第233話 シンプルに

 交流都市デュナメスの領主邸にお邪魔しています俺ことユーリウス=フォン=ゼハールトです。


 ゼバスさんの案内で客室へと通され、このあと応接室へ向かうので、とりあえず着替えようとしていた時に「確かミリアリーゼさんも来るって言っていたな…」と衛兵隊長の言葉を思い出す。

 王都からの帰り…ということもあり、今現在の俺はまあまあ適当な格好である。前回、ミリアリーゼさんに会った時も同じような適当な格好だったよな…。

 コレはいかんっ!…と俺はズバァッと今着ている服を脱ぎ捨て『無限収納インベントリ』から服を取り出し、客室に備え付けられている大きなベッドに並べた。


 ふむ…謁見に着た物はちょっとやり過ぎだな…。貴族らしく、だが重くない感じの方が良いか?

 ………いや、待てよ?公爵は貴族服どころか、えらく普通の格好だったな…。緑のTシャツに茶色のベスト、そしてデニムのような素材のパンツ…と、ソレはまるで日曜日の夕方に視たことがあるような………うっ、頭がっ!?


 そんな平民のような格好で俺を出迎えてきたニール=フォン=デュナメス公爵。その公爵のところだ…ガッツリ貴族服なのは逆に失礼か?


 …となると、だ。普段着程度に抑えるのがベターだろう。

 しかし俺の普段着は普段着でやはり貴族の物だ。コレを組み合わせでどうにかするしかあるまい。

 む、難しいな…。こんな時シーバスがいれば………いや、無いな。アイツが居たら居たで確実に俺で遊ぼうとするだろう。


 ここはシンプルに、かつ清潔感を出す感じにコーディネートするべきか。


 そうコンセプトを決めたら後は早い。風呂…に入る時間は無いから生活魔法『洗浄クリーン』でサッとキレイに。

 インナーにはシンプルな長袖の黒のTシャツを。その上に白の七分袖のワイシャツを着る。ジャケットは………無しで良いか。パンツは公爵に合わせてデニムっぽい物…が良かったが、さすがに持っていなかった。仕方ないので普通に黒のスラックスで良いだろう。靴…はこのままで良いか。

 ワンポイントでレイナと一緒に作ったミサンガを左手首に着けて完成である。

 

 ふむ…こんなもんで良いかな?


 俺は散らかした衣類を『無限収納インベントリ』に押し込んで、ガチャリとドアを開け、客室から出る。

 そこにはゼバスさんが控えていたのだが…


「………………ユーリウス様」


 はい?


「申し訳ありませんが正装でお願い致します」


 なん…だとっ!?


 公爵もこのあとはしっかりと正装になるそうだ。そういうことは先に言ってくれませんかね?

 …え?普通は言わなくてもそうする?…でしょうねっ!


 こうして余計な気を回して、しなくても良い着替えをした俺は、再度客室へと入り、きっちりかっちり正装に着替えたそうな…。

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