったお兄ちゃん。こっそりパンを分けてくれたお兄ちゃん。私なんかよりずっと強かったお兄ちゃん。そのお兄ちゃんもね、成人になった瞬間に剣王と戦うことになったの」
――死んだよ、と彼女は云った。
「首を剣で切り飛ばされて、殺されました」
彼女は続ける。
「お兄ちゃんはあんなに強かったのに、剣王はもっと強かった…当然ですね。だってお兄ちゃんと違って剣王には加護があるのですから」
彼女は唇を噛み、言う。
「ズルいって思わないですか?だって加護を受けられるのは成人してからなのですよ?あのクソ親父は加護を使って戦える。でもこっちは加護なんて無い。自力で剣王に挑まないといけない。こんなの公平じゃない。――なんでこんな理不尽な目に遭って殺されないといけないのです?なんでお兄ちゃんは殺されないといけなかったの?」
――許せなかった。殺してやりたいぐらい憎んだ。でもあいつら、私に殺される前に魔族に殺された…とローゼンシアは無感情な顔で言う。
「どうなってるのですか?こんなのおかしいですよね?ねえ、そう思いませんか?」
声を震わせ、僕を真っ直ぐに見るローゼンシア。その瞳はなんだか歪んでいる。今にも壊れてしまいそうだった。
「あいつら…なんて言ってたと思います?…復讐が、人を強くするって。今思えばバカみたいな訓示でした。あいつら、兄を殺された復讐をバネにして強くなれ、そう言ったのですよ。――ふざけるな。なんだそれ?頭がおかしいのか?ううん、違う、一番おかしいのは私です。だって…」
――その理屈を正しいってあの時の私、思ったから…と後悔するように言う。
「あいつらのこと、憎んでたはずなのに。なのに…私、復讐心が人を育てるその考え方も正しいのかもしれない、そんなふうに思っちゃいました。ふふ、馬鹿みたいですよね?剣王もそうやって復讐心をバネにして父親を殺したそうです…復讐心があればあるほど強くなれるってあの馬鹿親父は信じていた」
――じゃあなんで負けたんだよ!とローゼンシアは悲痛な声をあげる。
「復讐が人を強くするなら、なんであいつら魔族に負けたの?おかしいじゃん。強さこそ正義じゃなかったの?その理屈のためにお兄ちゃんは犠牲になったんだろッ!?なのに負けた…どうしてッ!?じゃあお兄ちゃんは無駄死にだったの?ねえ、リュークはどう思う?」
――答えてください、と彼女は僕に迫ってくる。
「…無駄じゃないよ」
と僕は答えた。
「…なにその綺麗ごと?そんな答えで納得すると思ってるの?」
ひゅっと一陣の風が吹いたような気がした。ここ、室内なのに。なんだか急速に温度が冷えているような。その原因は、目の前のローゼンシアだろう。
…どうやらちょっとキレ始めてるみたいだ。
でも言うしかないか。
「無駄じゃない。何度でも綺麗ごとを言ってやる。なぜなら僕は綺麗ごとが好きだからな。僕は自分にとって都合の良いように考える人間だ。だからローゼンシア、君のお兄さんが無駄死にしたなんて、そんな都合の悪い結果は認められない」
「…意味わかんないんだけど?」
ふむ。確かにそうかもな。ただなんとなくだが、彼女の機嫌が少しだけ戻った気がした。
「…お兄ちゃんが無駄死にだと、なんでリュークが困るのです?」
「え、だってそれだとローゼンシアに会えないじゃないか」
「…私に会えて嬉しいの?なんで?強いから?」
「ふむ。確かに剣の腕前はたいしたものだ。でもそれだけじゃない。ローゼンシア、君を僕の女したいからだ」
「…本当に色情狂なんだ」
なんだかローゼンシアの目が細く冷たくなった気がした。そして、
「いいよ。この世に未練なんてないし、好きに抱けばいい」
「だったら僕と一緒に幸せな未来を歩んでくれないか?それが君を抱く条件だ」
それ以外は認めんという態度を示すと、なんだか複雑な顔をされた。
「…さっきまで別の女を抱いてたくせに」
「ああ。僕は女性が大好きだからな。これからも今後も好きな女性を抱くつもりだ。もちろん、ローゼンシア、君も好きだから抱く。他の男が真似できないくらいたくさんの愛情を注いでやろう。ローゼンシア…君のことは必ず幸せにする」
「…最低な男ですね。…本当ですか?」
「本当だ。僕は約束は必ず守るタイプだ。約束しよう」
「でも…あ」
僕は彼女の背中に手をまわして、ギュッと抱きしめる。一瞬、ローゼンシアの体が強張るが、やがて力を抜いて僕にされるがままになる。
「ドウランの姫じゃない。僕の女として、これからは幸せな人生を歩んでほしい。それを目標に今後は精一杯人生を謳歌してくれないか?幸せいっぱいに生きて、いつしか復讐のことなんて忘れて、目の前の幸福な家庭を愛でて、誰よりも充実した人生を過ごしてくれ。それが僕の望みだ」
「…できるかな?」
「できるよ。僕が隣で手助けしよう」
「責任、取ってくれるの?」
「ああ、当然だろ」
「――なら全部ぶっ壊して」
ローゼンシアの僕に抱きつく腕の力が強くなる。やがて彼女の体がぴったりと密着してくる。
「あの国を壊して。二度と再建なんてできないようにしろッ!全部全部ぜんぶ、ぜんぶ壊してッ!!――私のことも壊してくれないかな?」
――もう耐えられないから…そう言って僕に抱きついてくる彼女はなんとなく子供っぽく見えた。
僕はローゼンシアを…
「いいだろう。ドウランはここで終わらす。ローゼンシア、君は…今から僕の女にするぞ」
「うん…きて」
やがてどちらからとなく唇が近づき、キスをする。最初は唇が触れる程度の軽いキスだった。しかしだんだんと激しくなり、やがてはローゼンシアは夢中になるように僕にキスをしてくる。
そんな彼女の服に手を伸ばして脱がしていくと、まるで抵抗することなくするすると衣服は落ちていき、やがて彼女の裸身が目の前に現れる。
「…ん💓…リューク💓…ん💓…ん?え、いつの間に?」
「ローゼンシア、愛してるぞ」
「え、あの、う、うん、私も…あ💓」
やがて僕も服を脱ぎ、彼女の細く柔らかな体を抱き寄せ、一緒にベッドに倒れ込む。
ベッドに仰向けになるローゼンシア。染み一つない綺麗な肌をしている。腰は細く、胸の形はとても綺麗で美しい。やはり美少女だな、ローゼンシアは。
「あの、私、初めてだから」
目を大きく見開きつつ、まるで何かを期待するような顔をしてローゼンシアはこちらを見る。その頬はピンク色に染まっている。
「わかってる。僕に任せて欲しい」
「え、あ、うん…リュークは経験豊富だもんね💓」
ローゼンシアは僕に身を任せるように抱かれた。
「…」
「…」
「…ん💓」
「……え?」
「……」
「…すごい💓」
「……ん💓…あ、まって…んんッ💓!!!!!!!!!!」
「…」
「…だ、ダメ!待ってってば!もう…これ以上はダメ…あん💓」
「…」
「…💓…💓…💓…💓…💓…💓💓💓…あんッ!」
「…」
「…」
「…」
「…好き」
「…こんなに凄いんだ…あん💓」
「……」
「……」
「…」
「…」
「あ💓そこダメ💓」
「…」
「…」
「…どうしよう…好きになっちゃう💓」
「…」
「はあ、はあ、好きだよリューク💓」
やがて行為が終わった時。
「ん💓好き💓好きだよ💓もっと💓」
ベッドに仰向けになる僕の上に、ローゼンシアは甘えるように抱きついてくる。
汗でべっとりしてるローゼンシアの体。そんな彼女の形の良い胸が僕の胸板に圧し潰されることでたわわに変形してるのだが、ふむ、すごい絶景だ。
「ふふ、ふふふ、エッチってこんなに凄いだ。…ねえリューク、もっとしよ?」
「…ああ、いいよ。付き合おう」
彼女の後頭部に手を置いて僕に近寄せると、そのままローゼンシアの唇を奪う。そして再び行為が始まる。
彼女を抱くことで、今まで以上に彼女のことを愛おしく感じるようになる。なんだか絆のようなものが芽生えた気がした。
そしてそれは同時に、彼女が加護発動の条件を満たしたことを心の中のどこかで感じた。
……それにしても、なんか凄い反応が良かったな。もしかして僕、エッチがうまくなっているのか?
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