第47話御前会議前夜

二葉蔵光秀の葬儀は近親者だけでひっそりと行われた。この国の権力の中枢をになう五花族の当主の葬儀にしては質素すぎるがパンデミック以降葬儀という文化風習がなくなったこの国では葬儀が行われるだけでもたいへん珍しいことだという。

「パンデミックで人が死にすぎてお葬式なんてやってられなかったのよ」

とあやの先生は説明してくれた。

双葉幸村は八丈美冬さんと共にその葬儀に出席したという。

「今月の末ほどに御前会議が開かれることになりました。つきましてはそれに種子島さんも出席していただきたいのです」


その葬儀の帰りに美冬さんと共に僕の屋敷に立ちよった幸村はそう語る。

この国の権威の象徴である聖天子せいてんし陛下の前でのこりの五花族の当主が集まり、双葉蔵家の行く末を決めるのだという。

なんとその会議に僕と幸村さんが出席することになった。それは二葉蔵光秀の遺言でもあったという。

この会議で残りの五花族の賛成を得ることができれば僕は晴れて二葉蔵家の当主になるというのだ。

果たしてそううまくいくのか。

疑問はあるがその会議に出席しないことにはなにも前進しない。五花族の彼らの権力に近づき、リルガミンに残された十六夜少年を取り戻す手段をみつけないといけない。



その御前会議が行われる前日に僕の屋敷に騒がしい訪問客が訪れた。

その人物は怪我をした子供をつれていた。

足を怪我したという少女はあやの先生の治療を受けることになった。

「近くに診療所があると聞いて来てみたら麻季絵の知り合いだったのか」

甲高いキンキン声でその女性は言う。

黒いチャイナドレスを着た小柄な女性だ。お団子頭に丸い顔がかわいらしい。

「麻季絵さんの知り合いですか?」

僕はきく。

「お、お師匠様!!」

びっくりした顔で麻季絵さんは言う。

パンデミックで両親と兄を失った麻季絵さんを救い、サバイバル技術や格闘技を教えたのが目の前にいる小柄でかわいらしい女性だという。見た感じすごく若くみえるけど確実に麻季絵さんよりは年上ということか。

でも十代後半といってもいいぐらいにこの人は若々しい。

「わしは沖ノ秋菜おきのあきなじゃ。よろしく頼む」

そう名乗るとぴょんと僕の胸に飛び込む。思わず両手で受け止めてしまう。ちょうどお姫様抱っこをする形になる。

「はー久しぶりに嗅ぐ男の匂いはたまらんのう」

くんかくんかと僕の首すじの匂いを沖ノ秋菜は言う。

間近で見るこの人はけっこうかわいい。白とはまた違うロリ感があっていい。

しかし本当に若く見えるな。いったい何歳なんだろうか。

「いつも麻季絵さんにはお世話になっています。僕は種子島豊久といいます」

僕は自己紹介する。

「あらためて自己紹介するぞい。わしは鳴滝流の師範で沖ノ秋菜じゃ。年齢は17歳のEカップなのじゃ」

わははっと沖ノ秋菜は言う。17歳って若すぎではないか。2歳で麻季絵さんの師匠になったというのか。それに胸の膨らみはほんのわずかでとてもEカップには見えない。

おっぱいソムリエの僕が見るところによるとせいぜいBカップといったところか。

じろりと僕は交互に腕の中の沖ノ秋菜の顔とおっぱいを見る。

たしかに顔の肌艶はいいけど17際はサバを読みすぎじゃないか。

「お師匠様は35歳でBカップではないですか」

麻季絵さんが言う。

35歳にはとても見えないぐらい若々しいな。というか子供っぽい。

「うるさいわい、不肖の弟子め!!」

僕の腕から飛び降りると沖ノ秋菜は麻季絵さんの顔面めがけて鋭い右ストレートを放つ。

見事命中して麻季絵さんはひっくり返って気絶する。

さすがは麻季絵さんの師匠だ。拳法の腕はかなりのものと思われる。けどやりすぎではないかな。

「わしはお主をきにいったぞい。しばらくやっかいになるぞ」

麻季絵さんの師匠である沖ノ秋菜は僕の屋敷に勝手に居候することを決めてしまった。


ということで怪我をした少女を家に送り沖ノ秋菜の歓迎会をすることになった。歓迎会を開けと沖ノ秋菜が騒ぐのでちょっとした宴会を開くことになったのだ。

麻季絵さんがローストビーフやチキンステーキをつくる。みゆきさんが得意のチラシ寿司を作ってくれた。

「ほうほうお主も異界の匂いがするのう」

くんかくんかと白の匂いを嗅いで沖ノ秋菜は言う。

白は苦笑いを浮かべる。

「豊久殿も異界の匂いがするぞ。わしは幽元道士ゆうげんどうしじゃからわかるのじゃ」

日本酒をぐびぐびとのみ、沖ノ秋菜は言う。

麻季絵さんの話では沖ノ秋菜は拳法や剣術だけでなく不思議な術も使えるのだという。


おおいに飲み食いし、僕たちは結局宴会を楽しんだ。涼子さんと沖ノ秋菜は気があったようだ。涼子さんはお酒が強いのでいいのみ友だちになりそうだ。宴会が終わっても二人でちびちびと飲みあっている。

僕は宴会を抜け出し、シャワーを浴びる。

お酒につきあわされたのでちょっとふらふらするや。

シャワーを出たあと、ふらつきながら廊下を歩いているとみゆきさんに出会う。

彼女はすでにお風呂を出たあとで、手にスポーツドリンクを持っていた。

「大丈夫ですか、マスター?」

ときく。

「ちょっと飲みすぎたかな」

僕は言う。

「これでも飲んで下さい」

手のスポーツドリンクを僕に差し出す。

「みゆきさんが飲ませてよ」

僕はみゆきさんに頼む。

「ええ喜んで」

スポーツドリンクを口に含んだみゆきさんはそれを僕の口に流し込む。みゆきさんの体温で温かくなったスポーツドリンクはとても美味しい。

「美味しいよ、みゆきさん」

「うれしいわ♡♡マスター♡♡」

ということで今夜のお相手はみゆきさんにお願いした。SSR資格者はそのありあまる精力を発散させなければ気が狂うかもしれないのだ。


生まれたままの姿になった僕たちはゆっくりと愛し合う。

僕の膝の上にみゆきさんはまたがり、深く深くつながる。

僕たちはつながったまま二人の時間を楽しんだ。

僕は前の世界でスーパーの店員をしていたみゆきさんとずっとこうなることを望んでいたのだ。ある意味夢がかなったということだ。

「マスター♡♡大好き♡♡夢の世界の私はずっとこうしたいと思ってたのよ♡♡」

僕の顔にご自慢のHカップおっぱいをおしつけてそう言う。

「僕もだよ。僕もみゆきさんのこと好きだよ」

僕は言い、何度もみゆきさんの体の中に愛情を注ぎこむ。僕たちは同時に快楽の頂点にたどりつき、痛いぐらいに抱きしめあう。

僕は見た。

みゆきさんの淫紋がぐにゃぐにゃと変化する。

それは青い狼の姿になった。

北欧神話に登場する伝説の妖獣である氷狼フェンリルだ。

快楽に溺れ疲れた僕たちは二人で抱きあいながら深い眠りについた。



翌朝に双葉幸村から連絡があり、御前会議は2月26日に決まったということであった。


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