第37話 運命の再会?! 消えたマジョンナとお疲れの間條さん! その2


 それに気づいた瞬間。俺はすべての辻褄が合ったことに気づいた。


「間條さん!」


「へっ?」


 俺はそれに向かって、無詠唱無宣言でスキル『白魔法』ディバインライトを放つ。


 ジュッ!


 刹那に放たれた光線は、間條さんの懐から姿を現したそれ……欲望の種グリードシードを正確無比に消し飛ばす。



「…………へぁ?」


「間條さん。あなたを絶望の淵に追いこんだモノの、その正体がわかりました」


「え?」


「それが何かを伝えることはできませんが、必ず俺が何とかします」


 欲望を増幅し、暴走させるというグリードシード。

 それがまさに今、間條さんから姿を現したのを目撃した以上、答えは明確だ。



「……必ず仕留めてやるぞ、デモニカ」


「ヒュッ……!」



 間條さんを追いこむものがそれだというのなら、俺は……!


 と、そのときだった。



「ゆう兄ー!」


「雄星さんっ!」


「コクリちゃん! って、え? アクアちゃん? それに、キララちゃんも?」


「こんにちは。まぁ、あんたは無事よね」


 俺の元へ駆け寄ってくる4人の魔法少女。

 そう、魔法少女だ。


 なぜかみんな変身している。


「大丈夫ですか、お兄さん」


「ミドリちゃん。変身しているってことは……」


「はい。麗しのダーク四天王マジョンナが出ました。施設の中に逃げ込んだんです!」


「……そういうことか!」


 おそらくそいつが、今まさに間條さんに仕掛けたグリードシードを起動しようとしたんだ!


「あの、雄星さん……その方は?」


「ん? ああ、彼女は間條さん。ほら、前に話した……」


「あっ、あっ……この、人が……」


 間條さんは気を失ってしまっているようだった。

 無理もない、グリードシードに憑りつかれていて弱っていたところで、魔法少女たちのおまじないの効果範囲内に入ったのだから。


「この人は今まさに、グリードシードを発動されそうになってたんだ。彼女は俺が安全なところで休ませておくから、みんなはマジョンナを頼む」


「うん! 任せてゆう兄!」


「言われなくても、私が何とかしてあげるわ!」


「お兄さん、その人の意識がないからって悪戯しちゃダメですよ? するならぜひわたしに」


「残念ながらその予定は未定だな」


 せいぜいこのあと、お姫様抱っこで運ぶくらいだ。


「あれ、ミドリちゃんと雄星さん、前より気安くなって……?」


「アクア! 急がないと置いてくわよ!」


「え、あっ、うん! 待って、キララちゃん! ……それじゃ雄星さん。行ってきますっ」


「あぁ、気をつけて」


 そうして俺と間條さんを残し、魔法少女たちは“お花の休憩所”の奥へと進んでいく。

 俺も間條さんを抱え、すぐに安全な場所、施設の外に向かって駆け出した。



(まさか、間條さんがグリードシードを植えつけられていただなんて……)


 確かマジョンナという幹部は、多数のグリードシードを使って人を操るという凶悪な敵だと聞いている。

 もしかすると間條さんのご家族も、グリードシードを植えつけられているのかもしれない。


「いったい、どこまで凶悪なんだ……」


 今日遭遇したベビフェスという幹部から感じた、異世界の魔族と似た雰囲気。

 きっとデモニカにもいろいろいて、個体によって凶悪度が違うのだろう。


 だったら……。



「う、ううん……あれ、わたし」


「麗しのダーク四天王、マジョンナ。もしも俺の前に立ちふさがるなら……容赦はしない」


「………すやぁ」



      ※      ※      ※



 その後、俺は間條さんを植物園ゾーンゲート近くのベンチに休ませ、アクアちゃんたちと合流してマジョンナ捜索に当たった。

 だが残念なことに当のマジョンナは忽然と姿を消してしまい、見つけられなかった。


 そして間條さんもまた、俺がベンチに戻ったときにはもうどこにもいなかった。



(彼女がどこに住んでいるのか、俺は知らない。でも、今日で彼女に植えつけられていたグリードシードは浄化できたはずだから……少しでも上向いてくれれば)


 せめてあの人がこれから行く先に、少しでも安息があればいい。

 そう願ってやまない。今は。


「間條さん……」


 それに、二度あることはきっと、三度ある。



「雄星さーんっ! 帰りましょうー!」


「……あぁ!」


 秋夕空に間條さんの顔を思い浮かべながら、俺は4人の魔法少女たちと一緒に、駐車場を歩く。


「キララちゃーんっ!」


「………」


「キララちゃーん?」


「……えぇ、今行くわ」


 今日もまた、とんでもなく濃い一日を過ごした。

 アクアちゃんたちと知り合ってからよく感じるようになった、心地よい疲労とともに。


「じゃ、帰ろうか」


「「はーい」」


 俺は車のキーを入れ、エンジンを鳴らした。



      ※      ※      ※



 ピシャッ、ゴロゴロゴロ……。


 デモニカエンパイア。

 ダーク大帝の住まう暗黒城ダークキャッスルの、玉座の間。


「すまん、マジョンナ……」


「うわーーーーーーん! もうやだーーーーー!!」


「こんなことになるとは思っていなかったのじゃ。本当にすまん!」


「うわーーーーーん!! うわーーーーーーーん!!」


「ワシが悪かった! 好きに休んでいいから、侵略休んでいいからの? のっ!?」


「最高のエステがある最高のリゾートもくれないとやだーーーー!!」


「わかった、わーかーったから! 泣き止むのじゃー!」


 何とか生き延びて帰ったマジョンナは、ダーク大帝から直々の長期休暇を賜った。

 そのとき、自らの美貌と涙を用いてさまざまな要求を勝ち取ったという話は、瞬く間にデモニカエンパイア中に広まった。


 前代未聞の出来事に、周囲からの彼女の格は、さらに上がるのだった。


「くまモトなんて、もうこりごりよーーーーー!!」

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