第217話 付けるからな

「ユーリウス=フォン=ゼハールト、貴様には爵位を」「あ、いらないです」


 国王がとんでもなく面倒になりそうなことを言い出したので被せ気味に秒で断る。


「………………」

「………………」


「ユーリウス=フォン=ゼハールト、貴様には爵位を」「何で二回言うしっ!?」


 おっと…思わずツッコんじまった。でもしょうがないよね…。


「ユーリウス様、地が…」

「構わんよ、シーバス…」


 シーバス、「地が…」とか言うんじゃないよっ!あと国王はシーバスのこと知ってんの?何その感じ?…まあ、あんまり興味無いから聞かないけど…。


「かつてのお仕事で少々…」

「そうだな…あの時は世話になった…」


 今、聞かないって言ったばかりなんですけどっ!?何で言っちゃうんですかねっ!?


「…でユーリウスよ」


 …なんです?


「褒美が爵位では不満かね?貴様には伯爵位…を用意したいところなのだが、周りのこともあるからな…まずは男爵位を、と思っているのだが…」


 何、その陞爵確定の人事は…。叙爵することがただでさえ面倒なのに陞爵前提とか…やっかみが凄そうで嫌なんですけど?


「不満…ではありませんが、私は冒険者として生き、世界を回りたいと思っております。爵位が邪魔…とは思いませんが、無用かと…」


 これはほとんど俺の本心でもある。ま、爵位は邪魔、だとは思っているけど…。

 お前、メイドさんに起こして貰える夢はどうするのかって?ふっ…そんなのは冒険者でもどうにでもなる。………なるよね?


「そうか…。(………………それは困ったな。伯爵位くらいないと降嫁させられんし…)」


 なんか国王がボソボソと言っているが、声が小さすぎて聞き取れなかった。………不穏である。


「しかし、魔人討伐の功績に何も無しではこちらも困る。何か望みの物は無いか?」

「ユーリウス様、このままでは話が進みませんので何か…」


 望みの物、ねえ…。

 正直、あんまり無いんだよなぁ。専属メイドさん、とか言ったらなんか怒られそうだし、後がなんか怖そうだし…。

 お金は…今でもまあまあ有るし…。何か珍しい素材とか…は『無限収納インベントリ』の中にたくさん有るしなぁ…。

 あっ…。


「錬金部屋…」


「錬金…?」


「そうですね…自分専用の錬金施設…みたいのが欲しいですかね」


 そう…ゼハールト家の自室で錬金しようとすると義祖父さんとかシーバスとかが張り付いてくるので、静かに考えながら錬金出来る場所が欲しいと思っていたんだよな…。

 でも、ちょっと欲張り過ぎか?と思わないでもないが…。


「錬金術までこなすか…ふむ。………よし、分かった。専用の錬金施設を用意しよう。場所はヴァーチェで良いのか?」


「はい、可能ならばヴァーチェでお願いしたいです」


「うむ、了解した。準備が出来次第、通達を出す。しばし時間をくれ」


 こうして、魔人討伐の褒美は俺専用の錬金施設、ということに決まった。そしてシーバス………何やら目を輝かせているが、その施設には出入り制限付けるからな。

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