第6話

 空亜くうあが風邪をひいて熱を出したり吐き下したりするたびにこのまま病死してくれることを期待した。高熱の影響で強いひきつけ発作を起こしたときなんて、やっとチャンスが来たと酒を飲みながらワクワクして放置していたものだった。


 もしも空亜が死んで、放置していたことがばれたとしても面倒は見ていたが急変したとか、家で手当てができると思っていただとかを泣きながら適当に話して悲劇のヒロインぶっていればかわいそうな母を責める者など出ては来ないだろう。あくまで病死なのだから。


 しかし水だけ与えて放っておいたら発熱もひきつけも自然と治まってしまった。


 雑種というものは人間であっても血統証付きより丈夫なのだろうか。


 妊娠中でも金のため客と性行為を繰り返していたし、つわりの時期以外は酒を飲んで煙草も好き勝手吸い続けていた。


 それなのに、生まれた。


 その無駄で異常な丈夫さが憎たらしく、私の怒りを助長させる。


 「元気いっぱいですね!」


 医者だか看護師だか知らないが、出産時に笑顔で褒めてきたクソ女を子供とまとめてぶち殺してやろうかと思ったことを思い出した。


 

 あーっ!あーっ!と、空亜の言葉にならない叫び声が耳に届いて濁った過去から現実に引き戻される。過去にも現実にも逃げ場がない。どこにも行くことができないのなら、もう消えてしまえたらいいのにとまで思うようになっている。


 

 

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