第43話 ちょっと泣きそうになりまして
俺がウォードさんを治さねぇワケねぇだろ。
ホムラの『牙炎』は厄介ではあるが、俺ならその影響も解消できる。つか、した。
そしてウォードさんは、何とも苦い笑みを浮かべて、言う。
「俺がこうなった原因はおまえさんだろうがよ、なぁ、ヴァイスよ」
それは、俺も予想していなかった言葉だった。
ヴァイスを見れば、図星だったのか、ウォードさんから視線を外している。
「あのときの詳しい状況を知ってるのは、この場じゃ俺とヴァイスくらいなモンだろうが、おまえさんは話す気はないだろ、ヴァイス。だったら俺が話してやるよ」
「ウォードさん、それは、どういうことです?」
「簡単な話さ。あの
え……?
ホムラが攻撃しなかった。って、どういうことだ?
「あのときはな、仲間をやられてキレたヴァイスが嬢ちゃんに斬りかかろうとして、嬢ちゃんもそれを迎え撃とうとしてたんだ。で、俺がそこに割って入ったんだ」
「そんなことになってたんですね……」
ラーナが、そのときのことを想像して頬に汗を伝わせる。
聞いた話だと、ホムラはそのとき『牙炎』でウォードさんを焼いたってことだが。
「嬢ちゃんは、俺を前にして拳を止めたんだ」
「な……ッ」
拳を止めた? じゃあ、ホムラは攻撃をしなかった?
だったら、何でこの人は『牙炎』に焼かれて、生死の境をさまよってたんだ?
「なぁ、ヴァイスよ。おまえも見てたはずだよなぁ? あのとき、あの嬢ちゃんはしっかりと拳を止めてくれてた。俺を殴らずにいてくれたよなぁ?」
「…………」
ヴァイスは無言。無表情。
しかし、そこに浮かぶ汗までは隠しようがない。明らかに動揺してる。
「嬢ちゃんが攻撃を止めてくれた一方で、おまえさんは止まらなかった。止まらずに、俺の背中を剣で突き刺してくれやがってよ。ありゃあ、痛かったぜェ~?」
「はぁッ!?」
ヴァイスが、ウォードさんを刺した? 背中から!?
「そのときさ。それを目の当たりにした嬢ちゃんが驚いて、おそらくは術式の制御が乱れたんだろうな。そこで暴走した炎がその場に炸裂。俺は全身火ダルマさ」
そして、ウォードさんの話は終わる。
彼は施療院の前を歩いて、俺のすぐ近くまで来て、ポンと肩を叩いてくる。
「助かったぜ、ビスト。ありがとな」
「俺のってワケじゃないですけど、身内がご迷惑おかけしました」
「いいってことよ。素直で、可愛いお嬢ちゃんだったぜェ?」
ニマっと気安く笑うウォードさんに、俺は救われた気分になる。そして――、
「……ヴァイス」
俺は、その場に突っ立ったままのヴァイスへ向き直り、顔から笑みを消す。
「ホムラはギルドを襲撃なんてしていなかった。おまえの仲間が変なちょっかいをかけたりしなけりゃ、ウォードさんと話して大人しくしてただろうぜ」
「ああ、そうだろうなぁ。あの『英雄派』の四人が暴走しなけりゃなぁ」
ウォードさんが、俺の肩を持ってくれる。
そうか、この人は現場に居合わせたんだったな。これ以上ない証人だよ。
「その上、ウォードさんの火傷だって、きっかけはおまえじゃねぇか、ヴァイスよぉ。『赤い魔族にやられたんだぞ』、だっけ? 責任を他人に押し付けんなよ」
『あ、それをビスっちが言っちゃう?』
魔力念話でミミコがそんなことを言ってくるが、言うに決まってるよなぁ!
アルナード家の一件は、ゼパルが全部悪いんだからなー! これとは違うよね!
「お、おい、ヴァイス……?」
「どうしたんだい、ヴァイス、どうして黙りこくってるんだい?」
何も言わないヴァイスに、ライドリィや他の『英雄派』も不安を覗かせる。
ウォードさんというこれ以上ない証言者が現れて、完全に勢いを挫かれたかね。
「――そうだな」
やがて、やっとヴァイスが口を開いた。
「そうだ、あのとき、あの魔族は攻撃を止めた。だが俺は、怒りを抑えることができずにウォードさんを傷つけてしまった。それは確かだ。すみません、ウォードさん」
「……おう」
ヴァイスが頭を下げたことで『英雄派』の数十人が一気にザワついた。
自分達が非を認めること自体が『負け』とでも思ってるんだろうな、こいつら。
「だが、俺達の『正義』はそんなことでは曇らない!」
そして、このヴァイスのカッコイイお言葉ですよ。
「冒険者ギルドに魔族がいる。それ自体がすでにおかしいんだ!」
「そうだ、ヴァイスの言う通りだ!」
「俺達の仲間がやったことは何も間違っちゃいない!」
ウォードさんに謝ったかと思えば、舌の根も乾かないうちからこれか。
ホムラにやられた四人が行動自体は間違っていない。つまりはそう言いたいのか。
「まぁ、おまえらがどんな主張と思想を持ってようが関係ねぇんだが……」
俺はため息をつくしかなかった。
ヴァイス君さぁ、言いたいことを言う前に、やるべきことあるでしょ。
「おまえらの考えがどうこう以前にさ、ヴァイスはまず俺に謝ったらどうなの?」
「何だと……?」
「何だと、じゃなくてさ。散々、俺が魔族を操ってただの何だの言いながら、全ッ部、そっちの過失じゃねぇかよ。ギルド建物の倒壊も、ウォードさんの火傷も。おまえらが関わらなきゃ起きなかったんだよ。それを俺のせいにしやがって!」
正直、謝られるだけじゃ全然足りん程度には頭に来てるよ、俺は。
だけどヴァイスはウォードさんには謝った。なら俺にも謝るのが筋ってモンだろ。
「おまえに頭を下げる気はない」
ところが、ヴァイスの返答がそれだった。こいつさぁ……!
「今言った通り、俺は同志四人がやったことは否定しない。彼らは、自らの『正義』に基づいて、冒険者ギルドに現れた魔族に対処しようとしただけだ。その行ないは称賛されるべきものでこそあれ、否定されるようなものじゃない!」
「そうだ、その通りだぜ、ヴァイス!」
「よく言ってくれた。それでこそ私達のリーダーだよ」
恥ずかしげもなくアホなことを抜かすヴァイスを『英雄派』達が囃し立てる。
開き直り――、いや、最初からこの調子か、この連中……。
「俺達にも非があるかもしれない。だがそれはあってはならない現状を是正するための情熱の顕れでもある。おかしいと言うなら、この現状こそがおかしいんだ!」
「……うん?」
何だァ、急に話の枠を大きくしてきたぞ、この野郎。
「昨日、俺達はゴブリンの群れを駆逐してきた」
「さいですか……」
そして前置きもなしにいきなり始まる、ヴァイスの自分語り。こっちは生返事。
「依頼人は、ゴブリンの巣の近くにあった村の人達だ。彼らは貧しい中で、冒険者ギルドに依頼をするために、依頼にかかる費用を半年かけて貯めたと言っていた」
「彼の言葉にウソはないよ。村の人達は、確かにひどく困窮していたからね……」
ヴァイスの言葉に便乗してきたのは、黒髪の術師。レベッカだっけか、名前。
ふぅん、半年かけて依頼の費用を貯めた、ひどく困窮した貧しい村、ねぇ……。
「わかるか、ビスト・ベル?」
「何がだよ」
「俺達には救わなければならない人が山のようにいるということがだ!」
数いる『英雄派』の冒険者達を背にして、ヴァイスがそれを俺に強く訴えてくる。
「俺達が助けた村の人々は、実に半年もの間、ゴブリンの群れに狙われ続けてきたんだ。彼らはそれを耐えるしかなかった。どうしてだ? ――金がなかったからだ。貧しいから、冒険者ギルドに頼ることもできない状況だったからだ!」
「加えて、先の領主逃亡もあってアヴェルナには兵士がいない。ゴブリンの群れに対応できるのは、冒険者ギルドだけだった。その事実も知っておいてくれ」
言葉を重ねるヴァイスと、それに補足を加えてくるレベッカ。
言いたいことは、何となくわかった。
冒険者ギルドに頼りたくても頼れない。そういう人間が、多数いるということか。
「それはわかった。……で、それが何だってんだ?」
「冒険者ギルドの在り方は間違ってる。おまえはそう思わないか?」
何とも言いようのない話で、ヴァイスに同意を求められてしまった。
「今の冒険者ギルドは、金のある人間のためにしか動けない、富裕層のための御用聞きになり果てている。依頼の費用が高すぎるんだ。ギルドの理念を考えれば、弱き者にこそ広く門戸を開放するべきだ。なぁ、そうだろう? そう思わないか?」
「俺は、ヴァイスに同意する」
さらに饒舌になっていくヴァイスに、今度はライドリィが賛同を示した。
「冒険者が受け取る報酬は高すぎる。もっと下げるべきだ。今の七割、いや、半分以下でもいいはずだ。それでも、俺達は喜んで依頼を引き受けるぞ。なぁ、みんな!」
「ああ、そうだ。弱き者のためならば、俺達はいくらでも働くさ!」
「それで人々の悲しみが癒えるのならば、是非もない! 当然の話だよ!」
こうして、また騒ぎ出す『英雄派』の冒険者達。……マジかよ、こいつら。
「おまえも俺達と同じであるべきだと思うぞ、ビスト・ベル」
「それにうなずけってのか、おまえらは……」
ライドリィに名を呼ばれて、俺はただただ苦いものしか感じない。
そして、次に語り始めたのは、レベッカだった。
「あまりにも格差が大きすぎるんだよ、この社会は。今、ヴァイスが言った通りだと私も思うよ。現在の冒険者ギルドは、金持ちの手下になっている。冒険者は金に飼いならされた飼い犬で、金持ちのために働く無様な傭兵でしかないじゃないか」
「……随分といいたいように言ってくれるねぇ」
「事実だよ、ビスト・ベル。だから金持ちはもっと己の在り方を反省するべきなんだよ。そして、その財産を弱き者のために使った方がいい。それによって弱き者は潤って、社会はより全体的な幸福を得られるはずさ。そう思わないかい?」
なんだよ、こいつらは。さっきからやたら俺に同意を求めてきて……。
ヴァイスと『英雄派』の言いたいことがいまいち見えず、俺は戸惑いを覚える。
だが、それをヴァイスが非常にわかりやすく、教えてくれる。
「ビスト・ベル。おまえの『力』は社会全体で共有されるべき財産だ」
「…………はァ?」
「まだわからないのか? おまえの『力』は多くの弱き者を救うことができる、素晴らしい『力』だ。おまえ一人がそれを独占するなんて、許されるはずがない」
こいつ、こいつら、そうかよ。こいつらが言いたいことってのは、つまり――、
「俺の『力』を『正しいこと』のために使え、ってことかよ」
「やっとわかってくれたか! そういうことだ!」
苦々しく呟く俺に、ヴァイスが一気に破顔する。
それに合わせて、ライドリィとレベッカも『やっとか』という顔を見せる。
「大いなる『力』には大いなる『責任』が伴う。ビスト・ベル。おまえが持つ『力』は世界のために、人々の救済のためにこそ使われるべきなんだ。そうだろう!」
まだまだしゃべり続けるヴァイスに、俺の中にドス黒いものが溜まっていく。
何も知らないクセに――。
私』が抱える後悔なんて何も知らないクセに、この野郎は……!
「おまえは俺達と共に社会救済のために働くべきだ、ビスト・ベル。かつて魔王だったおまえの『罪』を、その『力』によって弱き者を救うことで償うんだ。百八柱の神々もそれを望んでおられるだろう! 間違いなくな!」
ヴァイスの言葉が楽しくなさ過ぎて、握った拳がジンジン痛み出す。
さすがに無理だ。堪えきれない。俺は今すぐ、こいつの顔面を子の拳で潰して、
「ウチの神様の望みとか、勝手に決めないでくれませんか。すごく迷惑です!」
え、ラーナさん?
「本当に迷惑で、ただただ迷惑で、甚だ迷惑で、心底迷惑です。つまり迷惑です」
お、おおおおおお、ラーナが無表情で口だけ高速機動していらっしゃるゥ~~!?
「君は、ラーナ・ルナか。しかし、この男の『力』は――」
「何でそんな話になってるんですか? 元々はあなた達『英雄派』が暴走した結果、ギルドが壊れてウォードさんが大けがをしたっていう話でしたよね?」
ラーナの言葉が、話を逸らそうとするヴァイスを真正面からぶん殴るゥ~!
さすがにこうもまともに言われては、野郎も避けられなくなったようで、
「それは、悪いと思っている。しかし、仕方がないことだったんだ。だって魔族だぞ? 邪悪な魔族が冒険者ギルドに出現したなら、それは対処すべきで――」
「さっきから『~されるべき』とか『~のはずだ』とかがすごい多いですよね。それってただの自己正当化ですよ? そうやって自分達に非がある部分を取り繕おうとしても、あなた達がやったことは何ら変わりないんですからね?」
「く、き、君は……!?」
おおお、おおおおおおお。ラーナがヴァイスをブッ刺すブッ刺す。
「何ですか? 魔族は討たれるべき? だから四人が襲いかかったことは正しくて、ギルドの倒壊もウォードさんの大けがも仕方がないこと? そういうことですか?」
「今は、そんな話はしていない! 俺達は、弱き者を救うための――」
「そこでの論点ズラしはただの逃げでしかないぜぇ、ヴァイスよ」
ヴァイスとラーナが睨み合っているところ、今度はウォードさんが加わっていく。
「おまえさんらよぉ~、まるで実力が追いついてないクセに、理想だけ高く持つのはやめときな。俺とは別の意味で火傷するぜぇ~?」
ウォードさんの言葉もまた、辛辣だった。
実力不足のザコがイキったところで痛い目を見るだけ。うっひゃあ、言葉の暴力!
「そんなことはない! 俺達は、確実に一歩一歩、力をつけている!」
「おまえさんらが言ってた村ってェのは、もしかしてレーヴの村のことかい?」
反論するヴァイスへ、しかしウォードさんはそれを無視して、急に話題を変える。
「な? そ、そうですよ、本当にひどい村でした。みんな貧しくて、あんな――」
「あそこにいる連中な、農民じゃなくて元・罪人だぜ、全員残らずなぁ~」
え?
「え?」
見事に重なる、俺とヴァイスのリアクション。
「思い出してみるがいいさ、レーヴの村に一人でも子供はいたかよ?」
「あ……」
指摘を受けて、ヴァイスがハッと目を見開く。
つまり、その村に子供はいないのか。……なんでそんなことに?
「あの村はな、少し前まで死罪になるほどじゃないがさりとてむやみに放免できない程度の重さの罪を犯した連中を隔離する場所だったんだよ。犯した罪は様々だが、共通してるのは罰として性器を潰されてるってところさ」
「ひぇっ」
こともなげに言うウォードさんに、俺の股間にありもしない痛みが走った。
ヴァイスも右手を軽く股間辺りに置いていた。リアクション同じなのやめろッ!?
「あそこの村が貧しいのは確かだし、弱者なのもその通りだがよぉ、結局、そいつはただの自業自得の結果でしかねぇんだよ、ヴァイス。それくらいはわかるよなぁ?」
「……ぐ、そ、そうだったとしても!」
ウォードさんに明らかに追い詰められながらも、ヴァイスはまだ折れない。
「それでも、救うべき弱者はいる! その事実に間違いはないはずだ!」
「そりゃあいるさ。そんな連中はいくらだっている。けどなぁ、個人にだって、組織にだって、社会にだって、限界ってヤツはあるんだよ。それを無視して、何でもかんでも救おうってのは、無茶を通り越して、ただの夢物語。絵に描いた何とやらさ」
そう言って、ウォードさんは肩をすくめる。
「レーヴの村のことも知らなかった時点で、おまえさんらは馬脚を現してるじゃねぇかい。それで周りも見ずに突っ走るから、ギルドが壊れるようなことになるのさ」
「あれは、魔族がギルドにいたからじゃないか! 魔族、魔族だぞ!? 冒険者にとっては怨敵で、人類にとっては天敵の、絶対的な邪悪の――」
『魔族ならここにもいるお~』
絶叫めいたヴァイスの主張を途中で遮ったのは、やたら能天気な声。
皆が見ている前で四つ足宝箱のゴーレムがパカっと開いて、って、ミミコさん!?
「やっふ~、皆さんこんにちわちゃ~ん」
「何やってんだ、おまえェェェェェェェェェェェ――――ッ!?」
四つ足の宝箱から降りたミミコが『英雄派』に向かって軽く右手を振る。
その体は、初めて見たときと同じく、長い布を巻きつけただけ。
「ダ、ダークエルフッ!?」
「魔族……」
「うわああああ、魔族だァァァァ――――ッ!」
ヴァイスも含め、場にいる『英雄派』の冒険者達が驚愕し、悲鳴をあげる。
だが、ミミコはそれに一切表情を変えずに、言ってのけるのだ。
「そ~だお~、魔族だお~、で、ミミが魔族だから、何なのぉ~?」
「な、何だと……!?」
「見ての通り、ミミはダークエルフだけど、冒険者でもあるよぉ~? 今はEランク冒険者やってるミミコ・ミッコだよぉ~! よろしくねぇ~!」
今度はさらに、両手を大きく振ってアピールするミミコ。
当然、魔族は邪悪だと言い続けているヴァイスが、それを認めるはずもない。
「ふざけるな! ま、魔族が冒険者だと、そんなワケがあるものか!」
「あるけどぉ~? ライセンスあるしぃ~、マスターのリサっちにも認めてもらったもぉ~ん。だからミミは、間違いなく、冒険者なんだなぁ~。ふにふに」
ミミコは自分のライセンスを見せびらかし、厳然たる事実をそこにブチかます。
ヴァイスの顔色が、あまりの怒りと屈辱に真っ赤を越えて赤黒くなる。
「認めない、俺はそんなの、認めないぞ……!」
「アハハァ~、キミが認めないから何なのぉ~、それでキミに何ができるのぉ~?」
「う、ぐ……ッ」
だが、抗ってもミミコの言う通りでしかなく、ヴァイスは言葉を詰まらせる。
「口で散々弱き者を救うとか言っておいてぇ~、結局はここでミミを前にしても何もできないキミ達こそ、弱き者だよねぇ~。アハハ~、おかしいのぉ~」
ミミコったら、ヴァイスが言い返せないのをいいことに煽る煽る。
普段のこいつにはあまり見られない、珍しい一面だ。
これ、ミミコ、実は相当怒ってないか? 一体何が、こいつの怒りを誘った?
「ビスっちに嫌がらせしてくれたキミ達には、これでも全然言い足りないよねぇ~」
え、俺……?
「そうだよ、ビスト君」
「ああ、まぁ、そういうこったなぁ~」
そして、ラーナとウォードさんが、ミミコのように前に出て、三人が立ち並ぶ。
まるで俺のことを庇い、守ってくれるかのように。
「ビスト君の『力』はビスト君だけのもので、それは他の人がどうこう言っていいものじゃないよ。だって、その『力』もビスト君自身の一部なんだから。だから」
と、ラーナ。
「口だけの『
と、ウォードさん。
「ビスっちはねぇ~、ミミに優しくしてくれたんだよねぇ~。『力』なんてなくても、人に優しくできる人なんだよね~。わかるかなぁ~、だから、だからね」
と、ミミコ。
「ビスト君は――」
「ビストはよぉ――」
「ビスッちはぁ――」
三人が、ヴァイスと『英雄派』の冒険者達に向かって、声を揃えて叩きつける。
「「「自分の思うように『楽しいこと』のために生きていいんだ!」」」
――どうしよう、俺、ちょっと泣きそうかも。
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