第13話 双子バトル! スキルとマジカルとクゥからのお誘い その1
くまモト市東区
時刻は夕方。
「いっくよー、ミドリ! スキル『神体通』!!」
「ん、いいよ」
相対する二人の魔法少女、コクリちゃんとミドリちゃんが動き出す。
片や拳法家風の衣装を身にまとい、籠手を装着した拳を握って元気よく飛び出して。
片や陰陽師風の衣装を身にまとい、手にした円月輪を構え冷静に迎撃態勢へと入って。
「って、うわわわっ!! 勢いが出すぎたぁ~~!?」
「……予想通り」
飛び出したコクリちゃんが力を持て余しすっ飛んできたのを最小の動きでかわし、ミドリちゃんは落ち着いた様子で力を行使する。
「スキル『黒魔法』――バインドプラント」
「うぇっ!? あ、ひゃ~~~~!?!?」
突如として伸びてきた
「あ……んっ、く。このぉ……はなれ……んぐぅ……ッッ!」
柔軟性のあるそれは力任せに振り払おうとする彼女の手足を完全に抑え込み、決着の一手となった。
「勝負あり! 勝者、ミドリちゃん!」
「ぶいっ」
「うぁーーーー!! 負けた~~~~!!」
最終的に蔦でぐるぐる巻きにされたコクリちゃんが、魚みたいにピチピチのたうち悔しがる横で、力強く両のこぶしを突き上げ勝者アピールするどや顔のミドリちゃん。
そんな二人の様子を眺めつつ俺は、指導の難しさを改めて思い知らされていた。
※ ※ ※
チームピクシーの
彼女たちと定期的に会うようになった俺は、今日は東区を守る双子の魔法少女、ミドリちゃんとコクリちゃんの指導をしていた。
彼女たちのお世話になっている双竜家は、健群神社の宮司さんである。
「うぅ~~。スキルって難しいよ~~~!!」
「そうかな? わたしはそう思わない」
「なんで~!?」
ジタバタと地面を転がるコクリちゃんと、渡されたスポーツドリンクを美味しく飲みながらそれに応対するミドリちゃん。
騒がしくやり取りする二人の横を、何も気づかぬ様子で参拝客のお婆さんが通り過ぎていく。
魔法少女の“おまじない”の便利さを嚙み締めながら、俺も二人のやり取りに加わった。
「『神体通』のスキル効果を十全に発揮するには、体の内側を魔力が循環するイメージを前提に敷く必要がある。血液が巡るように力も巡り、その結果として体が強化されるっていう考えを理解して……」
「小難しい考え方はわかんないよ~! もっとこう、バーンって強くなるんじゃないの!?」
「コクリは勉強が足りない。世界はいろいろな
「だからわけわかんないってば~!」
「コクリはもう、最初から強くなった自分をイメージした方が強くなると思う」
「ううー、でもスキルって必殺技みたいでカッコいいし~……」
「うーん」
俺が直面している指導の難しさ。
それは今まさに、ミドリちゃんとコクリちゃんの間で発生している力の格差……ではなく。
(そもそも根本として、スキルの在り方と魔法少女の魔法――マジカルの在り方が違うんだよなぁ)
すんなりとアクアちゃんがスキルを身につけてくれたから気づかなかった。
同じ魔力を使って発動させる“スキル”と“マジカル”の違い。
え、マジカルっていきなり出てきたって?
魔法の国の魔法を便宜上そう呼称することにしたのだ。異世界の『黒魔法』や『白魔法』などと混同しないように。
すでに女王様にも打診し了解を得ている。今後魔法少女たちにも浸透していくことだろう。
では、改めて。
スキルとは、魔力というエッセンスを世界に足して、超常的な事象を起こす技術。
マジカルとは、魔力を使い世界を捻じ曲げ、望む結果を強引に作り出す不思議なチカラ
理の積み重ねで結果に至るスキルに対し、マジカルは結果をいきなり叩き出すのだ。
美味しいジュースを飲もうとして、果実を絞って用意したコップに注ぐという過程を経てジュースを得るのがスキルで、美味しいジュースの入ったコップをいきなりポンッと出すのがマジカルである。
「うーんうーん、腕に魔力を注ぐイメージしてぇ……次は足? 足ぃ?」
「簡単簡単。スキル『黒魔法』コントロールプラント。椅子になって」
コクリちゃんが『神体通』をモノにしようとあーだこーだやってる横で、ミドリちゃんは『黒魔法』の中でも相性がいい植物系の魔法を次々と活用している。
要は、理論派な子ほどスキルと相性がよくて、感覚派な子ほどマジカルと相性がいいのだ。
見た目は似ていても性格が全然違うこの双子ちゃんは、それがとても分かりやすく反映されていた。
「うわぁぁーん、わからなぁぁぁぁーーい!!」
ボッ! と、コクリちゃんからドラゴンタマタマ(大人気バトル漫画)のキャラっぽいオーラが出た。
そのまま目にも留まらぬ速度でビュンビュン飛び回り、スーパーアクロバティックもだもだタイムに入っている。
多分あれ、『神体通』使ってるのと同じ状態かそれ以上の奴。
マジカル……恐ろしい子!
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