第3話 女医は語る

 巨乳の女医さんはペンライトで僕の瞳を見たり、舌を出させて口腔内をみたり、触診をしたりする。

「おほっ♡男の子のいい匂い♡♡」

 ごく小さい声だが、佐渡と呼ばれた女医は言った。


 後ろのいかにもベテランな看護師さんがおほんっと咳払いをする。

「これは失礼しました」

 佐渡先生は白衣の襟元をただして言う。


 しかし、この女医さんグラマーな上に美人だな。

 黒髪はぴっちりと頚の後ろでくくられている。

 左目の下にほくろがある。涙ほくろだ。これがセクシーだ。

 眼鏡の下の瞳は潤んでいて厚い唇もセクシーだ。

 僕の顔を見てペロリと舌なめずりした。

 それを見て、またあのベテラン看護師さんがごほんっと咳払いする。



「私はあなたの担当医で佐渡あやのといいます。手短に説明しますね。種子島豊久たねがしまとよひささん、あなたは十五年前に交通事故にあいずっと眠ったままでした。その間に世界は劇的に変わりました。それは悪いほうにです」

 佐渡あやの先生は語る。


 僕は十五年前に事故にあい、植物人間に近い状態で眠りについたという。

 この世界での僕はそのような状況らしい。

 そして僕が眠りについたころ、ある病気が人類社会に蔓延した。

 それは間違いなくパンデミックであったという。

 その病気は人間の男性だけが罹患し、発症したものはおおよそ七日間高熱を発し、亡くなってしまうという。

 発症すれば男性のみ致死率百パーセントで七日間苦しんだのち、死んでしまったという。


 その病気は七日病と呼ばれた。


 七日病はあっという間に世界中に広がり、男性はほぼ死滅したという。しかしどんな病気にも例外がある。とある特殊な抗体を持つものは七日病には罹患しなかった。

 眠り続けている僕にもその抗体があったので手厚く保護されたのだという。

 人類の男性はそのほとんどが病気でなくなり、おおよその男女比が1対10000になったという。単純計算で世界人口の四十パーセントがわすが十数年で死滅した。

 国連の国々のなかには国として存続できなくなり、大国の傘下にはいるしかなくなった国もあるという。

 我が日本も男性の多くが七日病で亡くなったがそれでも他国に比べればましなほうで今では精子の輸出大国となって莫大な富を得ているという。

 それがざっくりとではあるが現在の世界情勢と社会状況であると佐渡あやの先生は僕に胸の谷間を見せながら説明した。

 人類文明の崩壊を危惧した国連は男性の保護を各国に要請しているとも佐渡あやの先生は補足説明してくれた。


 この状況はまさしく魔女ジャックにたのんだ世界に間違いない。

 数少ない生き残りの男子である僕は政府によって保護され、24時間体制で看護されていたという。その看護チームのトップがこのセクシー美人女医の佐渡あやのという人物だ。


「お腹すきました」

 今までにないほどの飢餓感を覚えた。

 僕は自分の手を見る。寝たきりのせいで痩せ細っていた。まずは体力を回復させ、筋肉をつけないとねというのが佐渡あやの先生の意見だ。


 看護チームの用意したものはいわゆる重湯であった。お腹が空いているのでもっと濃いものが良かったのに。

 僕がそういうといきなり消化の悪いものを食べると体に良くないのでまずは薄いお粥から体をなれさせなければいけないのよねと佐渡あやの先生は言った。


 僕は重湯を飲むように食べる。この体は寝たきりだったので重湯は文字通り体にしみわたる。確かに先生のいうとおりいきなりヘビーなものは避けたほうがいいな。元気になったら焼き肉やトンカツを食べたいな。


 僕が重湯を食べて一休みしていると佐渡あやの先生が検診にあらわれた。

 巨乳の谷間を見せながら僕の体をさわりながら確認していく。

 その手のひらが温かくて気持ちいい。

 女の人にこんなに親身になってお世話になるのははじめてだ。


 ありゃ、あんまりベタベタと触診されるので僕の下半身のものが反応してきている。ちょっとしたテントをつくっている。

「あら男の子の匂いがこくなってきたわ」

 くんくんと佐渡あやの先生は僕の首筋の匂いをかぐ。

 うわっ間近でみるこの人の顔はめちゃくちゃ美人だぞ。

 真っ赤なルージュをひいた厚い唇がセクシーだ。

 それにぶるんぶるんとゆれるおっぱいが僕の腕にあたっている。

 ますます下半身が反応するじゃない。


 ちらりと佐渡あやの先生は僕の股間に視線を送る。

「こ、これは男性の大事なところがお立ちになっている。今日目覚めたばかりなのになんということなの。もしかしたら種子島さんはスペシャルなのかもしれないわ」

 謎の言葉をいい、さらにくんくんと僕の匂いをかぐ。

「はあっ♡♡なんて濃厚でこくのある男の子の香りかしら。頭がくらくらするわ。はあっ♡♡らめぇ♡♡あやのいっちゃう」

 僕の体臭をひとしきり嗅いだあと佐渡あやの先生はばたりと倒れてしまう。


 騒ぎを駆けつけた当たり前だが、女性の看護師が二人入ってくる。

「なにこのいい匂い」

「ふあっしゅごい……鼻にこびりついて離れない」

 口々に看護師は言う。

「ひゃあぁ♡♡こんなのはじめて♡♡いっ、イクッ♡♡」

 二人は交互に叫び、意識を失い倒れた。


 次に入ってきたのはガスマスクをつけた二人組みの看護師だ。彼女らは手早く倒れている三人を回収して去っていく。

「なんていい香りなの。この高性能マスクをしていても長くはもたないわ。病室の換気機能を最強にして撤退よ」

 そう言い残し、彼女らは完全撤退した。


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