2.情報量が多すぎておっつかない
さて、続きで申し訳ないが初日のその後である。不明点が多すぎると思われるので補足だ。って、誰に説明しているんだ俺は。
なんで焼肉のタレでイノシシもどきが倒れたのかは未だわかっていない。(現時点で一月半が過ぎている)
小さいイタチたちは原っぱの真ん中に生えている木の上に住んでいた。
その木の葉っぱは濃い緑でしっかり葉っぱ! というやつだった。赤い花が咲いている。俺でも知っている。椿の花だった。
ってことはもしかして毒虫がいるのでは、と冷汗をかいたが、その木にいたのは毛虫ではなく芋虫だった。
「……え? 芋虫って、毛虫になるのか? それとも毛虫は生まれた時から毛虫なのか?」
そこらへんの知識はない。得体が知れないことには違いない。まだ近寄ってはいけない気がした。そうなるととりあえず寝床はどうやって作ったらいいだろうか。
厨二病の父親の影響でラノベは読み漁ったし、そういう異世界トリップ系のマンガも沢山読んだ。その中から知識を総動員してみよう。
とりあえず、
「ステータスオープン!」
と叫んでみた。
いや、みんな異世界だと思ったらまず言ってみるよな? 常識だよな? な? 常識と言ってくれええええ!
……結果、なんも起こらなかった。超恥ずかしい。穴があったら埋まりたい。
でも大丈夫だ。ここに人はいない。小さいイタチたちがいるだけである。
気を取り直し、石を見つけて割った。竹林に近づいて比較的細い竹を何本か切った。イノシシもどきが突進してきた木々の方へはどうしても足が伸びなかった。これでもかと長い時間をかけて、竹と笹を大量に集めて寝床をどうにか作った。もちろん葉っぱとかいろいろ試しに燻してはみた。寝ている間に虫が入ってきたりしないようにである。もちろん燻すことでいた虫も殺すか追い出せるという寸法だ。
「なんだよこれ、超重労働じゃん……。でも段ボールもあるしビニールシートもあるしな。防寒具もあるからまぁいいか……」
草を刈ってちょっとスペースを作ってから、やっと弁当箱を取り出した。本当は山頂に着いた後で食べようと思っていたのだ。それどころではなかったが。そしてリバースしながらもどうにか解体したシシ肉もどきを焼いて食べた。それにしても焼肉のタレを浴びたら死ぬってなんなんだろう。俺は全然大丈夫だったけど、この世界の生き物にとっては毒だったりするんだろうか。
ということは焼肉のタレで完全犯罪?
いや、ないわー。
あほなことを考えながら、寄ってきたイタチたちに残りの肉は提供した。これあげるから俺のことは食べないでね。
よーく焼いたのだが、シシ肉もどきは美味だった。焼肉のタレ、素晴らしい。ビバ! 焼肉のタレ! 母が握ってくれたおにぎりもゆで卵もおいしかった。ゆで卵には焼肉のタレをつけてみた。最高だった。
しかしこの水筒の中身っていつも焼肉のタレなんだろうかと疑問が湧いた。中身を別のに入れ替えたら別の調味料とかにならないかな? まぁでも焼肉のタレでもいいか。イノシシもどきが死んだ原因はこれかもしれないし。
水筒の中身をとりあえず空いた500ミリペットボトルに詰めてみた。いっぱいになった。そういえば俺の水筒でかかったな。多分素で1リットルぐらい入るんじゃないか?
水筒を洗った方がいいとは思ったが、使った水はどうしたもんか……。焼肉のタレスープにでもするか。
なんとなくリュックを漁ってポテチの袋も出した。
食べていたらイタチたちが近づいてきた。
しょうがないからあげたら喜んで食べてくれた。うんうん、明日リュックの中にあるようならまたあげるから俺のことは食べないでね。
歯磨きは草を噛むことでし、ごみはまとめてリュックにしまった。何故か親が面白がって水のいらないシャンプーなるものを入れてくれていたので頭を洗うことはできた。タオルで拭いて、そのタオルはペットボトルの水で洗った。干す場所はところどころに落ちている木の枝を組み合わせて作った。
それにしてもリュックのファスナーを閉めて開けると使ったものが補充されているのが嬉しい。おかげで水をかなりふんだんに使えた。
うん、たいへんだったけど今日のところはどうにかなったと思う。
暗くなってきたので念の為焼肉のタレを、寝床から少し離れたところに撒いてみた。寝てる間にイノシシもどきに殺されるとか冗談じゃないし。作った寝床にビニールシートをかけて寝た。意外と快適だった。
翌朝、肌寒さで目が覚めた。
リュックを開けてみたら昨日しまったごみが小さくなっていた。圧縮されたんだろうか。なんてご都合主義なんだと思った。
「……どゆこと?」
昨日は混乱していたせいでいろいろそのまま受け入れてしまった気がするが、今後はさすがにそんなお気楽極楽でいられないだろう。
リュックの中からカロ〇ーメイトを出してもそもそと食べ始めた。考えるにはカロリーが必要だ。どうしてもボソボソするので水も飲む。うん、今朝も水は補充されていた。幸せだ。
食べ終えてから再度現状把握をすることにした。
ライターの中身は減っていない。火は起こせる。
おそるおそる水筒を傾けてみた。
「?」
何も出てこない。でも明らかに何か入っている重さだ。上蓋を取ったら薄黄色のクリーム状の何かが詰まっていた。指で掬ってみる。
これはもしや……。
「マヨネーズか!」
なんてものが水筒に入っているのか。これじゃペットボトルに落とし入れることも難しそうだ。マヨネーズなんかどうしたらいいのか。
ふと昨日洗ってからしまった弁当箱を取り出してみた。昨日と同じくおにぎりとゆで卵が入っていた。なんという幸せか。天国はここにあったのか!
じゃなくて。
これはもうなにがしかの意志を感じる。
最近の異世界トリップにはサポートのようなものはないのだろうか。神様の気まぐれにしては親切すぎるし、かといってこの世界の人間が召喚したというなら何故迎えがこないのか。
まだ召喚されたばかりだから迎えが辿り着いてないだけなのかもしれない。でもその間に俺がここで飢死してたらどうするつもりなんだろうなぁ。そしたらまた召喚するのか。
全くもって意味がわからない。
とりあえず今俺がしなければいけないことは、マヨネーズを別の容器に移し替えることだった。
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