3.マヨネーズで懐かれた? ※虫を食べる描写がほんのりあります。注意
異世界(?)生活二日目である。
昨日とは違いもう少し太めの竹を切った。竹は節と節の間が空洞になっている。そこにマヨネーズを入れて容器にしようかと考えたのだ。
十徳ナイフはとても役に立つがさすがに竹は切れない。落ちている枝に割った石を括り付け、斧のようにして竹を倒した。……午前中いっぱいかかってどうにか一本倒すことができた。即席斧を何個壊したことか。ノコギリとかほしいな。汗だくである。
でもおかげで調味料を保管する為の容器は確保できた。水筒にもなるし、竹って万能である。
せっかくなのでポテチを出してマヨネーズにつけながら食べていたらイタチたちがやってきた。マヨネーズとか調味料って食べさせたらまずいよな? って思ったら、白い小さなイタチにマヨ付きポテチを取られた。あっ、とは思ったがさすがにここで取り返そうとしたりはしない。そんなことをしたら俺が食われそうである。歯がものすごく鋭かった。
俺の手からポテチを奪ったイタチは、ポテチをパリポリと食べた途端くりくりしたつぶらな瞳を更に大きく見開いた。
……この反応はマヨネーズだろうか?
様子を窺ったら、その白イタチはそーっと近づいてきて俺の膝に納まった。あれ? これってもしかして媚を売られているのか?
試しにポテチを一枚イタチの前に……。
当たり前のように取られた。パリパリとポテチを食べるイタチ。その目の前で俺は試しにポテチにマヨネーズをつけて食べてみた。イタチが食べ終えてからきょろきょろとした。なんか違うと言いたげである。面白くなってポテチにマヨネーズをつけたものを渡してみた。動物愛護団体からクレームがきそうだがここは異世界だ。大目に見てもらおう。
……この世界にも動物愛護団体がいたらどうしよう。
イタチはマヨネーズをつけたポテチを食べ、また目を見開いた。なんか目がキラキラしているように見える。他の、茶色い毛のイタチたちは物欲しそうにこちらを見てはいるが襲ってはこない。ということはこの白いイタチがリーダー的な立場なんだろうか。
ま、いっか。
「ちょっと待ってろ」
ポテチの袋を開いて平らにし、そこにマヨネーズを落とした。そしてイタチの前でポテチにマヨネーズをつけて食べた。そして平らにしたポテチの袋を地面に置いた。
イタチは俺とポテチを何度も見た。
「あげる。食べていいよ」
白いイタチがククククというような音を出した。そして俺の指を咥えた。
「うおっ!?」
食いちぎられるかと思ってびびったが、甘噛みだったようでその後ペロペロと舐められた。どうやら俺の指にポテチの塩気が残っていたらしい。そして白いイタチはポテチの袋のところに向かい仲間たちを見回した。仲間たちが近づいてきて、白いイタチがしたようにポテチにマヨネーズをつけてパリパリと食べた。
みんなして目が見開かれてるの、けっこうかわいいな。しっかし塩分取らせすぎではないだろうか。せめて塩分控えめのポテチを買ってくればよかったか。でも大して変わらないか。
ポテチは瞬く間に無くなった。マヨネーズをサービスしすぎたらしくマヨネーズが思ったより残っていた。そのまま舐めるのかと思ったが様子がおかしい。
イタチたちは自分たちの住処である椿の木に駆けて行った。そしてなんと、茶色っぽい芋虫を咥えて戻ってきた。
「うええ……ま、まぁ、マヨネーズつけたらおいしい、かもな?」
白いイタチが芋虫にマヨネーズをつけて食べたようだった。また目が見開かれている。おいしかったらしい。もっとポテチの袋を遠くに置けばよかったと後悔した。俺は見なかった、何も見なかったんだ。そう思ってそっぽを向いていたら白いイタチが俺の目の前にやってきた。芋虫を咥えて。
「え? えええええ?」
どうやら食べろと言いたいらしい。お礼のつもりなんだろうか。で、でも虫食はなぁ……。
でもこのイタチたち、昨日イノシシもどきを骨にしたよな。逆らったら俺がああなるのでは?
「あ、ありがとう……」
指先で摘まみ、その感触に耐えてマヨネーズをたっぷりつけて食べた。
「う……うめええええええええ!?」
俺は驚愕した。今食べたのはすごくおいしかったのだ。なんというかマカロニのような食感でマヨネーズとあいまって最高だった。
とはいえ、見た目からしてもう二度と食べたいとは思わない。
そういえばオーストラリアのアボリジニーだっけ? ウィチェッティグラブとかいうガの幼虫を食べるとか聞いたような。けっこううまいらしい。でも俺はけっこうです……。
「ありがとう。でももういらないから」
身振り手振りでどうにかもういらないということはわかってもらえたと思う。白いイタチは首を傾げるような仕草をした。それがすごくかわいくてつい撫でてしまった。はっ、噛まれるかも!? と思ったが、イタチは俺の手に擦り寄ってきた。
「うっわ、かわいい……」
イタチたちは小さい。多分全長30cmあるかないかだ。俺はその白いイタチをしばらくそっと撫で続けた。その間にマユネーズは他のイタチたちに食べ尽くされていた。しっかし病気とかにならなければいいんだけどな。
「ちょっと袋だけ片付けさせてくれ」
言って立ち上がり、ポテチの袋を取りにいく。ここに捨てるわけにいかないし。ポテチの袋をリュックの中のごみ入れの袋に入れて閉めたら、イタチたちに引っ張られた。
「ん? なんだ?」
小さいイタチたちが俺の服の端を咥えて引っ張っている。
「わかったわかった。付いていくからちょっと待ってくれ」
服を直し、イタチたちに先導されるままに原っぱの端の方へ連れて行かれた。竹林の前辺りだから大丈夫だとは思ったけどちょっとびくついた。なんで竹林が大丈夫だと思ったのかそれは俺にもわからないが、なんか大丈夫そうな気がしたのだ。
「え? これって……」
なんか、金属の何かがいくつも草に埋もれていた。
もしかして以前ここに来た人が残して行ったのだろうか。昨日は全然気づかなかった。
茶色いイタチたちは戻っていったが、白いイタチは俺の側に残った。これはもしかして懐かれたんだろうか。
思わず顔が綻んだ。
「名前とかつけていいのかな……」
名前つけたら人型になったりしないかな。それはラノベの読み過ぎか。さすがにそれはないだろと苦笑しながら、そこにあるものを物色することにした。錆びついたものもあるから、もうそれなりに年月は経っているだろう。使えそうなものは遠慮なくもらうことにしたのだった。
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