第7話男子の序列

男女比が1対10000になったこの世界では純然たる序列というものが存在するとあやの先生は語る。

僕が精液検査の結果もたらされた資格はSSRというものであった。

この国で五人しかもっていないというものである。

スーパースペシャルレア。

なんだかソシャゲのレアキャラみたいな称号だな。

僕がそれに正式に認められれば、六人目になるという。


ではその資格の条件とはなにか?

それは女性を妊娠させることができる能力だとあやの先生は説明した。

下から順に、

E資格は不能者。

D資格は30パーセント未満。

C資格は50パーセント未満。

B資格は70パーセント未満。

A資格で80パーセント未満。

SSR資格はそれより上のなんと99パーセント以上のものをさすのだという。

B資格者以上でも数えるほどしかいないのに、さらにその上のSSRなどは本当に文字通りのレアキャラクターなのだ。

ということは僕は女性と肉体関係を結ぶとほぽ確実に孕ませてしまうということだ。


そこまで説明して、興奮で喉が渇いていたのだろう、あやの先生は、五島看護師長からミネラルウォーターのペットボトルをうけとるとすべて飲み干してしまった。

「それに種子島さんは容姿端麗で頭脳明晰ですからね。スペシャルのなかのスペシャルにだってなれるわ」

鼻息も荒く、あやの先生は言う。


えっどういうことだ?

僕が容姿端麗で頭脳明晰だって?

Fランク大学をどうにか卒業した社畜童貞の僕が。

「ええ、とくに容姿は並ぶべきものがいないほどの素晴らしさですわ。種子島さんも見たでしょう、あなたの体臭を嗅いだだけで気絶する女の子たちを。あなたが醸し出すフェロモンに抵抗力のない若い子たちは耐えられないのです。私ですら平静を装うのに必死なのですから」

五島看護師長は言う。


にわかには信じられないが、確かに僕が目覚めたときあやの先生をはじめ、何人かはバタバタと気絶した。その原因は僕の体から発せられるフェロモンだというのだ。


「それにIQテストもかなりのものでした。他の男性はなかなかこのような高成績を取れません」

あやの先生は言う。


そういえば検診の間にパズルや数学の問題、国語の読み書きなんかをやったな。あれがいわば学力テストだったのか。

いや、さすがにあのレベルは一般常識の範囲内だよ。社畜とはいえ社会人ならできて当たり前だよ。

いや、もしかすると。

僕の頭のなかにある考えが浮かぶ。

他の男性がたいしたことないのかもしれない。相対的に僕が賢くみえるのかも知れない。それは他の男性にあってみないとわからないが、可能性はなくはない。

この世界では男性であるだけで稀少種なのだ。学力なんかはそれほど問われないのかもしれない。


「検査の結果間違いなく種子島さんはSSRの資格を有することができるでしょう。検査結果を機関に提出したあと、おって連絡があることでしょう」

あやの先生は言った。


「もしそのSSR資格者に認定されればどうなるのですか?」

僕はきく。


「種子島さんは国の最重要人物になります。何せこの国でのSSR資格者は今のところ五人しかいないのです。その六番目ともなると国家元首も無下にはできないでしょうね」

とあやの先生は言い、はー遠い所にいくのね、もっとお手伝いしたかったわと小声でつけ足した。


それから二日後、僕が五島看護師長と筋トレをしていると文字通り血相を変えてあやの先生がトレーニングルームに入ってきた。

「認められました!!種子島さん、あなたはこの国で六番目のSSR資格保持者になったのです!!」

喜びのあまり、あやの先生は僕に抱きつき、その推定Jカップはあろうおっぱいを顔におしつける。

むふふっ柔らかくて気持ちいいや。

それに彼女はいい匂いがするし。

少し胸の谷間の感触を楽しんだあと、僕もあやの先生の豊満な体を抱きしめる。

「ふぇ……あやの幸せ……」

そっちから抱きついてきたのに、僕にだきしめられたあやの先生は白目をむいて卒倒してしまった。

口をあけてよだれを垂らして目を見開いている。これはあのアへ顔というものだ。

ちょっと間抜けだけどかわいいな。


そして政府の要人となった僕に二名の警護係がつくことになった。

「警察庁警備部所属の淡路みゆき警部補であります」

りりしく敬礼するこの女性を僕は知っているぞ。

髪型もメイクも全然違うがスーツのジャケットがパツンパツンに張り裂けそうなほどの巨乳は間違いなくあのスーパーの店員だ。

この世界では警察官をしているようだ。


「国防軍情報管理局所属、喜界白峰きかいしらみね少尉であります」

ボブカットのまだかなり若い女性がそう名乗る。年齢は十代前半と見ていいだろう。

僕はこの娘を知っている。

あの魔女ジャックのとなりにいた白猫ではないか。

僕がなにか言おうとしたら、喜界白峰はかわいい顔にウインクを浮かべた。

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