第5話

会社の同僚は恋バナに夢中だ。入りたいけど、話を振られたら困るからいつも素通り。

恋をしないだけで新種の動物でも見つけたような反応がくる。


たかが恋をしないだけだ。

オリンピックの選手は、一般人の体力になんとも思わないのに、恋をしないだけでどうしてこうも肩身が狭いのだろう。

ありふれた特別なものではないからこそ、誰にでもあるという前提で社会が回っている。

経験がないことを揶揄する作品もある。他人のそこまでに興味があるなんて病気でしょ。


もやもやしてどうしようもなくなって、意味もなくお手洗いへ歩いた。用もないけど個室に入って、体を伸ばす。

なにが多様性よ。恋愛感情がある人同士でさえこんなに言い合うのに。

ないならないでまたさらに言いたいわけで、マジョリティは他者をからかうことに必死になってるのかな。


あーあ、晩ご飯なににしよう。毎日毎日、本当におっくうになる。

今月はそんなに余裕がないから、家にあるものでなんとかしなきゃな。人生と同じってか。


仕事場に戻ると、同僚はまだ恋バナをしていた。




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