49.狩り時は調子に乗っている気がする

 翌日は朝食の後で山の上の方へ狩りに行くことにした。

 ドラゴンが当たり前のように背に乗せてくれる。だいぶドラゴンに乗るのも慣れた。とはいえ、空を飛ぶのは気持ちいいけど怖いは怖い。ミコも俺の上着の内ポケットに入った。


『ゆくぞ』


 ドタドタと走ってからドラゴンが飛ぶ。中川さんも一緒だ。(カイも)

 オオカミは自力で走る。

 下の方に雲が見えた。雲海のような状況になっているから、下界は雨が降っているのかもしれない。俺たちが住んでいるところは雲の上だ。

 って考えると少なくとも標高2000m以上のところに住んでいるんだよな。(何度も確認している)それなりに能力が上がってるから更に上までいっても高山病のような状態にはならないけど、最初の頃はちょっとくらっとした。

 ある程度の高さの場所にドラゴンは降り立った。ドタドタと走って停止する。その際にヤクを二頭ぐらい轢いた。

 こわっ、と思った。

 ドラゴンが降り立ったことにヤクは気づいた。

 ブォオオオオーーーーッッ!!

 と雄叫びを上げながら何頭もドラゴンに突っ込んでくる。それに醤油を付けた石を投げつけた。中川さんは落ち着いて何度も矢を射る。本当に中川さんはカッコイイ。

 そんなかんじで、俺たちだけでヤクを四頭倒した。早い。

 ドラゴンが轢いたのが二頭とですでに六頭だ。よくヤクも減らないよなぁ。

 俺たちがいなければそれほど獲らないからかもしれない。


「ふぅ、緊張するねー」


 中川さんがそう言って汗を拭った。

 ドラゴンの背から降りたところでオオカミが着いた。そして狩りを始める。

 調子に乗ってみんなで十頭も狩ってしまった。だから、こんなに狩ってどうするんだっつーの。

 最近獲り方がえぐい。更にもう少し上まで行き、でっかいネズミもどきも何頭か狩った。これはテトンさんたちに食べてもらう用だ。でっかいネズミもどきは食べると魔力が増えるし。チェインにはもう少し我慢してもらうけどなー。

 ってかんじで狩りをし、俺のリュックに全部詰めて戻ることにした。


「山田君、試しにここから家まで走らない?」


 中川さんに提案されて、それもいいかもと思った。


『……乗らぬのか?』


 ドラゴンが拗ねたように呟いた。


『どれぐらい能力が上がったか測ってみたいんです。明日は北の国の港へ向かいたいんですけど、ドラゴンさんに乗せていってもらってもいいですか?』


 確かに港へ向かうだけなら早く行って早く帰ってきた方がいいもんな。自分たちの能力がわかれば、帰りは自分たちで走って帰ってきてもいいものかどうかわかるし。


『……いいだろう。では先に戻るぞ』


 ドラゴンはツンとしてドタドタと走り、そのまま飛び立った。


『我も先にゆくぞ』

『はーい』


 オオカミも下へ向かって走り出す。


『山田君、行こう』

『うん』


 ミコが内ポケットから顔を出して、キュウ? と鳴いた。話を聞いていたらしい。


『ミコはそのままでいいよ』


 そう言ったが、ミコは内ポケットから出て俺の首に巻きついた。気持ちのいい襟巻だ。


『じゃ、行こうか』


 中川さんと共に下に向かって走り始める。

 中川さんはいろいろ試したかったようで、ぴょーんと跳び、かなりショートカットして下りていく。俺も少しはやってみたけど怖くてだめだった。高所恐怖症ではないはずなんだけど、落ちるってのが怖いんだろうな。その点中川さんはぴょんぴょん跳んでいく。

 楽しそうだなと思った。

 楽しいのが一番だ。

 俺はあまり跳ばなかった分駆けた。

 登りは疲れるかもしれないが下りは風を切っていくかんじが楽しい。でもこんな走り方をしていたら足を痛めそうだと思った。

 つっても身体能力はめちゃくちゃ上がってるから、ここのところ何をやっても筋肉痛にもならないんだよなー。

 家のあるところまで、それほど時間はかからなかった。


「にーちゃん、ビリ!」


 チェインにビシッと指をさされて、たははと笑った。別に勝負とかじゃなかったけど、これはこれで楽しいものだ。


「勝ち負けとかじゃないのよー」


 中川さんが笑う。


『遅い』

『肉をよこせ』


 チェインよりもドラゴンとオオカミの方がひどいと思います。


「はいはい……」


 ミコが俺の首のところから顔を上げ、キイイイイイイッッ!! とドラゴンとオオカミに向かって威嚇した。

 ミコさん、ちょっと耳が痛いです。(物理)


『……何が悪いんじゃ』

『肉……』


 ドラゴンとオオカミは三歩ぐらい下がってそっぽを向いた。ドラゴンもオオカミも尾が丸まっているように見えた。

 誰もミコさんにはかないません。

 俺は苦笑しながら、今日の獲物をリュックから出す。

 さすがに十頭ものヤクを出した時は、みな絶句した。


「こんなに、狩れるものなのですか……」


 テトンさんが信じられない物を見るように呟いた。


「襲ってくるので……」


 襲ってこられたら撃退しないとだろう。わざわざこっちから狩りに行っているから、ヤクにとってはいい迷惑かもしれないが。


「ロン様、ラン様、にーちゃんもねーちゃんもすげー!」


 チェインが目をキラキラさせている。


「チェインもそのうち狩れるようになるよ」


 頭を撫でてそう言ったら、ムコウさん夫妻がふるふると首を振っていた。そんな貴方がただってゴートはばんばん倒してるだろーが。

 ヤクの肉も少しずつ食べてもらえばいいよなと思うのだった。


次の更新は、21日(水)です。よろしくー

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