第10話 VS魔王ギュレイドス

 平原の奥。緑色の肌をしている、身長約2メートルほどの魔族たちの軍勢がずらりと横に並ぶ。


 今まで奴隷兵が並び立っていたので目立たなかったが、こうやって改めて見ると奴隷兵たちとは異なる威圧感が魔族の軍勢にはあった。


 そんな魔族の軍勢の中でも5体ほど、他と比べて際立って背の高い魔族がおり、その中でも特に背が高く、威圧感のあるあの魔族こそ、魔王のギュレイドスなのだろう。


「あの真ん中の奴がギュレイドスだな。手配書と同じ顔をしてる」


 他の魔族が緑色の肌をしているのに対して、奴だけが灰色の肌をしており、顔は牛のような形をしている。頭からは二本の角を生やしているあの魔族こそ、どうやら魔王で間違いないようだ。


「団長…」


「総司令官からの合図があるまで待て…」


 既に戦場の奴隷兵はほとんどが狩りつくされており、あちこちに人間の死体が散乱していた。まだ死んで間もないないだろう、濡れた血によって体が鮮血に染まっている。


 やがて本陣の方より動きがある。


「全軍、後退!急げ!」


 司令官より指示が飛び、今まで戦場に飛び出していた軽装の歩兵部隊や騎乗部隊がそれぞれの隊長の指示のもと本陣まで後退してくる。


 やがて司令本部より馬に乗った伝令兵がこちらに駆け寄ってきて、ルクスに近寄り、なにかを報告をする。


「…うむ、了解した。リューク!俺が合図をしたら加護を使用しろ」


「ハッ!了解しました!」


「ん?奴ら、動いたな」


 ルクスの視線が戦場の奥、魔族軍の方を向く。


 魔族は図体がデカく、人間の倍以上の腕力を持つ。まさに怪物と呼べるような力を持つ反面、歩くスピードは遅く、ズンズンとデカい足音を鳴らして魔族の軍勢は前進を始めた。


 目算で3000から5000ほど、だろうか。ズラリと横に並ぶ魔族の軍勢がゆっくりであるが、こちらに向かって迫ってくる。


 そんな緩慢な速度で前進する魔族であるが、一人だけ他の軍とは異なる速度で前進していた。


 ギュレイドスだ。


 ドンドンとデカい足音をさせながら、こちらに向かって走ってくる。その形相は怒りに満ちており、今すぐにでもその肩に担いでいる戦斧を振るいたいとでもいわんばかりの勢いだった。


 そんなギュレイドスの後方より、さらに4体の巨大な魔族が魔王の後ろについてくる形でこちらに向かってきていた。


「…よし、リューク、今だ。やれ」


「ハッ!」


 命令された以上、やらないという選択肢はない。ついにきてしまった。シルフィアを、僕の最愛の女性を寝取らせる、その時が。


 僕は通信石に魔力を込める。やがて魔石が光輝き、魔力が通ったことを告げてくる。


 この魔石が光り輝く時、遠く離れた王宮にて、シルフィアが所有する通信石が光り輝く。


 その輝きこそが、寝取られの合図だ。ちくしょうが。


 もちろん、合図があったからといってすぐに寝取られるわけではない。寝取られるためには、間男の準備も必要だからだ。…はあ、なぜ間男の勃ち具合を心配せねばならないのだろう?


 きっと今頃、寝取られの準備をするべく、シルフィアと間男が…クソが…なぜこんな胸糞悪いことを想像しないとならないのだ!


「あ、そうだ。一つ言い忘れたことがあった」


「え?」


 まるで思い出すかのような言い草でルクスが告げる。いや、あのもう寝取られ始まってるんですけど!こんな土壇場で大事なこと言われてても困るんだけど!


「なに、難しいことじゃない。あくまで要望であって絶対にやって欲しいというわけではないのだが…」


「いいから早く言ってください!」


 ドクン…まずい、この心臓が高鳴る感覚は、アレだ。シルフィアの体に間男の接触があった合図だ。


「お、そうだな。リューク、魔族を殺す際にはできるだけ頭より下は壊さないでくれ。特に魔王みたいな強力な個体はできるだけ体を損傷させないでくれ」


「体だけ、ですか?」


「ああ、なんでも体を使ってなにか実験がしたいらしい。前回の戦いでお前、魔族を完膚なく破壊してたからな。といってもこれはあくまで要望で、絶対ではない。あくまで出来る範囲で良い」


「はあ、わかり…」


 ドクン、ドクン、ドクン…ドクンッッ!!…きた。この感触は、間違いない。シルフィアが今、間男に抱かれている。僕の中にある「エヌティーアール」の加護を通じて、シルフィアが抱かれていることが抱かれているという事実が感覚的に伝わってきた。


 愛しい彼女が抱かれる。それを代償に、僕の体内より言い知れぬ黒い力が湧いてくる。まさに復讐を糧に力を得ている気分だ。


 全身から黒い半透明のオーラが漏れ始める。そのオーラが僕に告げてくる。


 お前、今、女が寝取られてるぞ。いいのか、こんなとこにいて?殺した方がいいんじゃないのか?――と黒いオーラが告げてくる。


 クッ…ダメだ。確かに間男は許しがたい、できればぶっ殺してやりたい存在だ。しかし、そうじゃない、僕には今、やらないといけないことがある…そう、間男ではない、魔王を殺さないといけないんだ!


 魔王ギュレイドスは今まさにこちらに向かってきている。人類最後の希望を滅ぼすべく、雄叫びをあげ、肩に巨大な戦斧を担ぎ、人間という種を滅ぼそうとしている。


 そんな人類にとって非常に重要なこの局面で、僕の、僕の大事なシルフィアが、よりにもよって間男との間に人間の種を残す行為をしている――一体なんの冗談だ?


 許せねえ。殺してえ。八つ裂きにしてやりてえ。


 ずご、ずごごご。


 僕の加護は、最愛の女性が寝取られている時の情報をダイレクトに僕の脳に伝えるという機能があるのだろう。そんな加護の副次的な能力によって今、シルフィアの身に何が起きているのか、音声と映像のデータとして僕の脳に無理やり入り込んできていた。


 痛い。怪我をしているわけでもないのに、脳が痛い。まるで精神的な破壊でも受けているようなダメージが脳に伝わってくる。


 やがて頭の中に、シルフィアの映像が浮かぶ。彼女は今、なにも服を着ておらず、白い肌を晒している。


 赤く美しい髪を振り乱すシルフィア。その綺麗な肌にはしっとり汗の玉が浮かんでいた。


 シルフィアは今、ベッドの上でまるで犬みたいに四つん這いの恰好をしていて、その後ろに間男がいて…あん?


 なんだあのポーズ?え?あんなポーズでエッチをすることってあるの?知らないんだけど?シルフィアはなんであんなふうにお尻を突き出してるんだ?


 おい、このクソ間男よ。なに俺の女に変な知識を与えてるの?絶対お前だよね?そうだよね?


 ずず、ずずずず…


 やがてシルフィアの声だけが僕の脳内に響く。僕の加護はなぜかシルフィアの映像と音しか伝えてくれない。だから間男がいるという気配はわかるのだが、具体的にどんな顔をしているのか、どんな体をしているのかまではわからなかった。


 ま、まあこれから戦うって時に間男の局部とか見せられても困るもんな。


「……ん💓💓」


 シルフィアの甘い嬌声が脳内に響く。なんでそんな艶のある声を出すんだ?


「ん、あ、んッ!…💓…そう、焦っちゃダメだよ…ん💓。昨日みたいに途中で萎えないように、ゆっくりやろう、ね…あん💓」


 え、シルフィア?シルフィアのリクエストでこういう状態でやってるの?ねえ、違うよね?嘘だと言ってよ、シルフィア!


「もう💓、緊張するのはわかるけど、あん💓、やだ、この人、昨日より上手になってる、あ、それ気持ち良い…アンッ💓」


 …え?


 シルフィア…今…気持ち良いって言った?


 すう、はあ。すう、はあ。嘘だよね?それはアレだよね、その間男が中折れしないようにするために、演技をしているだけだよね?僕以外に抱かれて気持ちよくなってるとか、そういうことじゃないよね?嘘だと言ってよシルフィア!


「途中で萎えちゃったら、リュークが死んじゃうかもしれないでしょ?…アンッ💓…そ、それだけは絶対、ダメ…んッ💓だから頑張って…アンッ💓アンッ💓…我慢しよう…あんッ!…もう💓そんなに激しくしたら君、また途中で萎えちゃうでしょ?…アン💓」


 こ、この…このクソ間男がああ!今、シルフィアが大事なこと言ってるだろ!変なタイミングで腰を振るんじゃねえよクソがあああああ!


「え?だ、団長、リュークの奴、なんで怒りながら泣いてるんですか?」


「ぷ、ぷぷ……そ、それは機密事項に該当する。たとえ団員でも奴の加護を知ることは…ぷぷッ…許さんぞ!」


「む?団長?なにか面白いことでもあったんですか?」


「そのようなことは決してない。それより俺たちも行動…ふふ…するぞ!」


「「ハッ!了解しました!」」


「リューク…ふふ…お、お前は手筈通り魔王を直接狙え。他の団員は俺に続け!」


「「ハッ!了解!」」


 ついに始まる。僕は団長より頂戴した新しい大剣を握りしめ、戦場を駆ける。



■魔族軍


 魔族の軍勢を引き連れ、一騎駆けをしている魔王ギュレイドスは怒りに満ちていた。


 あと少し。あとちょっとで魔族による大陸の支配が完了する。


 すでに大陸の9割近くは掌握しており、あと少しですべてが支配下におさまる。


 ようやく鬱陶しい人間どもをすべて駆逐し、この戦を終わらせることができるというのに、あの雑魚どもはいまだにこざかしくも抵抗していた。


 そう、人間など所詮は雑魚。虫にも劣るクズの集合に過ぎない。


 たまに魔族に匹敵するものも現れるが、いざ勝負をしてみれば、簡単に殺される。まるで手応えがない。


 そんな雑魚の分際で、まるで勝者のごとく大陸を支配していた人間どもの存在が、昔よりギュレイドスにとって目障りで不愉快な存在でしかなく、魔族の大陸への侵略はギュレイドスにとって人間を滅ぼす絶好の機会であった。


 憤怒の魔王、ギュレイドス。その怪力は魔王の中でも随一と呼ばれるほど屈強であり、ギュレイドス自身その強さを誇りに思い、同時に強き者と戦うことをなによりも誉れとしていた。


 命と命のやり取りをする、そんな戦いこそがギュレイドスを熱く、興奮させるものだった。


 一度で良い。自分を脅かすほどの存在と死闘を繰り広げたい、それこそがギュレイドスの抱く最大の野心でもあった。


 しかしいざ戦場に出てみれば、そこにいたのは不甲斐なく、とてもギュレイドスの闘争心を満たせる者はいなかった。


 この戦争を通じて、何人もの人間の強者と戦ってきた。しかしいざ戦ってみれば、強者とは名ばかりの雑魚だった。


 この程度の実力で強者とは、笑わせるな。


 前哨軍が敗北したという報せを聞いた時、もしやここに待ち望んでいた強者がいるのではないのか、と淡い期待すら抱いた。


 しかし結果はこのざまだ。


 所詮、現実とはこんなものだ。自分は強すぎた。そんな自分と死闘を演じられるような強者などこの世にはいないのだろう。


 奴らが前哨軍を斃せたのは、力ではない。ただ細工を凝らして退けただけだ。前哨軍を殲滅させたというのも、きっとくだらない小細工の結果なのだろう。


 やはり人間は雑魚だ。力がないからこのような下らない小細工を弄する。こんな非力で小賢しいだけの愚昧な生物など、生かす必要がない。


 フン。なにが魔族には時間がない、人間を甘く見るな、だ。あんなのは弱者の言い訳でしかなかったか。


 もうよい。もうこれ以上は不毛だ。さっさと殺して終わらせてしまおう。


 まさに猪突猛進。魔王ギュレイドスがその巨体を走らせる度に巨大な足音が空気を揺らす。


 その圧倒的な存在感が人類最後の軍を畏怖させ、尻込みさせる。


 人間もそれなりの武具を用意しているのだろう。しかしギュレイドスがその巨大な戦斧を振るえば、あんな装備はゴミに等しく、一瞬でガラクタと化すだろう。


 たった一振りするだけで、人間の軍隊など簡単に崩壊する。事実、今まで何度その光景を見てきたことか。魔王ギュレイドスが戦場に出れば、人間の軍隊など跡形もなく滅ぼされる。それだけに力が魔王ギュレイドスにはあり、その圧倒的な暴力をもってしてあまたの軍隊を壊滅、そして国を滅ぼしてきた。


 魔王ギュレイドスは人類軍を前にしてだんだんと走る速度を緩め、肩に担いでいた戦斧を振り上げる。


「ぶおおおおおおおおおッ!」


 空に向かって咆哮をあげるギュレイドス。その圧倒的な声量が空気を揺るがし、人類軍に絶望的な恐怖を与えた。


 もしかしたら勝てるかもしれない、そんな淡い希望もこの暴力の化身のような魔王を前にしたら、いとも容易く消し飛ぶことだろう。


「我こそは魔王ギュレイドス!貴様ら凡愚どもをめソ…」


 その後、なんと言おうとしてたのか、誰にもわからないだろう。


 なぜならギュレイドスが停止した瞬間、黒い影が魔王の正面に現れ、一閃。人影が地面を蹴って跳躍し、ギュレイドスの眼前まで迫ると、なにか大剣のような武器を横に振った。


 やがてその人影は着地。すると、ズルッとギュレイドスの首から上が地面に落ちた。


 魔王ギュレイドス。一体なにを言おうとしていたのか、誰にも知られることなくその首を落として絶命した。


「……?」

「え?」

「うそ」

「マジで?」

「あれって、死んでるよね?」

「ま、魔王をやりやがったあああああ!」

「なあ、あの魔王、最後にメソって言ったか?」

「すっげええ!あいつ、魔王をマジで殺しやがった!」


 その瞬間、人類軍から割れんばかりの歓声が起こった。

 

 その歓声を背中に受けるその男こそ、まさに人類最後の切り札、リューク・ネトラレイスキー伯爵だった。


「うおおおお!」

「あ、あれはまさか!」

「ネトラレイスキー伯爵だ!」

「寝取られ好き!寝取られ好き!」

「すっげえ!やっぱ昨日のあの戦いはまぐれじゃなかったんだ!」

「寝取られ好き伯爵万歳!あんたは英雄だぜ!」

「勝てる、勝てるぞ!人類はまだ負けてなんかいないぞ!」

「うう、よかった、生きててよかった。これでまた娼館に通える…」


 まだ魔族の軍勢は残っているというのに、人類軍の士気がこれ以上ないほどに上昇。逆に、魔族軍はいきなり大将を失うことで動揺が走っていた。


「ま、マジかよ」

「ギュレイドスの兄貴が…あんなあっさり」

「っていうか寝取られ好きって何だ?」

「クソが!人間風情が舐めてんじゃねえぞ!」

「ぶっ殺してやるよ、クソ人間がよ!」


 すでに魔王を失っているというのに、魔族の軍勢は動揺こそすれ、それでも人類軍に対する戦いの姿勢を止めてはいなかった。


 しかし、そうこうしている間にギュレイドスの背後にいた強そうな雰囲気のあった魔族たちはいつの間にかネトラレイスキー伯爵によって討伐。首より上を撥ね飛ばされていた。


 どさ、どさ、どさ、どさ、どさ…強そうな雰囲気のあった魔族の首がどっさり地面に落ち、やがて体もがくりと膝から折れて倒れていく。


「そ、そんな!」

「どうなってんだよ!」

「あんな人間がいるだなんて聞いてねえぞ!」

「だから寝取られ好きって何なの?」

「カイ様が…アンドール様が…あんな簡単に…」

「死神か?あいつ、人間じゃねえ。死神だ!」


 魔族を指揮する司令塔を失ったことで、今までゆっくりと前進していた魔族軍が停止。攻めるべきか、それとも撤退するべきか、悩んでいるのだろう。


 それでも逃げずにいるのは魔族の矜持か、それとも今まで一度も逃げたことがないだけに逃げるという思考が頭にまわらないだけなのか。いずれにしろ、魔族が逃げる気配はなかった。


 そこに、ドンと空気を震わせるような振動が大気を走った。


「よーし、マジックキャンセラーは停止したぞ。お前ら、魔法解禁な!」


 魔族が前進したことで、軍の背後がガラ空きになったのだが、その隙をついてルクス率いる遊撃部隊が侵攻。ルクス隊はマジックキャンセラーを守っていた魔族たちを襲撃し、マジックキャンセラーを奪うことに成功していた。


 ルクスがマジックキャンセラーを操作して機能を停止させたことで、魔法が使用できるようになる。


「死霊魔術部隊、指示通りに死者を動かせ!」


 やがて人類軍の方より動きがある。魔術部隊の中でも一際異様な雰囲気のある魔導士たちが戦場に向けてなにか魔法を発した。


 死霊魔術部隊が詠唱を唱えると、黒と白の混じった光が拡散して周囲を巡り、やがてその魔法が戦場を包んだ瞬間、死んだはずの奴隷兵たちが動きだす。


 のっそりと立ち上がる死んだはずの奴隷兵たち。やがて奴隷兵は反転し、今までとは逆方向、魔族軍に向かって走りだした。


「ああ!俺たちとやろうってか!」

「上等だ!」

「たかがゾンビ程度に恐れると思ってるのか!」

「もう一度ぶっ殺してやるよ!」


 集団で襲いかかるゾンビ兵たち。しかしゾンビ兵は魔族軍を素通りし、そのままさらに後方にまで下がっていく。


「ああ?」

「なんだ?」

「俺たちとやろうってんじゃねえのか?」


 やがてゾンビ兵たちは魔族軍の陣地にあった何かを拾っていく。それは…


「あ…」

「それってもしかして…」

「ま、待て、それは止めろ!」


 ゾンビ兵はつい先刻、魔族軍の陣地に捨ておかれた火の魔石、それも爆破魔法が付与されている魔石を持ち上げると反転、魔族軍に侵攻していく。


「や、やめろおおおおお!」


 事態に気づいた時には手遅れだ。


 移動速度が遅い魔族軍より順番にゾンビ軍が突っ込んで、次々と火の魔石を炸裂。その爆破の餌食となって魔族たちは屠られていった。


 ドンドンドンドンドン…


 次々と鳴り響く爆発音。いくら頑丈な皮膚を持つ魔族といえど爆破魔法には耐えられず、3000以上いた魔族たちはやがてゾンビ兵の特攻爆撃によって殲滅されていった。


「や、やった…」

「勝ったぞ…」

「俺たち、勝ったぞおおおお!」

「うおおおおおお!」


 勝利の雄叫びをあげる人類軍たち。その最大の功労者といえば、やはり魔王ギュレイドスを打ち破ったネトラレイスキー伯爵だろう。


 しかし彼の表情は他の兵士とは違いとても辛そうで、今にも泣きそうだった。


「どうしてあの人はあんなにも悲しい顔をしているのでしょう?」


 遠くより彼を見守る聖女、ルイ・ゼルエルはそんな浮かない表情をするネトラレイスキー伯爵のことが少しだけ気になっていた。 

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