第229話 習得

 ノエル魔法具店を訪れた翌日…起床、朝食、宿をチェックアウト、そしてヴァーチェへの帰路へと着く。

 ゼハールト家専用高機動型馬車HWSを駆り、途中の村や町にお金を落とし、往路にも立ち寄った交流都市デュナメスへと再び訪れていた。


 その間にも巻物スクロールに収められている魔法の解析を進め、鑑定先生による魔法の改良・最適化が行われていた。俺は新たに覚えた魔法を途中で試し撃…確認しながら感触を確かめていた。………確認と確めるって被ったな。………まあ、いい。


 その中で今回の目玉と言うべき魔法『転移魔法』…その改良・最適化には鑑定先生もなかなか苦労したようだ。


 重量制限を取っ払った結果、消費魔力が増えたのである。まあそれは当然だろうとは思っていた…が、しかし、そこは俺の持つ膨大な魔力量により無理矢理クリア。それに空間魔法のスキルレベルが上がれば、消費魔力も軽減するし、とりあえず良いんじゃない?


 次。単独で跳ぶ場合、目標にする魔法陣(今回でいえばスクロール)が無いと、やはり消費魔力が問題になるようだ。

 しかし、そこはさすが鑑定先生…俺の『マップ』を併用することで座標の特定などに必要な余計な魔力をカット、かつ対になる魔法陣を削除など、素晴らしい仕事をしてくれた。

 ただし『マップ』を併用する以上、俺が訪れたことのある場所に限られるが、コレは想定内である。


 まあ、無詠唱で即時転移可能になったし、重量制限も基本的には俺一人が跳ぶだけだし、荷物は『無限収納インベントリ』の中。転移先はこれから増えていくことになるだろうし、概ね必要条件は満たしたんじゃなかろうか。

 本当に鑑定先生は良い仕事をしてくれる…いつもありがとう。


 そんなこんなで無事、改良された『転移』を習得して訪れたデュナメスだったのだが、入る際にはやはり一悶着というか一騒動…。

 俺たちの馬車が到着すると都市入口にズラリとデュナメスの衛兵さんたちが並んで待ち構えていたのである。

 …え?何々?国王でも来るの?…なんてことは無く、待っていたのはもちろん俺たち…というか俺である。


 シーバスさんや…まだ何もしていないのに衛兵さんたちに待ち構えられているのだけれど…俺、何かしたっけ?


「前回訪れた時の件は済んでいるはずですが…ちょっとわかりませんね…」


 だよなぁ…。


 都市入口にさらに近付くと衛兵さんたちの先頭には見たことのある顔が…。たしか領主と幼なじみだっていう隊長さんだったな。


「お待ちしておりました、ユーリウス=フォン=ゼハールト様。領主のニール=フォン=デュナメスがお待ちです。是非、領主邸までお越しください」


 何事かと身構えていると、領主からの呼び出し?招待?である。

 め…面倒くせぇ…。

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