「何か、感じますか?」

 お爺さんに聞いてみた。

「ほーっほっほ、儂も長いこと生きてるからな。八十 年を過ぎてしもうた。やはり色々あったもんじゃ!  人間とは悩んで、悩んで、大きくなっていくもんじゃ!」

  川は緩やかに流れを作っていた。川幅は十メートル程の小さな川だが、先月大雨が降ったときには、土手のうえの道路付近まで水嵩を増 していた。静かに流れゆく川の水面に、トンボが跳ねている。静かだった。子供たちの歓声を除けば。大空も青く美しく素晴らしい天気であった。空気も澄んでいて、久し振りに美味しい空気が肺を満たした。そしてお爺さ んは話を続けた。

「おう、すまんことじゃ、まだ名乗っても無かったな。儂は諏訪要蔵すわようぞうと言ってな、昔は警察官をしていた者じゃ。家はすぐそこにある。今は息子が、刑事をしておる。二代に渡る警察一家じゃ、儂も若い頃は刑事もしておってな色々と悩 みごとがあったな。何でも孫も警察になりたいそうな。因果じゃな」

  ーー・・・えっ、諏訪・・・? まさかな!ーー

 私の心を衝いた。

「そうなんですか、大変な仕事をされてきたんですね、私は設楽弘一と言います。M商事会社に勤めています。 この子は長男の新吾と言います」

「ほう、新吾くんか、可愛い子じゃ元気がよくて結構、結構」

 ーー成る程、刑事さんをやっていたから、表情や仕草で人の感情を推測出来るのだろうなーー

 私は何となく納得した

 

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