第12話一肌脱いでくれますか?

その小太りな少年は口元をチョコレートで汚していた。

お菓子を食べながらゲームをするのはコントローラーが汚れるのでよくないよ。

僕はこういうときはお箸でポテトチップスを食べるけどね。

コントローラーを汚さないのがゲーマーとしての矜持だ。


「な、なんだおまえたちは!!」

キンキン声で小太りの少年は言う。

濁った瞳で僕を認めている。

「この部屋に入る許可をした覚えはないぞ!!」

またあのキンキン声だ。

「あっおまえは!!」

少年は淡路みゆきを指差す。

どうやら顔見知りのようだ。

「おまえは叔父さんに頼んで飛ばしたはずなのに」

さらにつけ足す。


「あら、五崎義孝いつざきよしたかお坊っちゃま。こんなに早く再会できるとは思いませんでしたわ」

淡路みゆきは言う。

「知り合いなのかい?」

僕はきく。

「前の警護対象でした。豚の物まねしながらオナニーしろなんて意味不明なこと言ったからお尻ペンペンして差し上げたのよ」

淡路みゆきは言う。

いくら男女比が1対10000になったからと言っても何でもしていいわけではない。しかし、圧倒的に男子が少なくなったこの社会でわがままいっぱいに育ったこの少年にはわからないのだろう。

男女にはお互いの信頼関係が必要なのだ。信頼関係があるからこそマニアックなプレイも可能だと思う。


この施設の所長である少年は五花族に連なるものでそれに手をあげた淡路みゆきは本来なら懲戒免職もやむなしであったが、そうはならずに僕の警護をまかせられたという。

ただたんにやめさせずに僕のところに送り、共々嫌がらせしてやろうというのがやつらの考えだろう。

本当に性格悪いな。


「本当にたちわるいわね、あの人たちは」

涼子さんが言う。

その声を聞き、少年は顔を青ざめる。

「ぐ、グランマザー!!」

忙しい子供だな。

涼子さんの端正な顔を見て、彼女をグランマザーと呼んだ。それはどういう意味だろうか。

「義孝、たかだかC資格者なのにプライドだけは人一倍なのね。五丈原家につながる血統だけしか価値のない子なのに。まともに教育されずにこんなところに閉じ込められてかわいそうな子」

あわれむ表情で義孝という少年の顔を涼子は見る。

蔑む顔というやつだ。


「僕はかわいそうな子じゃない」

かんしゃくをおこしてコントローラーを投げつける。

僕はそれが涼子さんに当たる前に手をのばして受け止める。

本当にゲーマーのはしくれにもおけないやつだな。


「それじゃあ、アクセスコードを教えてもらいましょうか」

白は言う。

僕の精子を受領させるには五花族が使用するコンピュータにアクセスし、この施設をはじめとする管理施設のコンピュータに管理を命じなければいかないというのだ。

そしてそのアクセスコードを知っているのは五花族のものだけだという。

ちなみにそのコンピュータは三つあり、相互に監視管理をしているのだという。


「嫌だね、どうしておまえたちなんかに教えなくちゃいけないんだ」

小太りの少年は言う。

彼なりの抵抗なのだろう。

それを聞いた警備員が腰のホルスターからピストルを引き抜き、銃口を義孝少年のこめかみにあてる。

義孝少年は左右からピストルを突きつけられる。さらに警棒を構えた警備員がその先を義孝少年にむける。

副所長が義孝少年の頬をつかむ。

「さあ、所長。このお方に教えるのです。怪我したくなければね」

それはさっきまでの僕にたいしてとっていたものとは違う冷たいものだ。

おそらく産まれてはじめて覚える死への恐怖に彼はおもらししてしまった。

泣きながらふるえている。


「はああっ、五丈原家につながるものとして情けない。だがら五丈原の姓もなのれないのよ」

顔を左右にふり、さらに涼子さんはあきれかえる。


「わ、わかった教えるよ。グラディウスへのアクセスコードは上上下下左右左右BAだよ」

泣きながら義孝少年は言う。案外簡単なコードだな。まああまり複雑だとこの少年には覚えきれないうことか。


白が僕の手からコントローラーを受け取るとそれを事務机のパソコンにつなげる。なにやらキーボードでカチャカチャと作業し、コントローラーで入力する。

「これで差し止められていた政府からの支度金が入金されたわ」

にこりと白が微笑み、僕にタブレットを見せる。

僕の預金残高は1000万円になっていた。


「それではさっそくだけど精子を提供していただきましょうか。よろしければ私がお手伝いします」

副所長が言う。

私も私もと他の警備員が手をあげる。

一回の精子提供でSSR資格者ならば100万円振り込まれるのだという。前の世界では一人でことを行い捨てていただけの精子がこの世界ではなんと100万円で買い取ってくれるというのだ。

夢のような世界だな。


さて、それではお手伝いを誰に頼もうかな。

副所長もそこそこ美人だし、警備員の女性たちもけっこう若くてかわいい子たちばかりだ。

でもこここは。


僕は淡路みゆきの気の強そうなきれいな顔を見る。そしてシャツがパツパツの巨乳を見る。

「みゆきさん、一肌脱いでくれませんか?」

僕は深く頭を下げる。

気が強く、プライドの高い彼女にはちゃんと頭を下げてお願いしないとね。

「ええかしこまりました♡私でお役にたてるなら♡」

いつもハキハキしたしゃべりかたのみゆきさんが、あの甘い甘えた声になったぞ。これは好感触だ。

もう一度僕はみゆきさんの口とたわわなおっぱいを見る。

「では奥の部屋で一肌ぬぎますね♡♡」

みゆきさんは僕の手を引き、所長室の奥にある倉庫のような部屋につれていく。手にはいつの間にか精子をいれるビーカーが握られていた。



みゆきさんの人肌は本当に素晴らしかった。

ありがとう、みゆきさん。はー気持ち良かった。あまりに気持ちいいので脳がふるえていてぼーとするな。

僕がズボンを履きなおしているとみゆきさんは胸元を大きくあけたまま、頬を紅潮させている。ハアッハアッと荒い息をはいている。

ちょとつかれたかな。

たしかにお口でお仕事をするのは息苦しいよね。僕のは特大サイズになっちゃったし。ごめんね、みゆきさん。でも気持ち良かったよ。

本当にありがとう。

「ありがとう、みゆきさん。とても良かったよ。またお願いしますね」

僕は言い、みゆきさんの頭を撫でる。

「お役にたてて光栄ですわ♡♡いつでもみゆきのお口とおっぱいに仕事させてくださいね♡♡」

はだけた胸元のシャツのボタンを直しながらみゆきさんは言う。


ドアを開けると白衣を着た研究員があらわれ、ビーカーになみなみと注がれた精液をうやうやしく持ち、引きあげていった。

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