9月(その4)

   

 九月には、他にも大きな変化があった。

 二階の部屋や廊下だけでなく、一階のリビングの一部も子犬が入って良い場所になったのだ。


 きっかけは、父が子犬を抱きかかえてリビングのソファーに座りながらテレビを見ていたこと。子犬としても人間に抱きかかえられるのは好きなようだが、それでも長時間ずっと続くと不自由に感じるらしい。

 腕を振り払ってソファーの上に降りてしまう、ということが何度かあった。

 ただし「降りてしまう」といっても、あくまでもソファーの上。ソファーから降りてリビングのゆかを歩き回るわけではない。

 そもそもリビングはキッチンと繋がっている――間に仕切りは存在しない――し、リビングと父の寝室の間も襖があるだけ。しかもその襖は開けっ放しだ。

 つまり、リビングを自由に歩いて良いことにしたら、もはや一階のほとんど全てが出入り自由になってしまう。だからそれは厳禁なわけだが……。

 ソファーの上だけならば行動範囲も限られるし、問題にはならないはず。そんな感じで、なし崩し的に「リビングのソファーの上も子犬の領域」となってしまった。


 とはいえ、うちではしつけのたぐいは一切できていないので、こちらが定めたルールが子犬に伝わるかどうか……。

 今回の場合は、割と簡単に理解してもらえた。

 リビングからドア一枚隔てたところには玄関前の廊下があり、その玄関には犬の飼育ケージがある状況だ。「ソファーから降りたらケージに戻す」というのを繰り返したら、ケージがすぐ近くなのもあって「ケージに戻されたくないから、ソファーの上では大人しくする!」と学んでくれたらしい。


 ソファーの上だけなので子犬はあまり激しく動き回れず、人間の隣あるいは膝やお腹の上で、大人しく過ごしている。最初の頃のヤンチャぶりからは想像できないほどだ。少しは大人になった、というあかしだろう。嬉しい限りだ。

 元来が人懐っこいトイプードルなので、たとえ暴れることは出来なくても、ケージの中で一人でいるより人間と一緒にソファーで過ごす方が嬉しいらしい。ソファーで一緒にいる時間も、ドンドン長くなっていく。


 ソファーで一緒にいると「犬は睡眠時間の長い生き物」「ただし犬の眠りは浅い」というのがよくわかる。

 当時の様子を写した写真が2022年10月15日の近況ノートに載っているが、


https://kakuyomu.jp/users/haru_karasugawa/news/16817330648443293862


 そこでも記したように、犬が隣で寝ている状態ならば、私はソファーの前にPCを置いて原稿を書いたり出来る。

 私の膝の上に子犬が座っている写真は、私も他のことはせず、犬の相手をしていた時のもの。私が背中を撫でているうちに、犬は寝てしまった。

   

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る