第三話:勉強合宿

「でね、今日の放課後、倫也くんの家で勉強教えてくれないかなぁ〜、と」


「……………………へ?」

「いや、邪魔だったらいいんだよ、でも私ってすごいくらいの馬鹿だからさ。今回のテストは頑張ろうって思ってもどうやったらいいか悩んじゃって」

「事情はわかったけどなぜ僕?」

「だって倫也くん頭いいし」

「うん、でも僕よりいい人いっぱいいるでしょ…」

「それが私の周りって倫也くんみたいに頭いい人いないし」

「でもどこでやるの?」

「うーん、倫也くんの家かなぁ〜うちは絶対無理だし」

「でもどうやって説明しよう」

「咲希が勉強しにくるけどいい? とか、倫也くんのお母さんと星奈せなちゃん、私のこと知ってるし、すぐ納得してくれると思うけどなぁ〜」


そうだった。これはまだ付き合っていた時のお話。

外が雨降ってたり他に行く場所がない時の避難場所として僕の家が使われていた。雨が強すぎて帰れなかったり、咲希の親が家にいない時など、たまに泊まっていたのでうちの母親と妹の星奈も咲希の顔見知りだ。


「わかった、帰ったら聞いてみる」

「あ、そういえば今週来週一週間親いないんだった」

「え、ま、まさか…」


「来週一週間倫也くん家で勉強合宿しない?」


◆  ◆  ◆


まさか席替えして隣になってすぐこんなに接する機会が生まれるなんて。僕が思っていた気不味さは何だったんだろう。今日は泊まってよい許可を取るためこないことになった。まぁとりあえず母親に話してみないとわからない。ちなみに現在父親は海外へ単身赴任中なので、帰ってくるのが不定期だ。でもつい最近帰ってきてまた行ったので当分は帰ってこないだろう。


「ただいまー」

「おかえりーお兄ちゃん!!」

「どうしたの? そんなにはしゃいで」

「あのねあのね、今日のお昼のぷりんじゃんけん勝ったの!!!!」

「あーうんすごいねー」

「ねぇもうちょっとかんじょうをこめて!」

「うわぁすごい、さすが星奈だぁー」

「なんかやだー!」


星奈はまだ甘えてくる。修学旅行で2泊3日のときとかもうやばかった。離れたくない−って言ってお見送りまできて、クラスのみんなの前で泣かれたときはもうどうしようかと思った。今年で小6だから僕がいなくても気にならないようになってくれないかな、と心底思う。


「あら、おかえり倫也」

「ただいま。あのさ、咲希がテストまでうちに泊まりたいらしいんだよね」

「じゃあ二人でテスト勉強するってこと?」

「まぁそういうことになるね」

「で、咲希ちゃんと二人、と」

「うん」

「いいけど条件があるわ」

「…なに?」

「考えてみたんだけど、家のベットが空いているものが一個もないの。」

「……で?」

「だから一緒のベットで寝てね」

「……………は?」


うちの母親はどうかしすぎてるだろう。

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