第22話涼子は語る

この国の権力を握る五花族とは一乗谷いちじょうだに二葉蔵ふたばくら三千院さんぜんいん四方堂しほうどう五丈原ごじょうげんの五つの家のことをさす。

この五花族の当主全員が僕と同じSSR資格保持者だというのだ。

人口減のこの社会で子供をつくる能力に特化した人間が権力を握るようになっていったのだと涼子さんは語る。

人口減により文明の崩壊はじわじわと迫っており、世界では長い歴史をもつ市街がいくつも放棄されたいうのだ。

そしてこの似顔絵の人物は五丈原孔明の五年前に行方不明になった娘である涼香すずかにちがいないと涼子さんは語る。


「涼子さんはもともと五丈原家の女性たちを束ねる地位にいたのよね」

あやの先生は言う。

だから五崎義孝にグランマザーとよばれていたのだ。

「でも私はあのわがままな人たちがいやになってね、五丈原家を出たのよ」

涼子さんは言い、ブラックコーヒーを飲む。

涼子さんは五丈原孔明の姉として彼の妻となる人々をまとめていたが、当主孔明のあまりの権力にたいする欲望が強く、それがいやになり家を出て、看護師をしていたのだという。

彼女が家を出てくれたおかげで僕と出会えたのだから、なんだか皮肉な感じだ。


「そしてその涼香はいわゆるデザインベイビーだったのよ」

涼子さんは言う。


七日病のパンデミック以来、人類は社会の維持のため、あらゆる科学技術を発展させた。

核融合炉の開発、農業や畜産業の完全自動化、燃えにくい燃料を開発し飛行船の運用を一般的にしたりと枚挙にいとまがない。

その科学技術を劇的にひきあげた科学者集団を「ミセステスラ」と呼んだ。

かの天才科学者テスラからその名をとったと言われた。

あやの先生はそのミセステスラから勧誘をうけたことがあるという。

でも僕のことを好きになっていたあやの先生は参加をことわったというのだ。

あやの先生が科学者としていかに優秀かがうかがわれる。


そのミセステスラが手をだしたものに遺伝子操作がある。七日病をはじめたとした病気に強い特性をもつ子供が産まれることが人類社会に必須となった。

そのための遺伝子操作である。

それまでの倫理観や道徳などは人類滅亡の危機の前に捨て去るしかなかったのである。

そして産まれたのが涼香だと涼子さんは言う。


「あの娘は不思議な子だったわ」

と涼子さんは言う。

見えない誰かとしゃべったり、手を使わずに物を動かしたりとだ。

いわゆる超能力をもっていたのかもしれない。


「それがあの人形使いの正体なのね」

みゆきさんは言う。


「まああくまで仮定の話だけどね」

白は言う。

僕の記憶から魔術を使って音声を再生し、それをもとに似顔絵を作成したものは証拠能力はないにひとしい。


「ということは女神たちのたそがれと五花族がうらでつながっているとみていいかもしれないわね」

あやの先生が紅茶をすする。


五花族の連中が権力を維持するために他の敵対する可能性のある男子を女神たちのたそがれを使い排除しているのかもしれないというのがあやの先生の意見だ。

まあ十分ありえるはなしだ。

五花族の権力基盤が子供をつくるという生物的能力に頼らなければいけない以上、僕のような五花族にくみしない男性は邪魔者以外の何者でもない。

敵対していると思っていた組織が裏でつながっているというのはよくある話だ。

まったくいやになっちゃうね。


「でも人形使いの手がかりだけでも取得できたのは何よりよ。今までは手がかりなんか何一つなかったのだから」

みゆきさんは言った。

「五花族の連中が証拠をもみ消していたとも考えていいわね。だから証拠なんかなかったのよ」

白はホットミルクを美味しそうに飲む。

後日、その似顔絵を公安13課の小笠原夏子警部に渡そうということになった。



その日の夜、僕は涼子さんの部屋にむかう。

涼子さんはあのネグリジェ姿で僕を出迎えてくれる。

すでに淫紋は白の手によってその細い背中に刻まれていた。もう契約済みなのである。

僕は手を伸ばして涼子さんの細い体を抱きしめる。

涼子さんも長い手をのばし、僕をきつく抱きしめる。彼女の火照った体は温かくて気持ちいい。

そのままベッドに倒れこむ。

大人のキスを繰り返し、涼子さんは僕の気持ちいいところを指でせめたてる。

僕は女の子みたいに恥ずかしげもなく声をだす。

こんなに自分をさらけだすのは涼子さんにたいしてだけだ。

僕は彼女のことをもっとも信頼している。

童貞を卒業させてもらったというのもあるしね。

僕はやさしくて母性を感じる涼子さんのことが大好きなんだ。

涼子さんは僕にとって母親であり姉であり恋人でもあるのだ。


「あなたにいやがらせをしている五花族につながっている私のことを嫌いになったりしないの?」

僕の愛撫に如実に感じながら涼子さんは言う。

「涼子さんは涼子さんですよ。背景がどうあれ、僕は涼子さんを信頼しています。だからお互いの信頼を高めるために愛し合いましょう」

僕は言う。

「素晴らしい理屈ね。私はあなたを裏切らないわよ。だってあなたと離れたらこんなに気持ちいいことできなくなるもの。私、実はあなたのとりこなのよ」

うふふっと妖艶な笑みを浮かべて、涼子さんは僕を受け入れる。

「ああっ♡♡なんて素晴らしいの♡♡こんなの味わったらもう離れられないわ♡♡」

涼子さんはあまりの気持ちよさのためだろうか、僕の背中に爪をつきたてる。あまりに強く抱きしめるために爪が食い込みかなり痛い。

痛いけど気持ちいい。

それだけ涼子さんが感じてくれているのならうれしいかぎりだ。

僕は体の中にあるすべてを涼子さんの体の中にはきだす。それをあますことなく涼子さんは受け入れる。

吐き出されることによる快感に意識がとびそうだ。

「今日もいっぱい出してくれてありがとうね♡♡涼子のお腹のなかはあなたの愛でいっぱいだわ♡♡涼子幸せ。もうあなたから絶対に離れないからね♡♡死ぬまで一緒よ♡♡」

死ぬまで一緒なんてかなり重いけどそれだけ愛が深いのかと思うと幸せでうれしいな。

僕たちはお互い抱きしめあいながらその日は眠りについた。

毎日だれかとエッチして抱きしめあいながら寝ているな。もう一人でなんて寝れないや。


翌朝また白が涼子さんの手をとりステータスをよみこむとひゃ~と驚く。

涼子さんはすでに身体強化の特技スキルを得ていたがさらにそれを発展させた騎士ガヴェインというのを手に入れた。

それは日の出から日没までの間ならば身体能力を3倍に強化できるというものだ。

「すごい力ね。これでもっとあなたの役にたちたいわ♡♡」

涼子さんは言った。

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