第10話
空亜は言葉を発さないが、よく笑う。私に殴られても、客として家にやってくる男たちに蹴られて泣いても、その時の痛みが去ればまた笑顔に戻る。何がそんなに楽しいのか、何も楽しくない私は疑問に思う。その問いに答えが出ないと猛烈にイライラしてくる。そして私は消えてはまたすぐにできる痣を子の顔や体に残すのだ。
空亜の笑顔を見ていると見知らぬ男たちの声や息遣いが聞こえてくる。
顔がわからない男たちの笑い声が聞こえてくる。
蔑んでいた男たちは空亜を通じて私に忘れられた仕返しをしているのかもしれない。こんな幻想めいたことを考えていると誰かに知られたら、馬鹿にされるだろうか。いや、とうとう性病が脳にまで達してとことん狂ったと思われるか・・・。
普通に生きてきた人たちには見えない地獄を、私は見ているのだ。
『記憶』という永遠に逃れられない呪いに縛られた経験を持つ人になら、もしかしたらわかってもらえるかもしれない。
呪われた記憶は血縁という、手で触れられる子供となって私を脅かす。
私は今まで記憶からも血縁からも逃れられたことがない。きっとこれからもずっとずっと体に染み込んだ、この逃れようのない呪いに追い回されるに違いない。
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