第9話

 怒りの感情がヒートアップして空亜の柔らかな頬を張った時も、涙で濡れた頬を手で覆いながら『なぜ?』と問うような目を私に向ける。


 私が怒号を飛ばすことも殴ることにも理由などないのに。


 お前はそうされることが避けられない存在なだけなのに。


 ただそれだけなのに、なぜ私に無言で問いかけてくるのだろう。お前は忌むべき存在なのだと伝えたい。伝えた言葉がまっすぐこの子に伝わればいいのに・・・。


 幼すぎて私の言いたいことが理解できない空亜にまた苛立って、私は昨日の夜、桃のような白く滑らかな尻をつねり上げた。


 今日もまだ空亜の尻には昨日の負の名残りが残っている。


 まるで当てつけのよう。言葉にできない分、目には見えるように私に反論している風に思えてくる。目に映るものは記憶に深く刻み付けられることまで知っているのだと、私に警告をするように。


 


 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る