第232話 天上天下

 領主邸の執事長であるゼバスさんに連れられて、遂に領主の大きな屋敷に到着。ゼバスさんが開いた扉の向こう側には、俺たちを出迎えてくれる領主…ニール=ディランげふんげふん…間違えた。

 ニール=フォン=デュナメスが出迎えてくれた。


「よく来てくれた、ユーリウス。本当はちょっと無理かなぁ…とも思っていたんだが、言ってみるもんだ」


 くっ…なんてイケメンな声なんだっ!

 しかし気を抜くと「天上天下ぁ…一撃ほにゃららっ!!」とか言っちゃいそうでもある。最近では師匠としても「念動~」とか言い出した時は、マジか…と思ったもんである。

 …なんだ最近って…。


 しかし、無理だと思っているんなら呼ばないでくれませんかね?こちとらまあまあ忙しいんですよ?(デュナメスでの買い物行脚で)


「いえ、折角のデュナメス公爵からのお誘い…。受けない筈がございません」


「えぇ…?冒険者ギルドにようが…って即答断ろうとしたらしいって聞いているんだが…」


 秒でバレたしっ!?


「………………」


「………………」


「はっはっはっ…そんなことあるワケ無いじゃないですか」


「そうか?それなら、まあ…」


 うむ、完全にバレていらっしゃる。…そういえば衛兵隊長さんは幼なじみとかだったか…ちっ。


「まあまあユーリウスよ、こんな玄関じゃなんだ、ガツッともてなすから覚悟しておくんだな」


 ニカッ…と笑顔を輝かせ、使用人たちに指示を出す。

 ふむ…どうやら悪意とかはまったくもって無いようだ。俺の『マップ』もそう言っている。


「ゼバスッ!ユーリウスを客室へ案内したあと応接室へ連れてきてくれ。あとコーヒーな。ユーリウスは…」


「あ、コーヒーで…」


「だそうだ」


「畏まりました旦那さま。ではユーリウス様、こちらへ…」


「あ、はい…」


 そして客室へと案内される。ちなみにシーバスは別の執事さんに連れられて別の客室へと案内されていた。

 別れ際に残念そうな顔をしていたのは、俺といることによる面白いことを見逃してしまうのを残念だと思っているに違いない。

 …そんなこと無いって?いや、あの顔は間違いない。被害妄想だって?い~や、間違いない。俺と会ってからのシーバスはそういう奴だ。


 そして案内された客室は、まあ立派である。王都で泊まった宿のスイートレベル。いくらゼハールト家のファンだって言っても、子供の俺にこんな部屋を用意するとは…。これは…


 やはりグラム商会関連で俺が絡んでいるのはバレているっぽいな…。


 ふむ…まあ、それならソレで、そのつもりで対応すれば良いか。…と考えていたのだが、俺はふと思い出す。


 そういえば…




 ミリアリーゼさんも来るって言ってたなっ!!…と。

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