第55話 魔法少女大連携! 逆転の鍵はピクシーアクア!? その2


「おままごとの作戦会議は終わったか? なら次はお前たちを、あの男の元へと送ってやろう! もっとも、法族エルマ地球人アーシアと同じあの世に行けるとは思わんがな!」


「お生憎様! あいつは、雄星は私たちにとっての賓客、稀人レアブラッドなの……よ!!」


「うおっ、まぶしっっ!?」


 まず動くのはキララちゃん。

 残りの魔力のありったけを使ってもらっての目くらましの閃光を放ってもらう。


「だったらもう、お師匠様は身内みたいなもんだよねぇ」


「ゆう兄は、ゆう兄は……ワタシたちとずっと一緒なんだからーー!!」


 次に動くのはネムさんとコクリちゃん。


「これで打ち止めだよぉ……スキル『流砂』!」


「みんな、掴まって!」


「うんっ!」


 ネムさんが敵まで続く流れる砂の道を作って、コクリちゃんが私たちを掴んで。


「それーーーーっ!!」


 残りの魔力を全部使って、全力で押し出した。

 私、ミドリちゃん、クゥちゃんが、一気に前へと飛び出していく!



「……くだらん! くだらんくだらんくだらん!! なんだそのポジティブさは!」


「もっとたくさんの絶望をお望みで? 残念ですが、そちら本日はもう品切れでーす」


「ここからは、ずっとクゥたちのターン」


 ベビフェスが迫る私たちを焼き尽くそうと放つ熱光線を、火と相性のいいクゥちゃんが受け止めて。


「これでわたしも打ち止め。スキル『黒魔法』コントロールプラント!」


 ミドリちゃんが植物を束ねて編み上げた発射台に私を載せて。


「射程距離! アクアちゃん!」


「お願いしますっ!」


「いけー、アクアーー!」


 バシュンッ!!


 高速で射出された私は、一直線にベビフェスに向かって跳んで、手を伸ばし……!



「うおおおおおお!! ……なぁんてな?」


「!?」


 バッ!!


 大きくジャンプして移動したベビフェスに追いすがることができず、空を切った。


「バカが! お前たちの作戦は筒抜けだったぞ! オレの最強の耳に丸聞こえだぁ!」


 私たちから離れた場所に着地して、勝ち誇るベビフェス。


「さぁ、処刑の時間だ! 羽虫どもぉ!!」


 言い放たれる処刑宣言。



「私たちの、勝ちですっ」


「あ?」



 から手を伸ばし、ベビフェスの足にタッチした私は。



「スキル『魔力操作』! もともと私の物だった魔力、戻ってきて!!」


「ば、バカなぁぁぁぁーーーーーーーーーー!?!?」


 ミドリちゃんたちの傍に残した『傀儡影くぐつかげ』を解除して、魔力を吸い出した。



      ※      ※      ※



「バカな! こんな手を使うなんて、まったく話してなど……!」


「“あなたとお話したいリリエスペラ”。思うだけで話せる、私たちのマジカルよ!」


「っていうか、本当の作戦なんてさぁ。あんなベラベラしゃべるわけないよねぇ?」


「やーい、だまされた」


「「いぇーい!」」


「なんっこの、羽虫どもがぁぁあ!!!」


「フンッだ! よそ見してていいの? あんたの最大の敵は、そこにいるわよ?」


「あっ?」



「『白魔法』ディバインライト」


「ゴガァァァァァァアアアア!!!!!」



 破邪の魔法をベビフェスにお見舞いしてから、私は『飛行』でみんなの元へと戻る。


「アクア!」


「アクアちゃん!」


「作戦、成功しましたっ!」


「アクアえらーい」


 戻ってきた私を、みんなは温かく出迎えてくれた。


「アクアちゃん、力はどれくらい取り戻せたかな?」


「大体3割くらい、です。ネムさん」


「うーん。予想通りとはいえ、ちょっと辛そうだねぇ」


「いいえ! 希望は繋げたわ! 最高よ、アクア!」


「今のアクアちゃんの3割なら、ブット・バス将軍を軽く10回はぶっ飛ばせる」


「そう聞いたら途端に大丈夫そうに思えてきたねぇ」


 ミドリちゃんが言うように、戦うだけなら、今の私でも十分だと思う。


 でも。



「みんな、聞いて」


「「「?」」」


 私は、普通に勝つだけで終わるつもりはない。


(作戦を伝え始めたときから、ずっと胸の内にあった不思議な確信)


「なにー、アクアちゃん?」


「私は……私は、奇跡を起こしたい」


 起こせると、思う。


「え?」


「きせきー?」


「そう、奇跡。想いで世界を変えられる私たちだからこそできる、奇跡を……起こすの!」


 でもそのためには、必要なことがあって。


(雄星さん……私、ガンバりますっ!)


 そして私は、雄星さんから教わった力をまた、使う。



「スキル『白魔法』ブレッシングレイン」


 今この瞬間にも降り注いでいる雨に、祝福を。



「えっ」


「力が……」


「魔力が、回復した?」


「私の魔力をみんなに配ったよ。あとは、想いを高めて!」


「「!!」」


 それだけ伝えたら、もう十分だよね。


「もーぅ、あんたどんだけ器用になってるのよ!」


「でも感謝、これで」


「ワタシたちも、戦える!」


 私なら、私たちならできるって……信じる。


 だから最後に必要なのは、この言葉。



「みんな、私と一緒に戦って!!」


「「!?」」


 奇跡を起こすのに必要なのは、私たちみんなの力!

 どんな敵にも恐れず立ち向かう、夢と希望に満ちた強い想いこそが、運命を乗り越えるんだ!


 それを可能にする存在こそが、魔法少女リリエルジュで。


(それが、雄星さんが大好きな……キラキラの魔法少女わたしたちだからっ!)



「オレの大作戦はすでに成し遂げられた! 出涸らしの羽虫どもは、とっとと退場しろ!!」


「「「するもんか!!」」」


「!?」


「私も!」「ワタシも!」「わたしも!」「クゥも!」「あたしも!」


 私たちは、最後の最期まで。


「私も……!」


 絶対に――!!



「「「――夢と希望ハッピーエンドを諦めない!!」」」



 カッ!


 私たちを、突如として眩い光が包みこんだ。


 真っ白に染まった世界の中。

 私たちの目の前に、それは姿を現す。


「「「印章クリサリストーン!」」」


 私たち一人一人の前に一つずつ、それは静かに浮かび漂って。


「みんな、行くわよ!」


「「「うん!」」」


 キララちゃんの号令に、みんな同時にそれを掴んで、天に掲げる!



「「「「「「リリエルジュ! エマージェンス!!」」」」」」



 そして、奇跡を起こす6つの呼び声が、高らかに響き重なった。

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