第5話

 私は人間になり切れなかった日々を、環境だけ変えて今も同じようして生きている。


 街灯の薄白色が滲む暗い道路や騒音まみれなのに何も聞こえない孤独な雑踏から、生活感溢れる静かな部屋に日常を移しても私の根本が変わることはなかった。ずっと暗闇の中を彷徨っているというところも変わらない。


 変わったのは足枷が増えたことぐらいだ。


 今は顔に袋を被らされて全方向から全身に暴力を受けているような日々を腹から出てきた穢れた塊と過ごしている。


 『子供』という、顔を思い出せない男たちの名残り。


 自分の遺伝子も混ざり合った存在であるとしても、汚い最低価格のホテル辺りで宿った望んでもいない命に何を思えというのか。


 泣くのが鬱陶しいから母乳を与え、臭いがするからおむつを替える。感情を動かすことすら億劫になるような邪魔でしかない存在に一日中付き合い続けてもう三年になる。


 宇宙語を発しておもちゃを投げて笑いながら私をこの部屋に縛り付ける生き物のせいで私の人生は大きく狂い、消耗させられている。

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