第56話 全てに決着がつきまして

 俺は言ってやった。


「ありがとよ、ヴァイス。おまえらのおかげで『勇者』になっちまったよ」

「な、に……?」


 いきなりの感謝に、ヴァイスは戸惑いを見せる。

 その反応が、俺からすればまた笑えてしまう。


「おまえも『勇者』なら理解できるだろ。加護を授ける神の意思ってヤツを」

「…………」


 ヴァイスは無言。

 構わず、俺は話を続ける。


「『釜戸の神』は、楽しくねぇんだってよ」

「た、楽しくない……?」

「人と人との争いに神がガッツリ関わるのが、楽しくねぇんだってよ」


 ヴァイスとリシェラのしていることが楽しくない。

 それが『釜戸の神』がラーナを『聖女』にした理由なんだとさ。


 何てひどい理由だろうか。

 しかし、俺には『釜戸の神』がどうしてそう感じているのか、わかる気がする。


「『釜戸の神』は『生きること』を司る神だ。人と人の争いもまた『生きること』の内だろうが、そこに神が深く関わるのは、面白くないんだろうな」


 俺達にとって神は上位者で、その意思は人の世に大きな影響を与える。

 神が手を出そうと思えば、世界なんていとも簡単にグチャグチャにできるはずだ。


「知らなかったぜ。『釜戸の神』がこんなに俺と気が合う神様だったなんてよ。要は、俺達に自由に生きろと言ってくれてるんだぜ。いいじゃん、最高じゃねぇか」

「バカな! そんな無責任な神が、いてたまるものか!」


 肩をすくめる俺に、ヴァイスが大声で吼え猛る。


「好きに生きろだと? その結果、どれだけの悲しみが生まれると思っている? そこにあるのは強者が弱者を喰らうだけの弱肉強食の世ではないか!」

「それは――」


 俺は、ヴァイスに指を突きつけて指摘する。


「そいつは、今、おまえがしてることと何が違うんだ?」

「何が、違う……?」


 あ、こいつ、自分の言ってることとやってること、全く理解できてねぇ。


「邪悪だ何だとレッテル貼って、魔族の因子がどうしたと理由こじつけて、ミミコや街のガキ共を殺そうとしたこと、忘れたとは言わせないぜ?」

「愚かなことを。レッテルだと? おまえも『五禍将フィフステンド』も邪悪そのものではないか。それを討伐して世を清めることが俺の――」

「やってることは一緒だよ」


 結局、強いおまえが自分よりも弱いガキ共を殺そうとした。

 その事実は揺るがないんだ。だったら同じだ。何を言っても変わりはしない。


「まぁ、いいさ」


 今から言葉でやり合ったところで、どうにもなりゃしない。

 そんなことをするために、俺は『勇者』になったワケじゃないからなぁ。


「決着をつけようぜ『真白き勇者』。どっちが正しいかはどうでもいい。どっちが強いかも、どうでもいい。ただ俺は、楽しくも何ともないおまえとこれ以上一秒たりとも関わりたくないし、周りの人間にも関わらせたくない。――だから、殺す」

「傲慢なことを、魔王……!」

「残念。今はおまえと同じ『勇者』だよ。中身は別物だがな」


 地面に刺していた剣を再び右手に掴んで、俺は全身に『真黒の衣』を纏う。


「ラーナ」

「うん」


「俺は『勇者』になった。けどそれは――」

「わかってるよ。ビスト君は『釜戸の神』様の言いなりになる必要なんてない。わたしにも、神様の声はもう聞こえてないよ。本当に、好きにやっていいんだよ」

「そうかい。ありがとよ」


 ああ、気持ちがいいモンだよ。

 誰かに理解してもらえるってのは、気持ちがいい。それが惚れた女ともなれば。


「それにしても、こいつはひでぇな……」


 と、俺は呟く。

 ラーナを通じて『勇者』となったことで、俺は『釜戸の神』の加護を授かった。

 その内容が、ちょっとあまりにひどすぎる。


「いや、わかるよ。『釜戸の神』は『生命の神』と同一視されるって話だから、わかるけど、それにしたって大雑把すぎるだろ。この『とりあえず、命!』な力は……」


 生命力の増大。

 俺が『勇者』になったことで得られた加護は、その一点に尽きる。

 ただ、その増幅倍率がえげつない。


「消えてしまえ、魔王ォォォォォ――――ッ!」


 ヴァイスがみたび『滅び』の先行で俺とラーナを狙ってくる。

 だが、それに対して俺は剣を構えることもせずに、ただ、左手を軽くかざすのみ。


「よっ、と」


 左手から溢れんばかりの『魂元属性』の魔力を雑に放射する。

 それだけで『滅び』の閃光は消え去った。俺の魔力と相殺された結果だ。


「そんな、ことが……!」


 ヴァイスが絶句しているが、別に俺、生命力以外は強くなっちゃいないんだよな。

 ただ、生命力の総量が桁違いに増えただけ。

 さっきまでの俺の生命力がバケツ一杯程度とするなら、今はどでかい湖くらいか。


 生命力の増大は、つまり俺という命そのものの力が増大するということでもある。

 量も質も、さっきまでとは比較にならない。

 俺が纏っている『真黒の衣』だって、単に『夜の衣』が密度を増しただけのもの。


 ヴァイスの剣の直撃を受けても、今の俺なら死なずに済む。

 いや、もしかしたら無傷で終わるかもしれない。

 それだけ俺は死ににくく、滅びにくくなっている。いや~、本当にひどいわ。


「だけどまぁ、わかりやすいし、いいか」


 わかりやすいってことは、使いやすいってことだ。

 せっかくの神様からの贈り物。『勇者』の看板に泥を塗るために使い倒そうか。


「ラーナ、やろうぜ」

「うん!」


 俺が促し、ラーナがうなずく。

 彼女の右手には、買ったばかりの『魔銃』。そして左手には『手のひらの虹』。


 引き出される『魂元属性』の魔力は、見るからにまぶしい山吹色の光。

 ラーナの『魂元属性』は『暁光』。日常を見守る柔らかな日差し。命を育む光。


「――春に芽吹き、夏に咲き、秋に実りて、冬に眠る。巡るものは、来たりて還る」


 詠唱。

 そして、ラーナが『魔銃』を天に向かって突き上げる。


魔装マギア――、『目覚めの春、日向の中でサーキュレイト・リンカネイション』!」


 発動の一声と共に、ラーナが『魔銃』のトリガーをひく。

 爆音にも似た音が響き、金色の輝きが空に向かって撃ち放たれる。


「咲いて!」


 そしてラーナの声と同時、見上げる先で光は弾け、空に金色の花を咲かせた。


「な、何ですか……!?」

「何が起きるというのだッ!」


 リシェラもヴァイスも、空に広がる黄金光に釘付けになっている。

 しかし、別にこいつらに何か効果があるワケじゃない。


 大きく散った黄金光は、そのまま消えることなく、光の雨となって降ってくる。

 それはあたたかく、そして優しい光。ほんのりと陽射しの匂いがしてくる。


「ぐ、ぁ、あ……ッ」


 異変に気付いたヴァイスが、大きく身じろぎする。

 その足元に、花が咲く。


 ヴァイスの『滅び』によって荒野と化していたアヴェルナ平原に花が、また花が。

 死した命が回帰する。消えた景色が、瞬く間に元通りになっていく。


 アヴェルナの街に『蜜の風』を運ぶ花畑が、ラーナの魔装で蘇る。

 剥き出しだった茶色い地肌が、極彩色の花に覆われて、春の姿を取り戻していく。


「……これは、蘇生。真実の蘇生を、ラーナが」


 リシェラは震えていた。

 ラーナの魔装は、あの女の魔装とは似て非なるもの。


「ぅ……」

「ぁ、ぅ……」


 花畑が広がっていく中で、俺の耳に二つの小さな声が届く。

 向き直って見れば、倒れていたルイナとホムラがかすかにではあるが動いている。

 ヴァイスに殺された二人も、平原の花々と同じように蘇生を果たしたのだ。


「スゲェよ、ラーナ」

「ありがとう、ビスト君!」


 俺が感嘆の声を漏らすと、彼女は嬉しそうに笑ってうなずいた。


「あとは――」

「ああ、あとは俺がやる。俺が、決着をつけるよ」


 俺はうなずき返す。

 ラーナが魔装を使ったのは、失われた命を取り戻すためと、もう一つ。

 ヴァイスの『滅び』によって失われた式素マナを補充するためだ。


「これなら、いける」

「何ッ!?」


 景色の変化に気をとられていたヴァイスが、やっとここで気づく。

 俺が両手に生み出した星空を見て『真白き勇者』がその顔色を真っ青に変える。


「魔王、おまえは……ッ」

「遅いぜ、ヴァイス」


 そう呟いたときには、俺は、両手を重ねて祈りの形にしていた。

 空と空とが掌中に重なり合って、今、ここに『俺の宇宙』が開闢する。


 俺が纏う『真黒の衣』が一気に拡大し、星の輝きを帯びながら世界を染める。

 同時、俺の背後に歯車の幻影が無数に重なり組み上がって、巨大な機構を形作る。


「……スゲェな」


 本来であれば、このタイミングで強烈な消耗を感じるところだ。

 魔王の『力』をもってしても、この技を使う際の魔力消費はとにかく著しい。


 なのに、今は全然余裕だ。

 消耗による虚脱感を覚悟していたのに、まるでそんなの感じやしない。

 これが『勇者』になったことで得られる加護の恩恵、か。


「精々、使い倒してやるよ。何せ俺は『最悪の勇者』だからなァ!」


 展開する疑似宇宙。

 魔導学にいわく、生命とは『一個の世界』である。

 それを現実にするのが、この魔導最上位技術。


魔界マキナ――、『神はさだめの賽を振らないアルバ・エト・オメガ』」



  ◆ ◆ ◆ ◆ ◆



 上も下もない。

 右も左もない。

 展開した疑似宇宙の中で、俺とラーナはヴァイスとリシェラと相対する。


「……『正義』ってのは、劇薬だよな」


 錬魔剣を握り直して、まずは一言。俺が最後の舌戦の口火を切る。


「かつての『私』と、『私』が倒した百人の『勇者』は、全員が『正義』に感染してた。酔いしれてたと言ってもいいな。それを実現するために自分の命を全部使い切ることもいとわずに、神に使われ、民に使われ、それでも『正義』に殉じてさ……」

「それが『勇者』だ」


 ヴァイスが、俺に言い返してくる。


「『勇者』に過ぎた自我など無用。神より示された使命を果たし、民が望む救済を実行する。それが『勇者』だ。それが『正義』だ。世を蝕む悪を討ち果たし、清き世を実現することこそが、俺達の在り方で、俺達の存在意義だ」

「そうかい」


 当代の『真白き勇者』が示した返答は、まぁ、これまで通りというべきか。

 もちろん、そこには理がないワケではない。

 ヴァイスの言い分は、何もかもが間違っているワケではない。


「『勇者』が民を救うもの、ってのはわかるよ。ああ、その通りだ。かつての『私』はやりすぎた。大陸の四割も占領するとか、さすがに神様だって動き出す事態さ。百人の『勇者』が生み出されても仕方がない。それくらいの脅威だったろうさ」


 俺はそれを認める。認めざるを得ないことではある。


「真面目に魔王としての務めを果たそうとして、魔族達に繁栄をもたらそうとした結果が百人の『勇者』なんだから、かつての『私』は本当にやらかしてたよ」

「自らの罪を認める気になったか、魔王よ」


 かつての『私』だっつってんだろうが……。

 ああ、でも言っても無駄だろうなぁ。俺は魔王じゃないって、何遍言ったんだか。


「けどな、ヴァイス」


 嘆息と共に俺は告げる。


「『至天の魔王』を衝き動かしたのも、結局は『正義』だったんだぜ?」


 今、言ったよな。

 かつての『私』も『正義』に感染して、酔いしれてた。ってよ。


「おまえから見れば悪そのものなんだろうけど、あいつは国という、神にも通じる巨大な存在から王としての使命を負わされ、そこにいる民に繁栄という名の救いをもたらそうとしていた。……それって、おまえら『勇者』と何が違うんだ?」

「詭弁だな」

「そいつはお互い様だよ」


 言ったところで認めやしないのはわかってるが、一応は指摘してやることにする。


「より大きなものを救うために小さい犠牲を容認するのがおまえらの言う『滅びの正義』なんだろ? それこそ、やってることは『至天の魔王』と同じじゃねぇか」

「おまえと一緒にするな。俺には神の加護がある。大義がある」

「言ってろ」


 俺は笑う。笑うしかない。もちろんそれは苦み走った、乾いた笑いだ。


「まぁ、アレだよ。俺が言いたいのは、本当に一つだけなんだ」


 錬魔剣の刀身に星の光が集まっていく。

 それは、銀河のごとく渦を巻き、とてつもない力を宿していく。


「――つまんねぇよ、おまえら」


 ギヂッ、と、噛み締める奥歯が音を立てる。


「こうして、改めて振り返ってみても、やっぱつまんねぇ。楽しくないわ。楽しくない。おまえも、他の『勇者』も、かつての『私』も、ただただつまんねぇわ」


 使命だの、救済だの、大義だの、口では散々ご立派なことを言いやがる。

 だがその実、やってることは戦争か虐殺かのどっちかだ。全くもってくだらねぇ。


「私は人を殺しても何とも思わないクソ外道ですって堂々と宣言するヤツの方が、まだマシだぜ。ブッ殺す以外のコトを考えなくていいからな。ところがおまえらはそうじゃない。つまんねぇ『正義』を振りかざして、クソ外道と同じことをやりやがる」


 ああ、ヴァイスが掲げる『滅びの正義』には一定の理があると言ったさ。

 けど結局、理解はできても納得できないなら同じだ。潰す以外の選択肢はない。


「終わりだよ」


 俺はゆっくりと錬魔剣を構えて、ヴァイスとリシェラをねめつける。


「これ以上、おまえら相手に無駄な時間を使って楽しくない思いをする気はない。俺に言いたいことがあるなら、言葉以外で示してくれ。できるもんならな」

「魔王……ッ!」

「俺は『勇者』だぜ、ヴァイス。神がそう定めたからな」


 ニヤリと笑って、軽い意趣返し。

 すると、ヴァイスが剣を振り上げて、激昂の雄叫びを響かせる。


「うおおおおおおおおおおッ! おまえは、おまえはどこまで、俺をォ……ッ!」

「ヴ、ヴァイス様……!?」


 その怒りように、リシェラが驚きを見せる。

 今や、ヴァイスは『真白き勇者』としての仮面を捨てて、自らの地を晒していた。


「あの黒い巨人の騒ぎのときもそうだ! ビスト・ベル! おまえさえいなければ、俺は、俺は『英雄』になれたんだ! 街を救うことが……、それをおまえが!」

「…………」


 叫び、荒れ狂って、ヴァイスがその剣に『滅び』の力を帯びさせる。

 俺はそれを、無言で見つめる。


「ギルド倒壊のときも、元凶は魔族だったのに、どうして俺達が悪者扱いされなくちゃいけないんだ! 悪いのは魔族だろうが、魔族を庇ったおまえらだろうが!」

「……ヴァイス」

「今度こそ、今度という今度こそ、俺が正しかったはずなのに。神が、俺を選んでくれたのに! おまえの方が、今度こそは絶対的に間違っているはずなのに……!」


 これまでとは比較にならないほどに規模の大きな『滅び』の力。

 それが、嵐のような感情に呼応して、純白の剣に集束していくのがわかる。


「何でおまえまでもが『勇者』になるんだ! どうしてだ、何で、何故! いつもいつも、いつもいつもいつもいつも、世界は俺の思い通りにならないんだ!」

「それが、おまえの本音か。ヴァイス」

「な……」


 ヴァイスが言葉を途切れさせて、その顔を強張らせる。

 俺が、突然眼前に現れたからだ。


 ここは俺が展開した疑似宇宙。

 この場では、何よりも俺の意思が優先される。法則よりも、魔法よりもだ。


「おまえがちゃんとした俗物で安心したよ、ヴァイス」

「ぅ、おお、お、俺は、俺はァ……ッ」


 ヴァイスが、純白の剣を振り上げて泣き叫ぶ。


「俺は、俺が『真白き勇者』なんだァァァァァァァ――――ッ!」

「知ってるよ。別名を、クソ野郎っていうこともな」


 一閃。

 上から下へ。俺は刃を振り抜いてた。


「ぁ……」


 刃は、ヴァイスを手にした純白の剣ごと断ち切っていた。

 物理的に両断はされない。

 しかし、俺が斬った軌道に沿って、ヴァイスの内から白い光が溢れ出る。


「ぅ、ご。ォォ、お……ッ! ビスト・ベ、ル……!」


 ヴァイスが、俺に手を伸ばそうとする。

 だが、内から放たれる光は強さを増して、ヴァイスの身を飲み込み始める。


「ぃや、いや! ヴァイス様! イヤァァァァァァァァァァァ――――ッ!」


 そこに、リシェラが飛びつくようにしてヴァイスを抱きしめる。

 経緯はどうあれ、この女の献身が本物だとわかる行動だ。しかし――、


「リシェラ、ぉ、俺は、俺は……」

「あなたは『勇者』様です。間違いなく、私の『勇者』様です!」

「ぁ、あ。……そうか、やっぱり俺はゆう」


 ヴォウッ。

 と、空間自体が弾むような音がして、ヴァイスとリシェラは白光の中に消滅した。


 それが『滅び』の力によるものかはわからない。

 ただ、俺の疑似宇宙で消えた以上、二人の魂は未来のどこかに転生するはずだ。


「見てるか『大鎌の神』」


 二人が消滅したのち、俺は軽く顔をあげて、遠い世界に向かって語りかける。


「『釜戸の神』と俺からだ。つまんねぇコトすんな、バァ~~~~カ! 以上ッ!」


 最後に舌を出してヘラヘラ笑ってやる。

 すると、遠いどこかで何かが鳴動したかのような気配を感じた。


「あ、神様から、『大鎌の神』様がものすごい悔しがってるって」


 神の声を聞けるラーナが俺にそれを教えてくれた。ヤベェ、神からかうの楽しい。

 ちなみに、俺はもう神の声は聞けない。さっきはしっかり聞こえてたんだがな。


 やがて『魔界』による疑似宇宙は消失し、百花繚乱の花畑が俺達の前に広がる。

 以前であればぶっ倒れてたところだが、全く疲れていない。加護すげぇ……。


「終わった、な……」

「うん、何とか終わったね」


 息をつく俺に、ラーナが身を寄せてくる。

 リシェラに思うところはあるだろうに、今は、俺の安堵に寄り添ってくれる。


「おまえはいい女だよな、ラーナ」

「え、な、何が……?」


 驚く彼女の頭を撫でていると、近くから「う、ん……」という声が聞こえる。

 ラーナの魔装で蘇ったルイナが漏らした声だった。


「そろそろ、二人を起こすか」

「そうだね」


 そして俺達は、ルイナとホムラを起こしに向かう。

 こうして、突如として出現した『真白き勇者』の脅威は、払しょくされた。


 その過程で俺も『勇者』になっちまったが、まぁ、いいか。

 何故なら俺は『正義』なんぞ持ってない『最悪の勇者』、なんだからな。

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