第三話過去の鬱屈と現在の鬱屈


「最弱という自負もあるんですよ」


山末愛斗は客室でまた話を始めた。


「自分は虐められてましてね、なまじ、親の稼業が侮蔑の対象だったのでしょう、最初の地元ならば顔役にもなれたはずなのに、そこを飛び去って、親父は新しい人生を歩んだ、それだけはきっと素晴らしいとは思う」


そんな事を言う。


「つまり山末がどういう意味を持っているか知らない路傍の石になったのね」


天坂勝子はお茶をついでそれを飲む。


そしてこんな事も言う。


「で、学校生活とかどうだったの?」


山末愛斗はそれに対して吐露する。


「うーん、虐められてしまってそれで虐めっ子グループはずっと通学、自分はずっと強制的に保健室登校にさせられた、逆でしょ?あぁいう子達が未来のリーダーになるの?」


天坂勝子がその凡庸な物語ヴァニラフィクションを今、知る。


「‥‥‥逆というか虐めって暴行罪、脅迫罪もしくは恐喝罪、少年院こそお似合いよね」


天坂勝子がうんざりとため息を漏らす。


「それで成績はオール一、進学したかった高校を選べなくなって不本意に渋々、適当に受験しても合格できるところに通った、そこでも不登校になって三年間おじゃんです、最初からやる気なんて無かったからね」


不本意、その単語に不謹慎だが笑みを溢しそうになる、なんだそんな事もあるのか。


現実的だがどこか漫画らしくも見えた。


「まぁ、その後通信学校で毎年、三日間だけスクーリングするようになって、漸く卒業したのですが、今度は青春ってなんだろうって思いました、生まれ直したら国は虐め罪というのをしっかり作って人権擁護法案とかも早いうちから可決して欲しかったですね」


天坂勝子が頷くに頷けない。


日本式の民主主義とはつまるところ数の暴力だ、どう足掻いても多数決で決まったのならばそれに従う暗黙の了解があり、グループとして固まっているならば善だろうと悪だろうとそこに和の心の美徳を見出だせる。


子供の発育にはギャングエイジという心理学用語だってあるがそれだけで本来、いい。


国会に頭の固い老害だらけならば国の屋台骨が白蟻に蝕まれてしまうだろう。


白蟻とあらゆる動物のキメラ。


弱肉強食の摂理を平成になってからも馬鹿の一つ覚えのように唱え、軍縮をしない場合もあるというところが人間の愚かさである。


男尊女卑、つまり弱肉強食の言い換えだ。


そんな中、女編集者としての道を獲得した、クオータ制度など夢幻ゆめまぼろしの如くである。


「まぁ、創作活動が不本意じゃないならば、今はとりあえず良しにしたいけども」


でも、やはり、それは違うと思ったりもする天坂勝子であった。

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