Ⅲ
「何か、感じますか?」
お爺さんに聞いてみた。
「ほーっほっほ、儂も長いこと生きてるからな。八十 年を過ぎてしもうた。やはり色々あったもんじゃ! 人間とは悩んで、悩んで、大きくなっていくもんじゃ!」
川は緩やかに流れを作っていた。川幅は十メートル程の小さな川だが、先月大雨が降ったときには、土手のうえの道路付近まで水嵩を増 していた。静かに流れゆく川の水面に、トンボが跳ねている。静かだった。子供たちの歓声を除けば。大空も青く美しく素晴らしい天気であった。空気も澄んでいて、久し振りに美味しい空気が肺を満たした。そしてお爺さ んは話を続けた。
「おう、すまんことじゃ、まだ名乗っても無かったな。儂は
ーー・・・えっ、諏訪・・・? まさかな!ーー
私の心を衝いた。
「そうなんですか、大変な仕事をされてきたんですね、私は設楽弘一と言います。M商事会社に勤めています。 この子は長男の新吾と言います」
「ほう、新吾くんか、可愛い子じゃ元気がよくて結構、結構」
ーー成る程、刑事さんをやっていたから、表情や仕草で人の感情を推測出来るのだろうなーー
私は何となく納得した
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