第80話 指揮官
――王宮
その日の朝。
白の魔女ルシアのおかげでゼイラの力が復活。おかげでこちらの戦力を大幅アップできたということもあってか、その晩は浮かれ気分でシルフィアとフィリエルとルワナを三人まとめて抱いた。
まさか三人の美女を同時に抱く日が来るとは思わなかった。でも楽しかった。
特にシルフィアの甘えっぷりが凄かった。もうすぐ戦争が始まるからなのか、シルフィアがすごく情熱的に求めてくる。
そんなシルフィアに対抗するようにフィリエルとルワナが激しく求めてくるところが可愛かった。
それは良い。そこまでは問題はないのだ。
問題は、なんだかシルフィアが…いやシルフィアだけではない。フィリエルとルワナがだんだんエッチに慣れてきたというか、エロいことを楽しむようになってきたのだ。
経験が増えることでエロの楽しみ方を覚えてしまったようで、夜の時間がいつも以上に快楽的になった。
そんなエッチの楽しみを覚えた彼女たちが間男に抱かれた時、なんの抵抗もなく受けれてしまう恐れがある――それこそが最大の問題だ。
だ、大丈夫だよね?少なくともルワナは間男に抱かれないから大丈夫だよね?
どうしよう?エッチなことを楽しむようになればなるほど、かえって危険度が増しているような…
「おい、お前、聞いてるのか?」
「…ええ、もちろんですとも、殿下」
「…聞いてないな」
そして現在。僕は昨夜の彼女たちの行為の数々を思い起こしながら王宮の執務室にてカルゴア王国の第八王子であるルクスに怒られていた。
ルクスが怒る原因。それは彼が右手に持っている手紙…僕が出したものなのだが…それが原因だったりする。
「お前、限度ってものを知らないのか?」
「いや、違うのですよ。あんなに身請け金がかかるとは知らなくて…」
「チッ。少しは交渉しようと思わなかったのか?」
それはゼイラを身請けにかかった金貨の話。だって5000金貨もかかるだなんて知らなかったんだもん。プラスしてモカとニーナの身請け金も入ってるのだが、そこは触れないでおこう。
「それは難しいかと。ゼイラは紅玉の館の人気嬢ですので…」
「随分仲が良いみたいだな?」
「え、まあ身請けした仲ですので。それが何か?」
ルクスはじっと目を細めて僕を見る。そしてぽつりと口を零す。
「…そんなに良い女なのか?」
おや?なんか別の方向に意識が向いたような…
「元S級冒険者ですからね。やはりネームブランドがあると人気も出るのでは?」
「ああ、そういうことか」
僕の言葉にルクスは納得したような顔をする。
もちろん、ゼイラが一流の冒険者であり、それが理由で身請け金が高くなったというのもあるのだろう。
なにしろS級冒険者である。本来であれば普通の人間ならば絶対に敵わない超常の存在だ。
そんな彼女が抱けるのである。それもどんな卑猥な命令だって聞いてくれるのである。なんなら弱体化のおかげで…いや、これ以上は止めておこう。
…しかし、あの娼館の支配人の顔を思い出すに、ゼイラの身請け金が高額になった理由はもっと別のなにかだろう。
なにしろゼイラは…とんでもなく良い女なのだから。
「…金貨の件だが、流石に高額すぎる。いくら元S級冒険者のためとはいえ、まだ成果も出してないのにそれだけの金は払えん」
と、まさかの拒否。
え、マジで?ちょっと勘弁してよ。うちの財産からお金出したんですけど!
「だから成果を出せ」
と言葉を続けるルクス。
「その女はお前が身請けしたのだろ?だったら次の戦場に連れて行って成果を出させろ。それが金貨を出す条件だ」
…それ報奨金じゃないの?と言いたくなったが、そんなこと言ったら再びこの王子がキレそうだったので、僕は、
「わかりました。成果を出しましょう」
と受け入れることにした。
仕方がない。言われた以上はやるしかないのだ。だったらやるしかないだろう。
「次の出撃は近いのでしょうか?」
「…ああ。今日中に準備をしろ。詳細はまた伝える」
――どうやら戦の準備は既に整っていたようだ。てっきり金貨の件で叱るために王宮に呼ばれたのかと思っていたが、本題はこちらのようだ。
「その冒険者は強いといってもやはり冒険者だ。軍の指揮などできないだろうからな。お前の指揮下に加えろ」
「はあ。それは構わないのですが…それだと僕が指揮を取るみたいですね」
「その通りだが?」
…え?
「別におかしくはないだろ?お前はもともと軍閥の貴族だろ。だいたい指揮官として学ぶためにわざわざ帝国まで留学したのだろうが」
まあそれはそうなのだが。急な出世だな。
「第六騎士団も今回の動員で兵が増員されてデカくなった。今後は戦闘だけでなく指揮もしてもらう。まずは100人ほどの兵を率いろ」
100人、か。中隊規模だな。ただ問題は…
「僕の加護のことを考えると前線に出ないといけないのですが、どういった編成なのでしょうか?軍の兵科はどうなのですか?」
「安心しろ。お前に瑪瑙部隊を任せるつもりはない。まずカルゴアより重装騎兵が10、軽装騎兵が30、歩兵が30、あと人類軍より魔導騎兵が30送られる、ってところだな」
ふむふむ。騎兵が中心の機動力を活かした部隊ってところかな?まあそれなら…魔導騎兵ってなんだ?
「魔導騎兵って何です?」
それは知らない兵科だな。
「本来なら弓騎兵を用意したいところだが、魔族に弓を撃っても効果がないからな。魔術師で主に構成された騎兵だと思え」
いや、思えって言われてもな。
カルゴアにも魔術師はいるが、やはり本場のディストグルフのように強力な魔術師は少ない。
そして魔術師のほとんどが頭脳派であり、体力や腕力はほとんどないことが多い。当然、馬に乗るスキルなんて無い。きっとあの白き魔女ですら、馬には乗れないだろうな。
もちろん、中には武闘派な魔術師もいるが、やはり肉体も強い魔術師となると少数派であるため滅多にいない。
だからこそ魔術師は基本は歩兵の部隊に配属される。騎兵部隊にまわされることは滅多にないのだが…
「安心しろ。この日のためにわざわざ訓練させておいた。即席だがな」
「即席、ですか?」
「ああ。体力のない魔術師に乗馬は無理だからな。二人乗りで戦場に出ることにしてもらった」
それは大丈夫なのだろうか?
もちろん、軍馬は一般の馬よりも力があるので、二人ぐらいは乗せられる。しかし二人も乗ったら速度は落ちるし、馬の体力も続かないだろう。
「わかってる。だが魔族との戦いで弓騎兵なんてそれこそただの無駄だぞ?なら欠点は承知の上で役に立つ魔術師を馬に乗せた方が効率が良い」
それはそれで間違ってはいないだろう。
本来、乗馬なんて一人の方が良いに決まっている。しかし、弓が役に立たない以上、前線に出したところで魔族に対して意味がないのも事実だ。
なにより弓だって使えば消耗するし、矢を射れば無くなる。無くなった分は新たに補給しなければならなず、物資はますます不足する。
その点、魔術師はポーションさえ与えてしまえば何度でも魔法を撃てる。もちろん、ポーションが尽きたらもう戦えないが、役に立たない弓よりもよっぽどマシだろう。
問題は、魔術師は体力がなく、機動性に欠けるところだ。
魔法は強力だが当たらねば意味がない。弓と違って連発ができないので、外れるとすぐに魔力切れで役に立たなくなる。一発一発が貴重なのだ。
確実に魔法を当てるためには、魔族を魔法が当たりやすい場所へと誘導しなければならない。
しかし、二人乗りとはいえ、馬を使用すればこちらから魔法を当てに行くことができる。魔術師の機動力の不足という欠点を補うことはできるだろう。
…あとはどう運用するか、だ。
「部隊の運用については人類軍より人を送るとのことだ。実際の指揮はそいつに任せろ。お前は…先陣を切って暴れたらいい」
――任せるぞ切り込み隊長、とルクスは僕に言う。
今まではただの騎士団の団員だったわけだが、どうやら指揮官へと昇格したようだ。
切り込み隊長、ね。確かに指揮官ではあるのだが、僕に求められているのは小難しい戦術ではないのだろう。
要は、兵を率いて魔族の部隊に突撃する。それが僕の役割のようだ。
その後。人類軍から派遣されてくる副隊長と各部隊の隊長と挨拶を済ませると、僕は屋敷に戻る。
中隊規模の軍隊を任せられることで、これで僕にもある程度の軍の人事権を得たわけだ。僕の指揮下であれば、有能な奴を引き入れても良いのだろう。
屋敷に戻る馬車に乗って揺られながら、考える。
まずゼイラは決定だ。ただどのぐらい戦えるのか知りたい。模擬戦みたいなことができれば良いのだが。
他は…ローゼンシアか?
ローゼンシアは確かに強い。指揮下に入れもても問題はない。ただ――なんだかメンタルが不安定なんだよな。
…どうでもいいが、なぜ女性ばかりなんだ?
もちろん、周りにいるなら女性の方が良い。ただ戦場なのだ。傷ついても困るんだけどな。
男でも有能ならば引き入れたいところだが…どこにいるのやら。
――いや、有能な男は既に死んでいるのか。魔族との戦いで。
やがて馬車は屋敷に到着する。僕は馬車を降りて屋敷へと入る。
問題は…
執事が扉を開け、屋敷の玄関を抜けながら、考える。
最大の問題は、再び始まるということだ。寝取られが。
「あら?リュークお帰りなさい。早かった…ん💓…どうしたの?」
僕が戻ると部屋の奥からシルフィアが赤い髪をなびかせながらやって来た。そんな彼女の体を抱きとめて僕はゆっくりと唇を奪った。
「今から激しく抱く。いいか?」
「…いいよ。私の体はリュークのものだから」
まだ日も高い昼のうち。僕はシルフィアをベッドへ連れて行って、そのまま動物みたいに彼女の体を貪った。
ベッドが軋む音がする。シルフィアの甘い吐息と、媚びた嬌声が漏れる。体を震わせ、のけぞり、発汗で皮膚は光沢を帯び始める。
シーツは乱れ、シルフィアをさらに乱暴に扱い、そんな扱われ方をされてるのに彼女の口からはもっとしてと懇願するような甘い声が出る。
好きだ。シルフィアが。
シルフィアは良い女だ。そして僕の最愛の女性である。そんなシルフィアが…
また他の男に抱かれる。
この赤く綺麗な髪も、柔らかい唇も、感触の良い大きな胸も、この細い腰も、丸々とした尻も、むっちりとした太ももも、全部、全部、全部…
他の男に奪われてしまう。
「…あん💓リューク?」
「……」
「怖いの?」
「…そう思う?」
はあはあと呼吸を荒くし、それに合わせて胸が上下にかすかに揺れるシルフィアの裸体が今、目の前にある。
彼女は汗だくで、しっとりと肌を濡らし、目を蕩けさせて僕をじっと蠱惑的な笑みを浮かべながら見つめてくる。
シルフィアはそっと手を伸ばして僕の頬に両手を添えて、そして言う。
「私のせいだね。リュークを苦しめてる。…でも止めないでね」
シルフィアは笑みを止めない。
「リュークが苦しむ姿なんて、本当は見たくないよ?苦しむリュークを救ってあげたい…でも止めるはダメ。だって、約束したもんね?」
「…わかってる。シルフィアの故郷は必ず取り戻す。僕は…約束は必ず守るよ」
「うん💓…大丈夫だよ、リューク。だって最近のリューク、エッチも凄く上手になってるよ💓」
え、そう?
そう言われると悪い気はしない。
「…………それに……ふふ……アレが発動するとあっちも大きくなるし…」
「うん?なんか言った?」
「ううん。なんでもないよ」
そっか。気のせいか。
「ねえリューク?」
「うん?なにかな?」
「私のこと、めちゃくちゃにして?リュークのこと、感じさせて?」
「…わかった。いっぱい愛すよ」
「うん💓」
その後もシルフィアとの交じり合いは続いた。やがて彼女も疲れてしまったのだろう、まだ夕暮れだが「すぅすぅ」と寝息をたててベッドの上に眠り始める。
僕はそんな彼女の頬にキスをしてから、服を着て、音をたてないように扉を開けた。
「ひっ」
「よう。前回の話の続きをしようか?」
扉の外。廊下には聞き耳をたてていたローゼンシアがいた。彼女はなんだか顔が赤く、目に見えて動揺していた。
発情したような顔。しかし――彼女の目はやや暗い。
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