第42話あやの先生の告白

頭にズキリと走る痛みで僕は目を覚ました。

はじめに目に入ったのは涙目のあやの先生の顔。彼女は誰が見てもわかるぐらいに心配そうな顔で僕をみつめている。

視線があうと満面の笑みにかわり、僕にブチュッと大人のキスをする。舌と唾液を存分に味わった後、あやの先生は唇を離す。僕たちの間に唾液の糸がつたい、それをもったいないとばかりにあやの先生は指でからめとり、飲み込む。


「目が覚めてよかったわ……」

ぐすんっと鼻をすすりながらあやの先生は言う。

僕は手に違和感を覚える。それを見るとあのリルガミンの宝珠であった。白と黒が複雑に入り交じった美しい宝珠だ。しかもその模様は石の中でゆっくりと動いていて、模様が定まることはない。

どういういきさつかは分からないが、このリルガミンの宝珠を現実世界に持って帰ることができたようだ。

「あやの先生……」

僕はあやの先生の秀麗な顔を見る。彼女はまたポロポロと涙を流す。

「愛しの君には話さなくてはいけないわね」

あやの先生は言った。



今から約十年前、大学を飛び級で卒業したあやの先生にミセステスラのエージェントが接触してきた。


世界を救う計画に参加しないかと。

世界を救う、その魅力的な言葉にひかれてあやの先生はその計画に参加した。

その計画こそリルガミン王国計画であった。

天才のあやの先生をメインにその計画は順調に進んだ。

共通意識世界という膨大なエネルギーの場を発見したミセステスラはそこに人間を移住させるシステムを作るようにあやの先生に依頼した。あやの先生は人がすめるような国をつくり、さらに精神だけをもう一人の自分アバターに憑依させ、そのリルガミンと名付けられた場に移送させる。

はじめてその移送に成功したとき、あやの先生は飛び上がって喜んだ。

ついに人類は老いや病気から解放されると。しかしすぐにあやの先生は気がついた。

そのリルガミンと名付けられた場には定数があったと。

すでに幾人もの資産家や政治家、科学者を送り込んだあとだった。

あやの先生はミセステスラに彼らの現実世界の帰還を提言した。

人数制限がある以上、計画を続けるには棄民と選民を繰り返さなければいけないからだ。

だが、ミセステスラはその提言を退けた。

「選ばれた優秀な人間だけがそのリルガミン王国に移住すればいいのだ」

それがミセステスラの答えだった。

さらにミセステスラはこのリルガミン王国が安定して存続できるようにあやの先生にシステムの構築を命じた。

しかもなんとミセステスラは移住した人々の元の体は放棄したというのだ。

システムを安定運用できなければすでに移住した人々は死んでしまう。

あやの先生は泣きながら、システムを完成させた。

それがリルガミンの塔とヨアナ王妃だ。

自身をモデルにAIをつくり、それにシステムを運用させた。

しかし、人工的につくられた魂では共通意識世界の安定は難しかった。生身の人間の魂が必要なのだ。

ミセステスラはどこからかその魂を用意した。その男性は体に無数の弾丸を受けて、まさに死にかけていた。

放っておけば彼は死んでしまう。

死んでしまうよりはリルガミン王国の管理者をまかせてはどうか。

悪魔のようにミセステスラはささやく。

あやの先生はかなり迷ったあげくヨアナ王妃にその人物の魂をインストールした。

その男性こそ六波羅清盛だったのだ。

そしてさらにリルガミン王国を守るために優秀な遺伝子を持つ人物をモデルにセキュリティを担うキャラクターを作った。偶然だが、その優秀な遺伝子を持つ人間とは涼子さんのことだった。

だから、あのアラクネが涼子さんにそっくりだったのか。

リルガミン王国が安定運用されるのが、確認されたあと、あやの先生はミセステスラから去った。棄民と選民を繰り返す作業に嫌気がさしたのだ。


「アラクネと戦っているときにアドバイスをしてくれたのはあやの先生なんですね」

僕は言う。

「ええ、ヨアナ王妃は私の分身みたいなものだからね。グラディウスのコントローラーになんとかアクセスしてヨアナの声を借りたのよ」

あやの先生は言う。

「ありがとう、あやの先生」

僕はあやの先生の豊満で温かい肉体を抱きしめる。

「やっぱり、十六夜君は目を覚まさないわ。他の三人は起きたのだけどね」

あやの先生は言った。

十六夜少年の魂はあのリルガミン王国に存在する。現実世界には肉体があるのみだ。

春風さんが目覚めない十六夜少年にずっとつきそっているという。

どうにかして十六夜少年の魂を取り戻したい。だけど、絶望的な報告をそのあともたらされる。

ドタドタと白に明日香とキララが僕の部屋に入ってきた。


「お兄ちゃん、おはよう」

そう言いチュッと白は僕にキスをする。

「わたしくも♡」

とキララ。

「私も♡」

それは明日香。

三人は次々にキスの嵐を僕におみまいする。あはっここは天国かな。三人の美少女に囲まれて顔中にキスされるなんて。この世界にやってきてよかったよ。

ある程度キスをして、落ち着いたのか白が僕にかたる。

「あのMSXスーパーターボはもう使えないよ。ショートしちゃったんだ。たぶんだけどリルガミン王国が一度崩壊しかけたショックだと思うんだよね」

と白が報告する。


あの一見古いパソコンは今のところリルガミン王国へとアクセスできる唯一のマシンであった。そのパソコンが壊れた以上、リルガミン王国へと行く手段がなくなったということだ。あのマシンはこの世界に一台しかない貴重なものだ。

「しゃくだからね、ログアウトの瞬間にリルガミンの宝珠といくつかアイテムを持ちかえったよ」

白は言う。

よく見るまでもなくキララはあのセクシーな魔女の闘衣をきている。むにゅっと胸の谷間をよせて僕に推定Gカップのおっぱいをみせつける。見事な乳袋だ。

さらに明日香が僕に両手に持つ二本の短剣を見せる。それは南斗北斗の短剣だ。

さらに魔棍ナインドラゴンもこちらにもってきたという。

「そうか、ありがとう白」

僕は白の頭をなでなでする。

白はえへへっと照れ笑いする。



すでに時刻は午後二十二時になっている。僕たちは丸一日、あのリルガミンの世界にいたのだ。さらに僕は特技を使いすぎ、疲労の極致にある。麻季絵さんの用意してくれたリゾットを食べて、僕たちは一度休むことにした。これからのことは朝話し合って決めようということになった。どうにかして十六夜少年を取り戻す算段をつけないと。

その夜、疲れきっているのに僕はあやの先生の希望で彼女を愛した。疲れきっているのに僕はあやの先生の体にたっぷりと愛情をそそぎ込む。

快感で脳が震えるよ。

「愛しの君、この世界に残ってよかったわ。あなたに出会えたもの」

僕の体をあやの先生は力いっぱい抱きしめる。

「過去に何があったとしても僕はあやの先生を離しませんよ」

僕もこの豊満でエロくて優しいあやの先生から離れたくない。

「うれしいわ♡♡」

僕たちは離れないように強く抱きしめあい、眠りについた。




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