第230話 一つ屋根の下…
「お待ちしておりました、ユーリウス=フォン=ゼハールト様。領主のニール=フォン=デュナメスがお待ちです。是非、領主邸までお越しください」
王都エクシアからの帰路、交流都市デュナメスへ到着した途端、衛兵隊に囲まれ(囲まれてはいないが)コレである。
もちろんすっごく面倒くさいと思った俺は…
「すみません、直ぐに冒険者ギルドへ赴き、ギルドマスターのミリアリーゼさんとお話したいことが…」
流れるように秒でブラフをかます。ふっ…この自然の流れ…見破れまい。…と心の中でニヤリ。
「それならば問題ありません。領主邸にはミリアリーゼ殿も同席致します」
っ!?なん…だとっ!?
「策士、策に溺れる…ですかな?」
ボソリ…とシーバスが呟いた。ちょっと違うんじゃないかな?って喧しいわっ!
しかし、いかんっ!これでは領主邸に行くことが確定してしまうっ!何とかっ、何とか逃げることは出来ないだろうかっ!
はっ!?そ、そうだっ、覚えたばかりだが『転移』を使っ「止めておいた方がよろしいかと…」…何でだよ。
「『転移』なんて…それこそ伝説級の魔法。使用可能なことが露見して拡まればまた…」
あぁ、まあそうだな。厄介ごとになるだろうな。そんな奴らは全部ぶっ潰しちゃえば良いんだけれど、さすがに今回の領主さんには悪意とかは感じないしな…。
しかし、それは…
「諦めろ…と、そう言うことですね」
だよなぁ…。
くっ…まあ、仕方ない。おとなしく招待を受けるとしよう。
俺は、はぁ…と一つ大きく嘆息し、隊長さんには以前と同じように御者さんに宿を取りに行って貰えるように話す。…が。
「いえ、そのまま領主邸にお泊まりいただけるように手配しているとのことです。御者の方も遠慮なく連れてきて欲しいとも伺っています」
おもてなしする気満々なのが窺えるが、ソレは逆に俺の今日の自由が無くなったことを意味している。気遣いは嬉しいが個人的には若干ありがた迷惑…と言ったところか。
俺、個人はこう思ってしまうが、俺が成人していないとはいえ貴族同士の付き合いでもある。もはや、領主邸に泊まらざるを得まい。
う~~~ん、面倒くさい。
……はっ!?
しかし、ということはミリアリーゼさんと一つ屋根の下、一晩を明かす…ということか。それな「ミリアリーゼ殿は自分の家がデュナメスにありますから帰るでしょう」………シーバス、水を差すんじゃあない。知ってた。
だがそれじゃあ何一つ楽しみが無いじゃないか。
「話がまとまったところで、では行きましょうか。ご案内します」
何も、特に俺の心は一切まとまっていないのだが、隊長の案内で俺たちは動き出す。
二度目のデュナメス…まったくドキドキが無いのは何故だろうか?
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