48.風呂とこれからの予定

 一度行ったせいか、今回はけっこうスムーズにお湯のあるところまで行けたと思う。

 テトンさん、ムコウさんだけでなくチェインもけっこう夜目がきくみたいだ。でも足元は注意していないから、着くまでに何度か躓いたりはしていた。苦笑して声をかけた。


「チェイン、気を付けろよ」

「だって見えづらいんだよ~」

「お前は見えてたってこうだろうが!」


 ムコウさんに言われていたが、チェインはへへへと笑った。子どもはこんなもんだよなと思う。って、本当は俺もまだ子どもなんだけどな? こっちの世界ではすでに成人している歳みたいだが……。


「暑くなってきたー」

「もうすぐだ」


 地熱とお湯の熱気が届けばすぐだった。


「なんかもわもわしてる~」

「湯気だな」


 全員に洗浄魔法をかけ、服を脱いでさっそく浸かることにした。

 ビバ、風呂!

 男だけだし暗いから気兼ねなく入れる。中川さん曰く、お風呂の中は特に引っかかりもなくすんなり入れたらしい。ただ深さが50cmぐらいあるので、チェインが座ろうとしたら顔が浸かってしまうのではないかとは言われた。


「ちょっと深さがあるみたいです」

「そうですか」

「チェイン、気を付けるんだぞ」

「わかったー!」


 と言いながらチェインは素っ裸になってじゃぼん! と風呂に飛び込んだ。おいおい。


「あっちー!」


 40度だもんなぁ。ちょっと湯が熱いかもしれない。


「落ち着けよー」


 バシャバシャやってるチェインを捕まえて岩のところに座らせた。

 ついでに一緒に跳び込んだ形になってしまったイタチのチイを救出する。


「びっくりしたなー、大丈夫か?」


 キュウウウウッ! とチイは全身をぶるぶるさせて鳴いた。お湯もきっと熱かっただろう。


「あんまりチェインのこと怒らないでやってくれ」

「こらチェイン! 危ないだろう!」


 さっそくムコウさんが叱っていた。まぁ、しょうがない。

 チェインはチイにごめんなーと謝っていた。

 たははと笑い、ミコに「どうする?」と聞いた。首に巻きついているミコが頭を上げた。

 そしてキュウ? と鳴く。あんまり姿は見えないけど、うちのミコさんはかわいすぎます。


「ミコ、お湯に浸かってみるか?」


 俺は浸かるんだけどな。俺にくっついたままだと有無を言わさず浸かることになってしまうので、ミコを岩の上に下ろした。湯に浸かって両手でお湯を掬い、ミコの前に出した。ミコは首を傾げながら、お湯をぺろりと舐めた。

 もうこれだけでかわいい。

 そのままぺろぺろと舐め、飲む。

 そういえばドラゴンもここのお湯は飲むって言ってたな。うまいんだろうか。


「あー……気持ちいいですね」

「ちょっと熱いが、いいものだな……」


 テトンさんとムコウさんは端っこで浸かっている。気に入ったならよかったと思った。

 結局イタチたちは湯には浸からなかったが、お湯を飲んだりはしていた。チェインはそのうち湯の温度に慣れて入った。


「ふわー……気持ちいいー……」


 泳いだりしだすんじゃないかと思っていたが、そんなことはなかった。


「よかったな」


 俺も風呂は久しぶりだ。おかげでのぼせるぎりぎりまで浸かってしまった。


「これからも入りたいなー……」


 身体は洗浄魔法でキレイになるけど、やはり湯に浸かるのは気持ちがいい。

 持参したタオルで身体を拭き、テトンさんの風魔法で身体を乾かしてから服を着て戻った。


「ヤマダ様やナカガワ様のおかげで、魔法をいくら使っても困らなくなりました」


 テトンさんはとても嬉しそうにそう言った。


「別に俺たちのおかげじゃないですよ。それはテトンさんのがんばりです」

「なんと謙虚な……」


 テトンさんが感動している。テトンさんて相変わらず感動屋だよなと苦笑した。

 洞窟を出ると、


「おそーい」


 と中川さんに笑いながら言われた。


「久しぶりの風呂だったからさ。気持ちいいなー」

「そうね。毎日だって入りたいわ」


 みんな笑顔だ。これからも風呂に行こうということで意見は一致した。

 ちなみに、オオカミも湯には浸からないらしい。熱いとのことだった。残念。


「名残惜しいけど、そろそろ移動しないとかもね」


 中川さんが残念そうに呟いた。

 そう、南の国にも行ってないし、その前に港の状況を見てこないといけない。奴隷は解放するってことでジャンさんと話はまとまっているけど、まだ南の国から人を攫ってきていないという保障もないのだ。


「……信用がないって寂しいよな」


 全てあの王様が悪いんだけどさ。

 俺たちが解決する義務もないけど、こっちの世界には百年ぐらいいないといけないみたいだからやれることはやっておきたい。

 俺たちにはそれだけの力があるみたいだし。

 できればもう少し魔法を覚えたりもしたいんだけどさ。って、俺には魔法を使うセンスがなさそうだって? ほっとけ。これから練習するんだよおおお!


「明日は狩りをして、できるだけ肉を調達しよっか」

「そうね。移動は明後日以降でもいいかも」

「明日、準備できるだけしよう」

「南の国の人が連れてこられてないといいわね……」

「そうだな」


 首に巻きついているミコを優しく撫でながら、そう中川さんと話したのだった。



次の更新は17日(土)です。よろしくー!

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