第27話四方堂明日香の宣戦布告

三千院キララの突然の訪問から1週間が過ぎた。まるで嵐のような一幕であった。僕の魅了チャームの能力により彼女は完全に堕ちたはずだ。ほどなくして僕のもとにやってくるのは確実だと思える。何せ彼女は独断で僕に1億円もの巨額の資産をさしだしてしまった。なんらかのおとがめがあっても良いだろう。


時節はもう年末となっている。

「この世界にもクリスマスみたいなのはあるのかな?」

僕は白にきいた。

社畜の僕にとってクリスマスなんてものはただの年末に周囲が騒がしくなるな程度だったが、今は環境がまったく違う。今年はファミリーと楽しく年末年始を迎えたいと思う。

「あるにはあるよ。パンデミック以来規模はかなり縮小されてるけどね。聖者祭アバタールってのがあるわよ」

かつて人の罪をすべて背負いなくなったという聖者を奉るためのイベントがそれにあたる。僕たちの世界のクリスマスにかなりちかい。年末に家族が集まり、ケーキやチキンなどのご馳走を持ち合い一年の労を皆でねぎらうのである。

今年は麻季絵さんに頼みケーキでもつくってもらおうかな。

クリスマスみたいなのを美女たちにかこまれて過ごせるなんてこの世界にやってきて本当によかったな。


さて三千院キララによって不意にもたらされた1億円の使いみちだ。これを無駄にはできない。これは希貨だ。ただ贅沢をするために使うわけにはいかない。

「この近くに使われていないレストランがあるのよね。私そこで貧しい人たちのためのレストランを開きたいの」

科学技術などはミセステスラの力により劇的に発達したが、貧富の差は決して解消されたわけではない。

麻季絵さんの提案はそのレストランで明日の食事にも困る人たちにものすごく安い値段で食事を提供したいというのだ。

無料ではなく安くともお金をもらうのが重要だと麻季絵さんは言う。

無料だと人はむしろ傲慢になるのだ。来てもらいたくない人が来て本来必要な人に行き渡らないかもしれない。

ただほど怖いものはないのだ。

少しでもお金をもらうことによって人としてのプライドをたもてるのだと麻季絵さんは言う。

僕は麻季絵さんの提案を受け入れることにした。人の役にたちたいという麻季絵さんはえらいな。また夜の相手をして褒めてあげようかな。


次にあやの先生が提案する。

僕の健康維持管理だけではどうしても時間があまる。そこであまった時間を利用して涼子さんと低額の診療所を開きたいというのだ。

一度パンデミックにより崩壊した医療制度はまだその深い傷を背負っている。

ミセステスラによって再生医療や今まで治癒不可能であった病気の新薬などは開発されてはいるが、それらをすべての人々が享受できるわけではない。

人口減のこの世界では人口の維持と増殖が最優先であるため、貧しい人々への治療はおざなりになっている。

風邪や怪我をしても病院にいけない人々はごまんといる。

それらの人々にたいしてあやの先生は低額で治療を施したいというのだ。

ここでも低額というのがポイントだ。

やはり無料ではない。

お金をもらうことによって患者の人としての尊厳を保とうというのだ。


僕は二人の提案を受け入れようとする。

1億円もあればまあこれくらいはこなされるかな。細かい経理関係は白にまかせよう。白は国防軍の情報将校なだけあってこういうのは得意だ。



さっそくその日の午後に僕と麻季絵さんとそれに白でレストランの予定されるところに向かう。けっこう汚れているが建物自体はしっかりしていて、掃除をしていろいろ工事をすれば大丈夫かな。

またあの電気工事のお姉さまがたに活躍してもらおうかな。

あのお姉さまがたの親方は八丈美冬はちじょうみふゆといい、豪快で世話焼きな人なんだよな。あとビールがなにより好きだったかな。今度お歳暮がわりにビールでも送ろうかな。

この元レストランは一年前まで使われていて、白がすでに手配して電気はつながっている。なんで店内は暗くはない。

エアコンなんかはつながっていないのでかなり寒い。

これもなんとかしないとね。

と店内をいろいろみてまわっていたらガタゴトという異音が響く。


えっ誰かいるぞ。

白がすぐに僕の前に立ち、麻季絵さんが背後にまわる。

美少女と美女にサンドイッチされたな。

って喜んでる場合ではない。

明らかに不審者がいるぞ。

僕たちは警戒度をあげる。

ふらりふらりとその人物はたちあがり、のそりのそりと僕たちのほうに歩みよる。


服と髪が汚れてるがその人物は三千院キララであった。

よろよろと近づき、僕の顔を見ると地面に倒れこむ。

僕はあわててかけより、彼女の体をささえる。むふっ14歳とは思えない柔らかな肉つきだな。うんっでもちょっとにおうな。

たぶんだけど何日かお風呂に入っていないようだ。

「ああっなんという運命でしょうか。種子島様……」

あの傲慢なお嬢様が絵に描いたように弱っている。そしてお腹を激しくグーとならす。

「わたくし、三千院家を追い出されてしまいましてね。でも後悔はございませんわ。あのお金は種子島様に役立ててるもらうほうが本望でしょう」

こうもはやく彼女に再会できるとは思えなかったな。

これは堕とした僕にも責任はある。

彼女の面倒はみないとね。

金髪巨乳美少女なんて僕のファミリーにはいないからね。

「それはたいへんでしたね」

僕はキララの頭をなでる。ちょっとべっとりしているので何日かお風呂に入っていないのだろう。

「はー種子島様に抱かれてキララ幸せ♡♡」

クンクンとキララは僕の体臭をかぐ。

「よかったら僕の家にきませんか。部屋もあまってるし」

僕は言う。

「よろしいのですか?」

「ええ、もちろんですよ」

僕は言う。

白が持っていたチョコレートバーをキララに差し出す。キララはそれをばりばりとあっという間に食べてしまう。

「ほらいそいで食べるから口にチョコレートがついてますよ」

僕はキララの口についたチョコレートをなめとる。甘くて柔らかいな。これは将来たのしみだ。

「種子島さまとのキス♡♡キララ孕んじゃう♡♡」

いやいやキスしたぐらいで妊娠しないよ。お嬢様の性知識大丈夫かな。

キララは僕の腕の中で気絶してしまった。すやすやと眠っている。

その姿を見て白も麻季絵さんもクスクスと笑う。


ある程度そのレストランの下見を終えた僕たちは屋敷にもどる。

屋敷でキララはお風呂に入り、麻季絵さんの美味しいごはんを食べてひと心地ついたようだ。

キララは僕の屋敷でメイドとして働くことになった。

金髪巻き髪で巨乳のメイドなんてたまらんぞ。

白が選んだメイド服はミニスカートで胸元がざっくりと開いていておっぱいの谷間がきっちりと見える。しかも足は白タイツに黒いローファー。これもかわいいぞ。白わかっているじゃないか。

キララは麻季絵さんの直属の部下となる。キララは意外にも手先が器用で料理や掃除なんかはやればやるほどマスターしていく。

僕が金髪巻き髪をなでてあげるとえへへっ♡♡と喜んだ。

僕のハーレムファミリーにまた新しいメンバーが増えた。


そしてさらに数日が過ぎ、聖者祭が明後日までと迫った年の瀬のその日、白がタブレットを持って僕のもとに駆け寄り、抱きつく。

「お兄ちゃん、たいへんだよ。あの四方堂明日香から宣戦布告されたよ!!」

と白は言った。

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