第11話 疾風迅雷! ピクシーキララ、トバすわよ! その2


 ピクシーキララの大技に、真正面から立ち向かう!


「えっ!? 雄星さんっ!?」


「は、ちょ、えぇ!? 本気で言ってるぅ?」


「おー、いけー」


「無理無理無理、あれはヤバいって、逃げてにぃちゃーん!!」


「アクアちゃんのお師匠様。雄星さん。興味深い……!」


「受けられるってんなら受けてごらんなさい!! 私の……魔法少女技リリックアーツ!!!」


 ピクシーキララの両肩に雷球が出現すれば、魔力の波動が彼女のマントをたなびかせる。

 両手の剣と両肩の雷球。四点の魔力が爆発的に増幅して――次の瞬間!


「喰らいなさい! キラライトニング・パニッシュ!!」


 技名とともに放たれる、4本の極太レーザー。

 それらが螺旋を描いて超極太のレーザーにまとまり、俺の元へと迫りくる!!


 可愛げのあるネーミングからのえげつない攻撃!!


「不死身のダーク四天王、ブット・バスさえ直撃を避ける一撃よ! 受け止めるなんて……」


「うおおおおおおおお!!!!」


「えええええええええ!?!?」


 受け止めた。

 『神体通』で強化された肉体に『雷攻撃耐性』と『痛覚鈍化』の合わせ技だ。

 『バリア』? はじいたら元も子もないから却下だ!


「ちょ、バカ! そんなの耐えられるわけ」


「うおおおおおおおおおおおお!!!!!!」


「耐えてるーーーー!?!?」


 『自動回復』で体が焼ける度に回復し、強烈な衝撃と痺れは、『不屈』と『食いしばり』で根性耐久!


「雄星さーーーんっ!!」


 ここにアクアちゃんからの声援まで加われば、勝ち確だ。


「スキル『魔砕の手』! だぁぁぁぁりゃああああああ!!!」


 十分耐えたところで発動中の攻撃魔法をぶっ壊すスキルを起動!


 極太レーザーを粉砕! 爆砕! 大破壊!!


「な、な……そんな……」


「ふぅー、ふぅー……しのぎきった、ぞ」


 体の正面の至るところがプスプスいってるが、文句なしの正面突破だろう。



「ひっ」


 一歩近づいたら、ピクシーキララが尻もちをついた。

 それでも構わず近づいて、彼女の傍まで辿り着いたら、俺はゆっくりと腰を落として目線を合わせた。


「わ、私はあんたなんて……」


 この状況でもまだ、彼女は抗う気持ちを失っていない。

 そこにどれだけの想いが込められているのかまでは、俺にはわからない。けれど。


「……ごめん」


「へ?」


 俺は彼女に向かって頭を下げて、謝罪の言葉を口にした。


「キミの大切な人を、キミの知らない間に大きく変えてしまった」


 推測だがこの1ヵ月、この子とアクアちゃんは密な連絡を取れていなかった。

 それくらいアクアちゃんは俺にべったりだったし、それだけ時間があったからこそ俺は彼女に多くのスキルを教えることができた。

 だがその代償に、おそらくだが俺は、この子とアクアちゃんの時間を奪っていたのだろう。


 そこは、謝るべきだと思った。


「でも、彼女を変えたことそれ自体については謝らない」


「!?」


「それが変わることを望んだアクアちゃんに手を貸した俺の、負うべき責任だからだ」


 そして、謝るべきでない場所もあると思っている。


「彼女が望んで、俺が応えたからこその師弟関係だ。その継続も終了も、決めるのは俺たち自身がやるべきだと思っている。ただ、それでも友達としてキミがこの関係を心配しているのなら……」


 そっと、ピクシーキララに手を差し伸べて、精いっぱいの笑顔を作る。


「できればこういう乱暴な方法じゃなくて、じっくりこれからを見てから判断してくれると嬉しい。その上でダメだと思ったら、改めて挑んできて欲しい」


「………」


「雄星さん……っ!」


 きっと、彼女はアクアちゃんにとって大切な友達だ。

 俺なんかとは比べ物にならないくらい、深い絆がそこにはあるはず。


「……戸尾鳥雄星」


「はい」


「……アクアを、伸び悩んでたあの子を救ってくれて、ありが……とぅ」


 ほら、こんなにいい子だ。


「どういたしまして」


 最後の方はごにょごにょしていて聞き取りづらかったが、確かなお礼の言葉を聞いて。

 差し伸べた手を取ってもらい、それを引っ張り上げて一緒に立ち上がる。


「雄星さんっ!」


「うおっと」


 不意打ちで腰に飛びついてきたアクアちゃんを受け止める。


「は、え、アクア。あんただからそういう……」


「キララちゃんっ!」


「んえっ!? あ、アクア?」


 俺と手を繋いだままでアクアちゃんを咎めようとしたキララちゃんが、信じられないものを見たって顔で硬直した。


「これ以上雄星さんに酷いことしたら、キララちゃんでも許さないからね?」


「ぁうっ……わかった、わ……うぅ……」


 お、これはあれだな。

 大好きな子にめっためたに怒られてしょげちゃった奴だな。


 なら大人として俺にできることは。


「まぁまぁ、アクアちゃん。この子だって悪気があってやったわけじゃないし、何よりキミのためを思ってやってくれたんだからな。そんなに邪険にしちゃダメだぞ?」


「なっ……雄星さん、キララちゃんの肩持つんですかぁ……?」


 ぎゅううううっ!


「ぐぇぇぇ、抱きしめる力が強すぎる!」


 想定外のカウンター(物理)でうめき声をあげさせられて。


「いやぁ、丸く収まってよかったよかった。自己紹介が遅れたね。あたしさんはネム、流沙りゅうさねむ。よろしくねぇ」


「クゥは阿蘇崎あそざきくぅ。ゆーせー、つよかった」


「兄ちゃん兄ちゃん! スキルっての、ワタシも覚えられるのー?」


「あ、コクリずるい。戸尾鳥さん。わたしにもご教授を」


 それを合図に他の子たちも一斉に騒ぎ出し、場がしっちゃかめっちゃかになっていく。


 そんなこんなで、俺はくまモト市を守る魔法少女、チームピクシーのみんなとのファーストコンタクトを終えたのであった。

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