第9話五花族のいやがらせ

退院が決まった僕は政府が用意した邸宅に引っ越すことになった。

僕個人の荷物はわすがな着替えのみなので、淡路みゆきの運転する車で移動することになった。車は六人乗りのアウトドアタイプだ。

僕が住む予定の洋館はこの病院から車で一時間ほどの所にあるという。

淡路みゆきにタブレットに写るその洋館の画像を見せてもらったが、なかなか落ちついたデザインのおしゃれな建物だ。

ここに住めるのかと思うとワクワクするデザインだ。

ここを拠点にハーレムファミリーを結成しようと密かに僕は考える。


見送りに佐渡あやの先生と五島涼子看護師長が来てくれた。

あやの先生なんか傍目を気にせずにボロボロと号泣した。

きくところによると医師資格を取得してから、ずっと僕を看ていてくれたのだという。誰よりも思い入れがかなり強いようだ。

僕もこのセクシー女医とわかれるのは寂しい。どうにかして彼女をハーレムにいれる算段をしないと。

五島涼子看護師長も目を赤くして見送ってくれる。

「本当に元気になってよかったわ」

五島涼子看護師長は鼻をすすりながら、言う。

「お元気で……お体に気をつけて……」

ぐすんぐすんとあやの先生はなきながら言う。

女性にここまでしたわれるなんて幸せだな。


別れを惜しみながら僕は車に乗る。

あやの先生と五島看護師長はみえなくなるまで手を降ってくれていた。


「なあ、白。あの二人をどうにか僕のそばに迎えることはできないかな」

僕は後部座席でとなりに座る白こと喜界白峰に訪ねる。

バンドルを握るのは淡路みゆきだ。

彼女のドライブテクニックは素晴らしく、まったく揺れない。

車はスムーズに山道のカーブを曲がっていく。

「彼女らは一応公務員だからね。いますぐってのは難しいかもね。お兄ちゃんがSSR資格者として功績をあげれば融通はきくようになるかもね」

白は僕のことをお兄ちゃんと呼んでいる。

なんだか妹ができたみたいでかわいいな。

功績をあげるとはすなわち子供をつくり、人口減に歯止めをかけることだ。

体外受精用に精子を提供するだけでも政府からかなりの協力金が発生するとのことだ。

誰かを妊娠させるのか。

僕もいよいよ童貞卒業か。

顔が勝手ににやにやするな。

僕がエロい妄想に思いをはせていると淡路みゆきが着きましたという。


さああのタブレットでみたおしゃれな洋館でこの世界での新生活が始まるぞ。

僕が意気揚々と車を降り、視界にはいるものに驚愕を覚えた。

そこにあるのはあのタブレットにあった世界的に高名な芸術家がデザインした洋館とはとても思えないものだった。

「こいつはやられたね」

白が言う。

「そ、そんな住所はあってるはずなんですけど……」

淡路みゆきは何度もタブレットのマップをみて首を上下して確認する。


僕の目の前にあるのはあの画像とは似てもにつかない廃墟寸前の建物だ。


「こんなあからさまないやがらせをうけるなんてね。お兄ちゃんは五花族にもう嫌われちゃたのね」

あきれ顔で白は言う。

五花族とはこの国の実質的に支配する五つの名家のことだと白は説明した。

その五つの家の長がこの国に五人しかいないSSR資格者だというのだ。

人の出生を維持管理できるこの五つの家がこの国を実質的に牛耳っているというのだ。

彼らが権力をもてる根本的理由は子供をつくれるという非常に動物的なものだ。それを脅かすのはやはり同じような動物的特徴をもつものである。

どうやら僕の存在はその権力を脅かすかも知れないというのが白の推測だ。

「まあ、暗殺されないだけましかな」

と白は言う。

「豊久さんは誰にも傷つけさせません」

巨乳の横にぶら下がるオートマチックのピストルを撫でて、淡路みゆきは言う。


他にいくところもないのでとりあえず、僕たちはその洋館にはいる。

建物の中は埃っぽく何年も掃除されていないのがわかる。

運が良かったのは水道、電気が使えるとのことだ。

この世界は核融合炉が実用化されていて、ほとんどの家庭のエネルギーは電気でまかなわれているという。

お湯とトイレが使えるのは良かったと淡路みゆきが巨乳を撫で下ろした。

部屋は多いが、使えそうな部屋は少ない。

大きなベッドがある部屋をみつけたのでそこを三人がかりで掃除した。

「豊久さんは休んでいただいても良かったのに」

壁にはられているクモの巣を払いながら淡路みゆきは言う。

「一人だけサボってられないよ。それに体を動かすのは楽しいし」

いやいや働くのはつらいけど、こうしてみんなで一緒に動くのは楽しい。

ほんの半月前までは寝たきりだったのだ。これもいいリハビリだ。


どうにかこうにかそこで一晩すごせるぐらいには掃除ができたので、淡路みゆきが車を飛ばして街に食料品や日用品を買いに行ってくれた。

淡路みゆきが買ってきたピザとフライドポテト、コールスローという夕ごはんを食べる。

病院では一人で食事していたのでこうしてみんなでご飯を食べるの楽しい。


やがて夜になり、この日は休むことにした。

明日のことは明日考えよう。

今日は掃除なんかをして疲れた。

僕がベッドで寝ようとすると淡路みゆきは毛布をからだにまいて床に座る。

白なんかは遠慮なく僕に抱きついている。

「もう冬だからね、お兄ちゃん抱きあいながら寝よう」

白は毛布を僕にかけてギュッと抱きつく。

白の体は細いが温かくて気持ちいい。

かわいいやつだな。もともと猫だし、人にくっくつのがくせなのだろう。

「良かったら淡路さんもこっちにきませんか?」

淡路みゆきを誘ってみる。

彼女は肉付きのいい巨乳なので温かそうだ。

「そんなところで一人でいると風邪ひきますよ」

僕は言う。

「そ、そうですか。そうですよね。これは風邪をひかないようにするためです。けっして添い寝がしたいわけではありません」

妙な理屈をいい、彼女もベッドに横たわる。

よほど疲れていたのか、横になるとスースーと寝息をたてる。

これはチャンスとばかりに僕は彼女の豊満な体を抱きしめる。

むふっふわふわおっぱいが気持ちいい。

寝ていることをいいことに軽くキスをしてみる。唇も柔らかくて気持ちいいや。

この続きはまた今度にしよう。

僕も疲れたので眠ることにした。

僕は淡路みゆきを抱きしめて、白は僕を抱きしめてこの日は眠った。

冬のさむい日もこうして眠ると温かくていいや。美女と美少女に抱きつかれて眠るなんて最高だ。

どうやら僕はけっこうポジティブなんだな。


この日僕たちはぐっすりと眠りについた。

翌朝、僕たちのこのオンボロ屋敷に来客者が訪れた。

それはなんと佐渡あやの先生と五島涼子看護師長それに見かけないもう一人は石垣麻季絵と名乗った。

石垣麻季絵はあの病院で調理を担当していたという。背の高い美人でおまけにあやの先生に負けないぐらいの巨乳だ。

「病院やめてきちゃた♡♡」

後悔の念など微塵も感じさせずにあやの先生は言った。

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