第29話四方堂明日香との死闘

まず戦いの口火をきったのは小笠原夏子さんであった。銀色に輝くでかい銃を正面に構えると連続して2発の弾丸を発射する。

なんと反動で小笠原夏子さんは2メートル後方にさがる。地面には彼女がつけたわだちのような後がはしる。

2発の弾丸は見事に四方堂明日香の左右にいる戦闘員の心臓のところに命中する。防弾チョッキのおかげだろうか、その二人は後方にふきとぶだけであった。

この戦い殺人が目的ではない。相手の戦力をそげばいい。

どちらかのトップの身柄が確保されれば敗北だ。それは僕であり敵は四方堂明日香である。そしてトップである四方堂明日香は自ら先陣にたつ。なら僕も負けてはいられない。背後で震えているわけにはいかない。ただ僕の戦闘力は皆無にちかいけどね。


さらに小笠原夏子さんは愛銃ジークフリードの引き金をひく。狙うは四方堂明日香の額と心臓だ。夏子さんはやるきまんまんだな。

だが、発射された弾丸は四方堂明日香がもつ巨大な日本刀によってはじかれる。

おそらく小笠原夏子さんの目の動きや指の動きで弾道を読んだのだろう。

すごいな、アニメなんかでよくみる設定だけど本当にする人がいるなんて。

小笠原夏子さんはチッと舌打ちする。


四方堂明日香は左足を大きくひき、一気に地面をける。文字通り瞬時に距離をつめる。

その太刀の切っ先を僕にむける。

あと数センチで僕の顔にその太刀の切っ先が届くところでピタリととまる。

八丈美冬さんがスパナでその太刀の刀身をうけとめたのだ。

「我が時宗をとめるか」

にやりと四方堂明日香は微笑む。やばいぞ、こいつはきっと戦闘狂だ。目がいってしまっている。

「あらよっと!!」

八丈美冬さんが長い足で蹴りをはなつ。

ほぼ同時に小笠原夏子さんも蹴りをはなつ。

二つの足が四方堂明日香の腹部に命中するが彼女をわずかに後退させるだけだ。


その間にも他の戦闘員が半月状に展開して、僕たちを包囲しようとする。

「うごかないで!!」

僕は言葉に意思をこめる。彼女たちの何人かは足をとめる。

「「はい♡♡」」

僕の言葉を聞いた何人かは銃を捨て、そこから動かない。

ピロリンッと脳内にまたあの音がする。おそらくこんなタイミングだけどなにか派生特技スキルを獲得したのだろう。

動きを止められたのはわずかな数だ。包囲網はすぐに再構築され、展開される。


それでは戦略的一時撤退だ。

僕たちは後ろの玄関に向かって走り出す。

「逃がすか!!」

眼を充血させ、四方堂明日香は太刀時宗を振り上げ僕たちに斬りかかる。

僕たちは振り向くことなく走る。

ダンッという銃弾の発射音がする。

玄関からみゆきさんが狙撃したのだ。

四方堂明日香の心臓めがけて弾丸は発射される。すさまじい反射神経で四方堂明日香はそれをはじきかえす。

でもこれで足止めは十分だ。

僕たちは転がるように玄関内に逃げ込む。

白が両手で玄関をしめる。

かんぬきをかけ、白が玄関の扉に手をあてる。複雑怪奇な紋様の魔方陣が扉にきざまれる。

「絶対防御の魔法をかけたよ。これで24時間はこの扉は誰にも破られない」

ふーと白は座りこむ。

この魔術のために白はためていた魔力のほとんどを使ったという。魔力回復には僕の精力が必要なんだけど今は白とエッチしている場合ではない。

この戦いが終わったらたっぷりとかわいがってあげるからね。

僕は白にありがとうのキスをする。

「ふひぃ♡♡ここはボクにまかせて他のところの救援に向かってよ」

白は扉に背中をあずけて僕たちに言う。


ちょうどそのタイミングであやの先生が巨乳をゆらしてかけよってくる。

「キッチンの勝手口に敵の戦闘員があつまってるわ」

あやの先生が言う。彼女の特技万里眼で集結する四方堂明日香の部下たちが見えるという。

そのキッチンを守るのは麻季絵さんとキララだ。僕たちは彼女らの応援にむかう。白のことはあやの先生に一時まかせる。


キッチンに向かう僕の手を白はつかむ。

「お兄ちゃん、新しい派生特技スキルを手に入れたね。その特技は言霊。言ったことを現実化できる。その内容によっては魔力の消費がはんぱないから気をつけてね」

白は言う。

「わかったよ、ありがとう白」

僕は言い、麻季絵さんの応援にいく。



ちょうど勝手口のドアを蹴破られて戦闘員が侵入を開始していた。

迎え撃つ麻季絵さんはチャイナドレスを着ていた。スリットからのぞくむっちり太ももがエロい。プリプリ桃尻もこれまたエロい。

その手にはなにか棒状のものが握られている。ヌンチャクかな。いや、一本多いぞ。あれは三節棍だ。

背中あわせにキララが立っている。彼女は両手にバタフライナイフを持っていた。右手にもつバタフライナイフの刃をなめている。

キララもやるきまんまんだな。


戦闘員の一人がライフルの銃口をむけ、引き金に指をかける。それよりも速く麻季絵さんの三節棍が空をきる。三節棍は流星となり、その先端は戦闘員の顔面に命中する。

流れる動作で三節棍を返し、二人目の脇腹に命中させ、戦闘不能とさせた。

キララも戦闘員の一人にとびかかり、バタフライナイフでめった刺しにする。

「キララ、あんまりキッチンを汚すなよ。麻季絵に怒られる」

麻季絵さんが言う。

なにか変だぞ。

麻季絵さんはいつもふにゃふにゃと優しい話し方なのに今の麻季絵さんは滑舌よくハキハキしている。どこか男っぽい話し方だ。

「ダーリン、私とは初対面だね。私は麻季絵のもう一つの人格麻里亜マリア以後よろしくね」

麻季絵さんこと麻里亜は三節棍を振り回し、次々と戦闘員をうちのめしていく。

八丈美冬さんもスパナで強烈な一撃を戦闘員の一人にくわえて気絶させる。

小笠原夏子さんが問答無用にジークフリードを発射して戦闘員数名をたおしていく。

あっという間にキッチンに集まった戦闘員をすべて無力化した。

麻里亜さんの話では二重協奏シンフォニーの特技で眠っていた自分が覚醒することができたという。

麻季絵さんのもう一つの人格である麻里亜はパンデミック初期の混乱期を生き抜くために作られた人格だという。麻里亜は師匠から拳法を学び、それを極めているのだという。


戦闘を終わらせた僕たちのところにあやの先生がやってきた。

「今度は二階に侵入してきたわ。涼子さんを助けにいきましょう」

あやの先生は言った。

二階は涼子さんが一人で見張りをしている。

僕たちは涼子さんの救援のために二階へと向かった。

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