第10話 大事な話

 冒険者ギルド。


 それは冒険者の活動の為にある寄り合い所。冒険者としての身分を登録し、持ち込まれる依頼をギルドが精査、管理し、それを冒険者に仕事として凱旋する場所。冒険者には必須の場所だ。日夜、玉石混交の冒険者達が集まっている。


 さて。


 俺はといえばそんな場所に報告をしに来ていた。相手は普段から受付で対応してくれている女性。まあ話をとりあえず伝えておけば良いだろといった考えだな。


「あら、シオンくん。帰ったの? 他の人達は?」


「あいつらなら全滅したぞ」


「……え?」


「それと依頼のアッシュベアは居なかった」


「……え?」


「代わりに焦却豪熊バーンアウトグリズリーを見つけた」


「……え? え? 焦却豪熊バーンアウトグリズリー? それってあの?」


「あのってのが合ってるかは知らんが……多分そうだな」


「え? え? ヤバくないですか!?」


「ヤバいな。じゃ、俺はこれで」


「え……、ちょ、待っ……! ギ、ギルドマスター!!!」


 報告義務終わったから帰ろうとしたら捕まったんだけどなんなの? (当然)



 ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ 



「で、お前がシオンってヤツか」


「おう、そうだ」


 厳つい顔をした爺さんが、めつけてくる。こちらも負けじと睨み返した。おう、やんのか?

 俺達がガンつけ合っているここの部屋は、高級そうな調度品などが置かれている。転生前でも入ったことないから分からないが、多分応接室とかいう部屋なんじゃないか? おそらく、結構な好待遇。重要な俺から引き出しやすく為だろう。


「ちょ、シオンくん!? この人ギルドマスター! このギルドで一番偉い人」


「さっき聞いたな。確かに偉そうなヤツだ」


「偉そうじゃなくて本当に偉い人なの! 確かに態度は大きいけど!」


「……君も随分大概だぞ、ヴィブラくん」


「はっ!?」


 呆れたように窘めたギルドマスターの言葉を受けて、受付の女性、ヴィブラが恨みがましい視線を向けてくる。

 それを受けて俺は頷いた。


「この物言い、確かに蹴落としたくなるな。応援するよ」


「何の話!?」


「……ヴィブラくん、後で話がある」


「ち、違いますよギルドマスター!? シオンくんのジョークですよ!」


 弁明を試みているものの、黙殺されてヴィブラは力なく項垂れた。……かわいそうに。


「あんた最低だな」


「お前に言われたくないわっ!」


 軽蔑した目を向けたら逆ギレされてしまった。解せぬ。


「……話を戻すぞ。……君の話を受けて、ヴィブラくんに先に調書を取って貰ったが……これは本当かね?」


 調書……、恐らくこいつが部屋に戻ってくる前、ヴィブラに根掘り葉掘り聞かれた焦却豪熊バーンアウトグリズリー発見の話だろう。

 ……危険度が高いからな。だがもう森には居ないだろう。かなりの恐怖を与えた筈なので、逃げているはずだ。しばらくは人前に姿は現さないだろうな。……それを伝えるつもりはないが。


「その話の前に言っておかなくてならない話がある。とても……大事な話だ」


 真剣な表情を作った俺に、感じ入るものがあったのかギルドマスターも居住まいを正す。


「さっきのヴィブラの叛逆の件―――あれは小粋なジョークだ」


「シオンくん……!!」


 地獄に仏を見つけたようなキラキラした顔をヴィブラが向けてくる。俺はサムズアップで返した。


「見捨てるわけないだろ」


「シオンくん……!!」


「なんちゅーマッチポンプ……。ともかくその話はどーでもいーわ。はよ教えろ」


 空気が読めない爺さんだ……。


――後書き―――――――


主人公は戦闘中は荒っぽいですが普段は愉快(?)です。

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