第52話人形使いは消える
パリンと割れたパルテナの鏡の破片は五つに別れる。それはキラキラと輝き、宝石のような美しさだ。
「まあなんてこと、三種の神器を壊しちゃうなんて……」
さすがの四方堂義経も焦った顔をしている。
キラキラと輝く五つの破片はそれぞれ、僕のファミリーに向けて飛来する。
こんな攻撃が何になるんだ。
鏡の破片なんてものを飛ばしてもさほどダメージを与えられるとは思えない。普通の人間ならいざしらず、僕の頼れるファミリーならどうということなく迎撃するだろう。
まずみゆきさんがそれを愛用の警棒で叩き落とすべく、振り上げる。一呼吸のあと理想的な軌道を描く。
警棒が鏡の破片を撃ち落とすはずだったがそうはならなかった。
「えっ!!」
みゆきさんの秀麗な顔が驚愕にかわる。
パルテナの鏡の破片は警棒をすり抜ける。避けているのではなく、半透明になり突き抜けているのだ。どうやらあの鏡は物理法則上ありえない動きをするようだ。
「ぐっ!!」
なんてことだ。
すり抜けた鏡の破片はみゆきさんの豊かな乳房の左側に深々と突き刺さる。
「キャ!!」
それは白の悲鳴だ。
白はわずかな膨らみの胸を押さえて後ろ向きに倒れる。そこにもパルテナの鏡の破片が突き刺さっている。
「涼香、なんてことを……」
指弾でおはじきを発射し、その破片を迎撃するもそのすべてをすり抜けて、涼子さんの美乳に破片が突き刺さる。涼子さんは胸を押さえて前向きに倒れる。
「ごめんなさい……愛しの君……」
あやの先生のJカップ巨乳にもパルテナの鏡の破片が突き刺さっていた。あやの先生はペタリと座り込み、そのままの姿勢で意識を失う。
「こんなもの!!」
麻季絵さんが何度も鋭い正拳突きを放つが、それすらも鏡の破片は通り抜ける。そしてむっちりおっぱいに刺さってしまった。
「ダーリン助けて……」
そう言い、どさりと麻季絵さんは倒れる。
なんてことだ。一瞬にして、頼れる愛する五人が全員倒されてしまった。
ふらふらと人形使い五丈原涼香は立ち上がる。その本来ならかわいらしい顔に邪悪な笑みを浮かべる。
「ハンサムなお兄さんがその五人のブサイクらを捨てて、うちを選ぶなら助けたるわ。うちはその五人の中の世界に逃げる。五人を見捨てたらうちは現実世界にかえってけえへん」
五丈原涼香は持ち手だけになったパルテナの鏡をぐっと握る。
「
そう言ったあと、涼香のむっちりボディは霧のように消えてしまった。
「どうやらあの娘は逃げたようね」
光の結界をとき、四方堂義経は茫然自失している僕に話かける。
僕の愛する五人はそれぞれの左胸に鏡の破片を突き刺したまま、静かな寝息をたてている。
僕はその破片を抜き取ろうとあやの先生の爆乳に手をのばす。
「駄目よ、それを抜いちゃあ。それを抜いたらこの子たちはもとの世界に戻ってこれないわ」
義経が僕の手を握り、静止する。
それはどういうことなのだろうか?
「とりあえず、この子たちをベッドに寝かせてあげましょう。それに信長さんたちも休ませてあげないと」
義経は涙を流し、厚化粧も流れどろどろの汚れた顔になる。
そのあと、彼は美神と悠亜に命令して聖天子陛下を安全な場所にお連れする。
テキパキと指示していく。
騒ぎをききつけた小笠原夏子さんが駆けつける。この悲惨な現場を見て、百戦錬磨の夏子さんも口を手でおさえていた。
それでも彼女は冷静に部下たちに指示して、白たちを別室に移送させる。
およそ一時間後に僕は夏子さんに案内され、花の御所近くの病院に来ていた。
その大きな部屋に僕のもっとも愛する五人は眠っている。穏やかに静かにだ。
それぞれの胸に刺さったパルテナの鏡の破片は義経の指示でそのままだ。
でもどうして抜いてはいけないのだ。
僕が疑問を頭の中で回していると義経と沖ノ秋菜さんが入ってきた。
「しかし悪い予感があたってしもうたの」
愛弟子の眠る姿を見て、秋菜さんは言う。
「簡単に言うとね、パルテナの鏡は別世界にいくための扉を作る装置なの。そして鍵となるのはリルガミンの宝珠。涼香はリルガミンの宝珠なしでも異世界を移動できる能力を悪魔からもらっていたのよ。そしてね、七輝星君、君の愛する五人はそれぞれの世界に閉じ込められたのよ。あの娘の力にね」
義経はそう説明した。
パルテナの鏡の力によって白たちは別世界に閉じ込められ、そのうちのどれかに涼香はにげこんだのだと義経は解説する。
涼香が言ったように五人を見捨てれば、涼香は現実世界には二度と戻ってこない。人形使いの脅威は取り除かれる。だけど、僕にこのファミリーの五人を見捨てることなんてできない。
「ならばこの子らが閉じ込められた世界に行き、助け出さねばのう」
僕の手を握り、秋菜さんは言う。見た目はロリかわいい秋菜さんの手は拳法を極めているので案外硬い。僕はその手を握りかえす。
「方法はあるのじゃろう?」
ちらりと秋菜さんは義経を見る。彼の顔はもとの厚化粧を施されている。
「ないわけではないわ。そうね、明日の朝説明するわ。七輝星君、君も疲れているでしょう。今日はゆっくりと休みなさい。まずは体力を回復させることね。僕は後始末をしてくるからね」
そう言い、義経は病室を出た。
僕は用意された別の部屋で休むことにした。ご飯もあまり食べられなかったけど無理やり食べた。わずかな時間しかたっていないのにもう麻季絵さんの料理が恋しい。
ベッドに寝転がり、眠れないので暗い天井を見ていると秋菜さんが入ってきた。
「眠れぬのか?」
ときく。
「ええ……」
僕は答える。
白やあやの先生、涼子さん、みゆきさん、麻季絵さんのことが気になって仕方ない。
「少し気を紛らわせてやろう」
そう言い、秋菜さんはするすると服を脱ぎ捨て、素っ裸になる。その小さい口で僕の分身をくわえこんだ。
僕は秋菜さんの優しさに甘えることにした。SSR資格所持者は精を発散させなければ、気が狂ってしまうという。
僕はこんなときだというのに、秋菜さんの細い体を思う存分愛した。
たっぷりとその日あるだけの愛情を秋菜さんのロリボディに注ぎ込む。
愛情を放出した快感で僕の体に耐えきれぬ疲労がおそう。
秋菜さんは僕の頬を優しくなでる。
「わしも気持ち良かったから気にすることはない。ゆっくりと休んで鋭気を養うのじゃ」
そう言い、秋菜さんは大人のキスを繰り返す。
僕たちは痛いぐらいに抱きしめあいながら、眠りについた。
翌日、僕と秋菜さんはあやの先生たちが眠る病院の大部屋に向かう。
そこにはすでに四方堂義経がいた。彼は実の娘である四方堂明日香を連れてきていた。ほどなくして、三千院キララ、二葉蔵美神、一乗谷悠亜が入室する。
「よく眠れたかしら?」
義経は僕にきく。
「ええまあ」
と答える。
秋菜さんが愛してくれたから、ぐっすりと眠ることができた。頭はすっきりしている。
「なら良かったわ。七輝星君、君が愛する五人を救うには彼女たちが閉じ込められている世界におもむき、彼女たちの魂の本体を連れ帰るのよ。君とここにいる四人ならそれができるのよ」
義経は僕の目を見て言う。
四人とは四方堂明日香、三千院キララ、二葉蔵美神、一乗谷悠亜だと彼は語った。
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