50.魔力自体がよくわからない
獲物はたくさん狩ったけど、保管庫みたいなのがないんだよな。
ドラゴンが住んでいる洞窟の中はそれなりに寒いからそこに肉を貯蔵しておくか? と考えたが、多分そこに肉があったらドラゴンが食べてしまうだろう。そう考えるとどうしたものか。
俺がいる時は俺のリュックから出せばいいんだが……と中川さんに相談してみた。
「うーん、そうね……。テトンさんたちは氷魔法持ってます?」
「ないですね」
「持ってないです」
「じゃあ、覚えられるかどうか試させていただいてもいいですか?」
「よろしいのですか!?」
テトンさんが目を輝かせた。以前と違い、テトンさんたちも能力が上がってきている。もし魔法を覚えられたら肉の貯蔵にも使えるに違いない。つっても氷魔法を解除したヤクの肉はなんか水っぽくなったんだよな。それも魔法の使い方なんだろうか。
もう少し想像力というものを働かせた方がいいかもしれない。
中川さんがケイナさんとユリンさんを手招きした。
俺はテトンさんとムコウさんに試してみることにした。
結果、ケイナさんは覚えることができた。
「これでお肉の保管ができますね!」
ケイナさんが跳び上がるようにして喜んだ。俺たちがいないと、それこそ毎日のように狩りをしないといけなかったからそれはそれでストレスだったらしい。
「……こんなにいっぱいお肉が食べられるようになって、贅沢だっていうのはわかっているんですけど……毎日解体しないといけないのが思ったよりたいへんで……」
「そうですよね」
能力が上がっているといっても解体が面倒なのは変わらない。
アバウトにやるわけにはいかないからだ。
それでも浄化魔法を使えるからだいぶ楽ではあるんだが。中川さんはケイナさんに水魔法も教えたらしく、とても喜んでいた。
とはいえケイナさんの魔力も無尽蔵にあるわけではないから、ここぞという時以外は使わないようにするみたいだ。
普通はそうなんだよな。
『お主らの魔力が多すぎるのだ』
オオカミが呆れたように言う。
「そういうことってわかるものなんですか?」
『普通はわからぬだろうが、そなたらの魔力は身体から溢れるほどに満ちておる。そこなイイズナがそなたたちから離れないのもそれが理由じゃろうて』
「えええ?」
首に巻きついているミコを撫でると、ミコは伸び上がって俺の頬をぺろりと舐めた。
うん、獣臭いけどとってもかわいい。
ミコさんは最高です!
って、そうじゃなくてだな。
「……魔力が溢れているのと、イイズナさんたちが私たちにくっついているのになんの関係があるんですか?」
中川さんは、同じように首に巻きついているカイをなでなでしながら聞いた。
『魔力が溢れているのじゃぞ? くっついていれば魔力がわずかながらでも供給されるじゃろうて。我らは魔力を身の内に収めているからよいが、そなたらは魔物にとって垂涎の餌に見えるはずじゃ』
ドラゴンに呆れたように言われて、俺は中川さんと顔を見合わせた。
「……もしかして、それで森でも襲われてたんですか?」
『人間という餌と魔力が結びついた結果じゃろうな。もう少し魔力を制御した方がよかろうて』
「……どうやって……」
そもそも魔力ってものが感じられないのに制御なんてできるはずがない。
俺は途方に暮れた。そんな俺を慰めるようにミコが俺の頬をぺろぺろ舐める。ああもうかわいいいいいい!
「うーん……まずはどうやったら自分の魔力を感じられるかよねー」
中川さんも感じ取れてはいないらしい。
「多分、空気みたいにあるのが自然だからわからないのかも。あとは、身体の中の臓器に意識を向けたりすることってそうそうないじゃない? 発想の転換が必要かもしれないわ」
確かに、と思った。
「あれ? でも普通人間は魔法が使えないようなこと、オオカミさん言ってなかった?」
『うむ。南の国の人間は魔力がほとんどないのでな。そもそも魔法を使える者が少ないだろう」
「でも北の人は使える、と」
「我々は角に魔力を貯めているのです。ヤマダ様、ナカガワ様のおかげで、角もこんなに育ちました」
そう言って、テトンさんは髪を耳の後ろに流した。
「あっ」
テトンさんの角は耳の後ろに生えていた。初めて見たかも。
「私のもかなり育ったんですよー」
ケイナさんもにこにこしながら言う。さすがに見せてはくれなかった。ムコウさん家族もみんな角が順調に育っていると喜んでいた。普通はそんなに育つものではないらしいから、やはりゴートだの森の魔獣だのを食べているから育ったのではないかという話だった。でっかいネズミもどきの肉も提供しているしな。
北の国の人々は角に魔力を貯めている。ということは、俺たちはいったいどこに魔力を貯めているんだろう?
また疑問が増えてしまい、首を傾げようとしたがミコが首に巻きついていたので傾げられなかった。
その日はヤクとネズミもどきの解体を行い、一部の肉をケイナさんが魔法を使っていいかんじに凍らせた。肉の貯蔵庫も作らないと、なんて話をして過ごしたのだった。
明日こそは港まで行くぞー。
次の更新は、24日(土)です。よろしくー
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます